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転職の前後で妊娠が発覚した場合にトラブルを回避するための対処法

 

転職は、人生の中でも大きなイベントの一つです。特に女性にとっては妊娠・出産と並ぶくらい、といっても過言ではないでしょう。では、転職と妊娠・出産という2大イベントのタイミングがもし重なってしまったとしたら、一体どうすればいいのでしょうか?今回は、転職活動の前後で妊娠していることがわかった場合の注意点や、トラブルへの対処法をご紹介したいと思います。

目次

転職前後で妊娠が発覚…会社や社員の本音は?

せっかく採用した人がすぐに離れることは会社にとって負担となる

「転職して間もなく、妊娠が発覚した」という場合、出産の時期が迫れば会社を休まなければいけません。

当たり前の話ですが、社員が休むということは会社にとって負担になります。本来労働力として期待していた人材が、本来働くはずだった期間働くことができなくなるわけですから、企業としてはその分「戦力ダウン」した状態で業務を回していかなければいけないわけです。

育休制度をとれば、さらにその間のコストが増す

出産・育児に伴う休業中は、原則として給料はもらえません。しかし、育児休業を申出たり、「出産手当金」、「育児休業給付金」といった出産関連の手当を受け取ったりすることはできます。

出産手当金とは、出産時に給与がもらえないのを保障するための手当です。「日給×2/3×産休で休んだ日数」に相当する金額を受け取ることができます。また、育児休業給付金とは、出産後、仕事に復帰するのを手助けするための手当です。「育児開始から180日目まで」の期間は給与の67%、「181日目以降」は50%に相当する額をそれぞれ月額で受け取れます。

出産手当金は健康保険の一種であり、育児休業給付金は雇用保険の一種です。健康保険と雇用保険は、事業主と労働者が保険料を折半しており、一般の事業の場合、健康保険では4.955%雇用保険では0.6%を事業主が負担しています。また、自治体に申請することによって受け取れる「子ども・子育て拠出金(いわゆる、子ども手当)」も、0.23%を事業主が負担しています。

このように、育休制度や子ども手当を利用すると、その分企業のコストは増加することになるのです。社会を挙げての「子育て支援」が叫ばれる昨今ですが、こういった事情から未だに働く女性が出産することをよく思わない企業が多いこともまた事実です。

産休中の穴埋めをする社員も快く思わないケースが多い

女性が育休をとる場合、誰かがその仕事を穴埋めしなければいけません。代わりの人を雇えればいいのですが、多くの企業ではそのまま既存の社員が抜けた社員の穴埋めをすることになるでしょう。

仕事の穴埋めをさせられる社員の中には、「あいつが休んでいるせいで、自分の仕事が増えた」という気分になる人も少なくないと思います。そのため、仮に育休をとったとしても、その後の穴埋めをした社員との人間関係が気まずくなるといった、二次的な問題が生じてしまうこともあるのです。

以上のように、未だ働く女性が妊娠・出産を行うのは決して簡単ではありません。ましてや、転職と時期が重なってしまうと、さらに困難が増すことにもなりかねないでしょう。ですから、転職と妊娠のタイミングについては、細心の注意を払う必要があるのです。

転職と妊娠、適切なタイミングはいつなのか

妊娠・出産を済ませてからの転職をするケース

では、転職と妊娠、それぞれに適したタイミングとはいつなのでしょうか?まず、「妊娠・出産を先に済ませ、その後で転職を行う」という場合を考えてみましょう。

「妊娠・出産を先に済ませる」とはいいましたが、出産さえ済ませれば、すぐに職場復帰できるというわけではありません。育児には何かと手間がかかりますし、生まれたばかりの子どものそばには母親がついていてあげないと、何かと心配です。

また、出産に関わる手当の一つである育児休業給付金は「出産後の職場復帰を前提とした手当」であるため、「出産後、間もなく転職する」というような場合は給付を受けることができません。そういった点をあわせて総合的に考えると、妊娠・出産を先にしてその後転職をする場合は、「出産後3~4年経って、ある程度子どもが成長したころ」が転職に適したタイミングであるといえるでしょう。

転職後の妊娠・出産は、転職から1年以上経ってからが良い

では、「先に転職を済ませ、その後妊娠・出産をする」という場合に適したタイミングはいつごろなのでしょうか?

こちらの場合、転職活動を行う時点では子どもはいないわけですから、その点に限れば特別に注意すべきことはありません。問題は転職した後、「いつごろ妊娠・出産するのがいいか」という部分です。

転職した後しばらくは、新しい仕事に慣れる必要があります。職場での人間関係などもつくりなおさなければならないでしょう。一定の時間をかけて、だいたいの仕事のペースト環境が整ったら、「そろそろ妊娠・出産してもいいかな」と思える時期がやってくるはずです。

環境により個人差はありますが、妊娠・出産を行うタイミングは「転職後1~2年ごろ」と考えておくといいでしょう。なお、転職後の妊娠・出産のタイミングを決めるときは、転職先の「育児休業に関する規定」も参考にしてください。

育児休業に関する規定や仕組みは、企業ごとに異なっています。「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」によると、企業は育児休業について「労働者からの申出を拒むことはできないが、労使協定の定めることにより認めないことはできる」とされています。つまり、もし育児休業を申出ても、勤め先が認めてくれない、ということもありうる、ということです。

仮に育児休業が取得できたとしても、先に述べたように穴埋めをする社員との間に溝ができてしまうかもしれません。そうした事態を防ぐためにも、転職後出産をする前には育児休業に対する姿勢や規定をよく確認しておきましょう。

転職と妊娠・出産のタイミングはどう決めたらいいの?

