昨今、多くの企業が「コミュニケーション能力」の高い人材を求めていると言われています。転職の際も、こうした点を長所としてアピールして「ライバルに差をつけたい」と考えている人は多いのではないでしょうか?しかし、この「コミュニケーション能力」、何の工夫もなしにPRしてしまうと、かえって足元を救われる原因にもなりかねません。
昨今、多くの企業が「コミュニケーション能力」の高い人材を求めていると言われています。転職の際も、こうした点を長所としてアピールして「ライバルに差をつけたい」と考えている人は多いのではないでしょうか?しかし、この「コミュニケーション能力」、何の工夫もなしにPRしてしまうと、かえって足元を救われる原因にもなりかねません。
転職面接は、転職希望者の能力や人柄を、採用企業が判断するための場です。「採用担当者と転職希望者が、Face to Faceでコミュニケーションをとる場」と言い換えてもいいでしょう。つまり、転職面接は最初から転職希望者のコミュニケーション能力を測るための場なのです。
そのような場所で、「自分はコミュニケーション能力に自信があります」と言ってしまったら、どう思われるでしょうか?「いや、そもそも君のコミュニケーション能力がどのくらいなのか、私が自分の目で判断するための機会がこの面接だし…」と、採用担当者に思われてしまうかもしれません。
むしろ、転職面接の場では「コミュニケーション能力」という単語は禁句だと思って臨んだほうがいいかもしれません。特に現在は、多くの企業がコミュニケーション能力を重視していることが知れ渡っているので、転職希望者の多くはコミュニケーション能力をPRしているはずです。採用担当者に対しても「また同じことをいう人がきた」という印象を与えてしまうかもしれません。
また、コミュニケーション能力は多くの場合、「ビジネスマンとして最低限、備えておいてほしい能力」でもあります。つまり、転職面接では「コミュニケーション能力のあるのはビジネスマンとして当たり前、その上であなたが他人よりも優れているところはどこですか」ということが問われているのです。
そういったことを理解せず、「自分には高いコミュニケーション能力があります」といってしまうのは、逆に「コミュニケーション能力が低い」ことをアピールしていると受け取られてしまっても仕方ありません。あるいは、「コミュニケーション能力以外に何も長所がないのか」と受け取られる可能性もあるでしょう。
では、多くの企業が共通して求めている「コミュニケーション能力」とは、具体的にどのような能力のことを指すのでしょうか?
一般的に「コミュニケーション能力が高い人」というと、「いろいろなタイプの人とおしゃべりできるタイプ」や、「社交的で、友だちが多いタイプ」といった人をイメージするかもしれません。
しかし、こうした「一般的に語られるコミュニケーション能力」を「ビジネスで必要とされるコミュニケーション能力」を混同してはいけません。ビジネス社会で求められるコミュニケーション能力とは、先に上げたような社交性とはまったく異なる、別の能力だからです。
ビジネス社会で求められるコミュニケーション能力とは、一言で言うと「相手と自分の意見を踏まえて、折り合いをつけて話を進める能力」のことです。
たとえば、あなたが友人と会話していて、お互いに異なる意見がぶつかったとしましょう。このとき、友人同士の雑談であれば、適当なところで話題を変えるか、あるいは相手と口論になることも覚悟して、自分の意見を主張するかもしれません。プライベートの会話であれば、それ以上のことは求められないでしょう。
しかし、ビジネスの現場であれば話は違います。相手と主張が食い違ったからといって、仕事上話し合いが必要なことに関する話であれば、話題を変えるわけにはいきません。だからといって、自分の主張を曲げずに相手を言い負かしてしまっては、その後の付き合いはうまくいかなくなってしまうでしょう。
ビジネス社会で求められるコミュニケーション能力とは、そういった場面に遭遇したときに自分の意見を相手の意見のポイントを上手く集約させて、双方が合意できる解決策を見つけられる能力のことです。一般的に「コミュニケーション能力」と言われるような、「誰とでも仲良くなれる能力」などとはまったく違うタイプの能力なのです。
先ほど紹介したコミュニケーション能力の例は、あくまでも一般的に共通して求められる能力のことです。実際には、業種・業界・職種によって、求められるコミュニケーション能力は様々に異なっています。
たとえば、接客業であれば同僚だけでなくお客様とも直接接することになります。同僚とお客様では、それぞれ適した接し方も異なるため、「立場が違う複数のグループ内で、上手に役割を果たしていける力」が求められるでしょう。
一方、BtoBの営業職などであれば、特定の企業の担当者と長く関係を続けていかなければなりません。場合によっては、ひとつの人間関係が数十年という単位で続くこともあります。そのような場合には、「相手と長期的に良好な関係を続けていく力」が求められるでしょう。一度や二度、たまたま営業がうまくいかなかったからといって、担当者との縁が切れてしまうようでは、その職種の中では役に立たないからです。
このように、一口にコミュニケーション能力といっても、それぞれ勤務先の中で求められる立場によって、果たさなければいけない役割は変わってきます。真にビジネス社会で求められるコミュニケーション能力が備わっている人とは、企業が自分に求める役割を正しく理解し、その役割の中で発揮しなければいけない能力を見極め、正しい形で発揮できる人材です。そうした、本当の意味で企業求めているコミュニケーション能力を備えている、というアピールであれば、転職面接の際のPRとして有効に働くでしょう。
とはいえ、先にお伝えしたように「コミュニケーション能力」という言葉を使ってしまったのでは、自分が「企業の求める真のコミュニケーション能力」を持っているということを上手に伝えることはできません。そういう場合はどうしたらいいのでしょうか?