転職より妊娠・出産が先の場合のメリットとデメリット

妊娠・出産を転職より先に行うと、どのようなメリットがあるのでしょうか?まず、先ほどご紹介したように「育休後、復職して3~4年後に転職する」という前提だと、子供がある程度成長しているはずなので、育児の手間が多少減っていると考えられます。そのため、転職後の仕事になれるのに十分な時間が得られるでしょう。

また、「子どものいる女性にやさしい職場」を吟味して転職先を選ぶこともできるはずです。この点については、転職してから出産する場合も同じように思われるかもしれませんが、実際に育児をしている状態の方がよりリアルに転職先に求める条件を考えることができると思います。

逆に、子どもの存在は転職活動において足かせになってしまうことも考えられます。たとえば、「子育てと両立させられること」といった条件が加わることで、転職先探しがシビアになってしまうかもしれません。

転職後の仕事ばかりでなく、転職活動自体も子育てとうまく両立する必要があります。子どもがある程度育っているから手間がかからないはず、とはいっても、それはあくまで乳幼児と比較した場合に過ぎません。「子育てと転職活動を両立させ、さらにその後新しい仕事にも適応する」というのは、なかなか容易なことではないでしょう。

妊娠・出産より転職が先の場合のメリットとデメリット

では、先に転職を成功させ、その後妊娠・出産を行う場合はどうでしょうか?メリットしては、最初は子どもがいないため、転職活動に専念できるという点が挙げられます。中には、小さい子どもがいると「育児が大変で仕事が疎かになってしまうかもしれない」と考え、採用に後ろ向きになる企業もいます。子どもをつくる前に転職すれば、そういった偏見からも逃れることが可能です。

一方、デメリットとしては、「転職後、妊娠・出産がしにくくなる可能性がある」という点は見過ごせません。もちろん、「転職後の仕事にある程度慣れてから、妊娠・出産をする」というのが一般的なやり方ではあります。しかし、逆に言えば「仕事に慣れれば慣れるほど、妊娠・出産がしにくくなってしまう」という可能性もあるということです。

職場で重宝されれば、育児休業も取りづらくなるでしょうし、「あなたが休んでしまったら代われる人がいないよ」と言われてしまうかもしれません。そうなれば、仕事の都合で子どもが産めないという自体にもなりかねないでしょう。

転職と妊娠・出産、どちらを先にするにしても、それぞれメリットとデメリットがあります。自分の置かれた状況に合わせてどちらを先にするか選び、また可能であれば現在の就職先や将来の転職先に相談しておくといいでしょう。

もし転職前後で妊娠が発覚してしまったら?

速やかに上司に相談するのがいい

以上のように、妊娠・出産と転職の時期をある程度コントロールできている場合はいいのですが、もし転職の前後で予想していなかった妊娠が発覚してしまったらどうすればいいのでしょうか?

まず、転職の前後、どちらであるにしろ、速やかに直属の上司に相談することをおすすめします。たとえきちんと計画ができていなかったにしろ、やがて時間が経てば子どもは生まれます。一番良くないのは、そのときが来るまで誰にも相談できないことでしょう。むしろ、「妊娠した」と伝えることで周りが協力的になってくれるかもしれません。大変な状況だからこそ、ひとりで悩まず周りへの協力を求めるべきです。

復帰するか退職をするのか、意志を明確に伝える

重要なポイントとして、転職前の場合は、「出産の後、現職に復帰するのか。それとも退職して別の仕事に転職するのか」を上司に伝えなければいけません。転職後の場合も同様に、「出産の後、継続して仕事を続ける意志があるかどうか」、明確にしておく必要があります。企業が最も気にしているのはその点だからです。

「自分が休んだら仕事はちゃんと回るのか」、「穴埋めをする人に負担を与えてしまわないか」といったことは、あくまでも事前に配慮できる状況で考えるべきことです。すでに妊娠しているというような状況では、そうしたことに頭を悩ませる必要はありません。「仕事を続ける意志があるのかないのか」、自分の正直な気持ちを伝えてください。

まとめ

今回は、転職の妊娠・出産の関係について説明してきました。

出産は、基本的には企業にとって「負担」になります。そのため、未だ女性の出産や育児休業の取得を嫌がる企業は少なくありません。だからこそ、働く女性が出産を計画しているときは、用意周到に進める必要があります。

特に、転職も考えている場合はさらに注意が必要です。ポイントは、転職と妊娠・出産のどちらを先に行うかということ。出産を先に行う場合は、前職に復帰して3~4年ほど働き、その後転職、転職を先に行う場合は、転職先で1~2年ほど働いた後に妊娠・出産、という流れがおすすめです。どちらを先にしてもそれぞれにメリット・デメリットがあるので、自分が置かれた状況に合わせて適した順番を選びましょう。

もし、転職の前後で妊娠が発覚した場合は、速やかに上司に相談するべきです。その際、出産後も仕事を続ける意思があるかどうか、明確に伝えておくことがトラブル防止の鍵を握ります。

転職と妊娠・出産。人生における2大イベントを続けてこなすのは、決して簡単なことではありません。しかし、それだけにこの2つを乗り越えることができれば、自分の生き方を大きく理想に近づけることができるでしょう。働き方とライフプランの実現に向けて、頑張ってください!