有効な方法として、「具体例を交えて話す」というテクニックがあります。つまり、コミュニケーション能力という抽象的なものについて話すのではなく、あなたが過去の仕事の中で、コミュニケーション能力を有効に発揮させ、その結果ビジネスが上手くいった、という具体的な事例を示せばいいのです。
たとえば、あなたが「チームリーダーとして、複数の人が集まるプロジェクトをうまく進めていく能力に長けている」という点をPRしたいとしましょう。そういう場合は、実際にあなたがチームリーダーとしてメンバーをまとめ、プロジェクトを成功させた事例について採用担当者に話せばいいのです。
そのときは、実際に担当した仕事について、できるだけ具体的に話すのを忘れてはいけません。「どんなメンバーと、どのような仕事に取り組んだか」、「その過程で、どのような困難が立ちはだかったか」、「その困難をどのような方法で切り抜けていったか」、そしてもっとも重要な「困難を乗り越える過程で、あなたがどのような貢献をしたか」といった点について、具体的なエピソードを盛り込んで話してください。
このように、具体例を交えて説明すると、コミュニケーション能力という抽象的なものもうまく相手に伝わります。きっと、採用担当者の頭の中には、コミュニケーション能力をフルに活かして仕事上の困難を乗り越えるあなたの姿がイメージできるに違いありません。そうなれば、もはや面接は突破できたも同然でしょう。
転職の際、自身のPRに使える情報というと、多くの人が最初は仕事の中で役立つ資格や、特定の業種で長く働き続けた経験などをイメージするのではないでしょうか?確かに、そうした資格や経験には、ビジネス上のスキルとして一定の価値があります。
しかし、転職は資格や経験があれば必ずしも成功するわけではありません。面接の際、最も重要視されるのは転職希望者の「人柄」です。ここでいう人柄とは、単なる性格のことではなく、「ビジネススキルがその人の仕事とどのように結びついているか」ということが問われているのです。たとえば、何らかの資格を持っていたとしても「資格を持っている」ということだけに意味があるわけではありません。本当に問われているのは、「その資格を活かして仕事の中でどんなことを成し遂げたか」という具体的なエピソードです。
そのような点から見ると、多くの企業がコミュニケーション能力の高い人材を求めている理由がわかってくると思います。「コミュニケーション能力というビジネススキルを、仕事の中でどのように活かしてきたか、その具体的な経験を知りたい」と多くの企業は考えているのです。
コミュニケーション能力は、一言で言い表すのが決して簡単ではない能力です。資格のように形式化されているわけでもなければ、経験のように表現するのが比較的簡単なものでもないからです。しかし、上手に具体的なエピソードとしてコミュニケーション能力をPRすることができれば、転職の成功に大きくプラスになるビジネススキルのひとつだといっていいでしょう。
多くの企業が、転職希望者に求めていると言われる「コミュニケーション能力」。企業が求めるコミュニケーション能力とはどのようなものか、転職の際にはどうやって伝えたらいいのかについてご紹介してきました。
ビジネス社会で求められるコミュニケーション能力とは、「相手と自分の意見をうまく整合させ、ビジネスを前進させる能力」のことです。プライベートで求められる、「いろいろな相手と打ち解けられる能力」や「社交性が高いこと」とは大きく異なります。
そのため、転職面接でコミュニケーション能力の高さをPRしたいときは注意が必要です。そのままの形で伝えようとしてしまうと、よくある転職者の自己PRと同じになってしまうため、あなたの本当の長所が採用企業に伝わらないからです。
転職面接で有効なコミュニケーション能力の伝え方は、「具体的なエピソードを踏まえて話す」ことです。今までの仕事の中で、「他者と自分の意見うまく集約して、仕事を進めていった経験」について、具体例を交えながら話すことによって、採用担当者の頭の中にそのときの光景をイメージとして浮かび上がらせることができます。
以上のような点に注意すれば、コミュニケーション能力を有効なビジネススキルとして転職面接で上手に表現できるようになります。今から転職を検討している方は、ぜひチャレンジしてみましょう。