長期優良住宅の認定申請はした方が良い?メリットとデメリットとは?
長期優良住宅とは、簡単に言うと「長期にわたり、住宅を良好な状態で長持ちさせるための必要な基準」を満たした住宅のことを言います。
平成21年6月に施行された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づいており、様々な条件が決められています。
具体的に評価される項目としては、構造躯体の劣化対策、耐震性、維持管理・更新の容易性、可変性、バリアフリー性、省エネルギー性の7つがあり、これらの項目で一定以上の性能を求められています。
また、居住環境や住戸面積も条件となっています。
また、長期的に良い状態を保つことができる建物という条件の他に、新築後の維持管理やメンテナンスのしやすさなど、新築された時点だけの評価でなく、将来の維持管理の仕方までを評価するという特徴があります。
長期優良住宅に認定されると、固定資産税の減額期間が長くなるなど、税制面でのメリットがあるため、認定を取ることを検討してみてもよいでしょう。
新築する場合には、この「長期優良住宅」の条件をクリアするように考えて建築することが必要です。
ここでは、長期優良住宅について、認定基準やメリット、デメリットについて解説していきます。
目次
長期優良住宅の認定を受けるにはどうしたら良い?
「長期優良住宅」自体の知名度があまりないため、手続きや申請方法等もわからない人が多いようです。
長期優良住宅は所定の手続きを経て認定を受ける必要があり、諸条件を満たした建物プランを消費者と建築会社との間で打ち合わせをして作成し、技術的審査を住宅性能評価機関へ申請します。
その審査に合格すれば適合証を発行してもらうことができます。
そして、その建築計画と維持保全計画を所管行政庁へ申請し認定を受ける流れです。
また、技術的審査を住宅性能評価機関へ申請しない場合は、所管行政庁へ直接申請することになります。
ただ、所管行政庁から住宅性能評価機関へ技術的審査を出すことになるため、申請後認定されるまで、所要日数がかかります。
長期優良住宅は、出来上がってから認定を受けるのではなく、着工する前に必ず上記の手続きをしておく必要があります。
着工してからでは認定されませんので、認定を受けたい人は、きちんとハウスメーカーや工務店、不動産会社へ「長期優良住宅の認定を希望している」ことを伝え、建築内容について相談しておくとよいでしょう。
建築プランが立て終わる頃に「長期優良住宅用の建築プランにしたい」となりますと、設計を変更したり、様々な手間がかかるようです。
そのようなことをハウスメーカー等の担当者は嫌がりますので、協力してもらうためには、できるだけ早めに伝えるようにしたいものです。それでは、認定基準についてみていきましょう。
劣化対策
長期優良住宅は「数世代にわたり、住宅の構造躯体が使用できること」となっています。およそ100年程度の間、構造躯体が使用できることが条件です。
鉄筋コンクリート造りであれば、セメントに対する水の比率をおさえたり、コンクリートのかぶり厚を厚くすることが必要です。
木造であれば、床下や小屋裏の点検口を設置すること、点検のための床下空間を一定の高さにすることが求められています。
耐震性
地震は、極めてまれに発生するものではありますが、地震がきた場合のことも想定しておかねばなりません。
この耐震性の項目では、「継続利用のための改修を容易に行えるようにするため、建物の損傷のレベルを抑えること」「大規模地震力による変形を一定以下に抑制すること」と定められています。
建築基準法レベルの1.25倍の地震力に対しても倒壊しないことや、・住宅品確法に定める免震建築物であることとされています。
維持管理・更新の容易性
内装や設備について、維持管理のしやすさを考えたプランにするものとされています。
構造躯体が100年程度長持ちしても、内装や、キッチンなどの設備は100年もの耐久性がありません。構造躯体だけが長持ちするだけでは優良住宅とはいえず、長期にわたって良好な状態で使用するには、内装や設備も重要です。
構造躯体だけではなく、それらについても長持ちさせることが必要ですので、清掃や点検、補修、取り替えなどをできるだけスムーズにする必要があります。
そういった点を評価しているのがこの項目になります。
可変性(マンションのみ)
可変性とは、間取りが容易に変更できるかどうかをいいます。
その時代のライフスタイルに合わせて簡単に間取りが変更できるように考慮することと定められています。
バリアフリー性
将来、バリアフリーに改修するときのことを考え、それに対応できるように共用廊下等に必要なスペースが確保されていることが重要です。
特に、共用廊下の幅や、教養階段の幅やエレベーターの間口等について必要なスペースを確保していることが求められています。
省エネルギー性
エネルギーをできるだけ大切に、無駄にせずに使えるようにするため、断熱性能などの省エネルギーが確保されていることが大切です。
これは、性能評価の省エネルギー対策等級4に相当します。
居住環境
良好な景観の形成や、その地域の居住環境の維持や向上に配慮されたものであることとされており、その建物単体だけではなく地域との関連も考慮しなければなりません。
地区計画、景観計画、条例によるまちなみ等の計画、建築協定、景観協定等の区域内にある場合には、これらの内容としっかりと調和をはかっていくように考えて建築する必要があります。
住戸面積
良好な居住水準を維持するために、必要な規模を要することが求められています。
一戸建て住宅であれば75㎡(2人世帯の一般型誘導居住面積水準)とされ、マンションであれば55㎡以上(2人世帯の都市居住型誘導居住面積水準)とされています。
但し地域の実情に応じて引上げや引き下げがあるようです。
維持保全計画
将来にわたって、主要な部分や雨水の侵入を防止する部分、給排水設備について定期的な点検の時期や内容(補修の計画)を考えて作成しておく必要があります。
また、少なくとも10年ごとに点検を行うことと定められています。
このように、長期優良住宅とすることで、購入または新築する住宅を長期にわたり良好な状態で使用できることが一番のメリットでしょう。
しかし、維持管理は必要ですから、その時の建物の状態等に応じて適宜、適切に対処(維持管理)していくことが前提であり、それにもコストがかかってくるということを覚えておく必要があります。
上記以外のメリットとしては、減税効果があげられます。
一般の住宅と比べて、住宅ローン減税や登録免許税・固定資産税などの税の軽減効果が大きく、金銭的なメリットが大きいと言えるでしょう。
ただし、この認定を受けるための建築方法を採用することで、逆に建築コストが上がったり、手続きにかかる費用が生じることもあります。
よって、メリットとデメリットを天秤にかけ、総合的な判断をする必要があります。
長期優良住宅の税金の減税効果、どのようなものがある?
住宅ローン減税
住宅ローン減税において、通常であれば控除対象借入限度額が2000万円のところ、長期優良住宅だと3000万円となります。
また、最大控除額は通常住宅は200万円、長期優良住宅なら300万円です。年間控除額は通常住宅で最大20万円、長期優良住宅で30万円となります。
不動産の登録免許税
所有権の移転登記や保存登記にかかる登録免許税が軽減されます。
不動産取得税
一般住宅であれば1,200万円の控除となりますが、長期優良住宅であれば1,300万円の控除となります。
固定資産税
固定資産税は、一般住宅であっても2分の1に軽減されており、軽減率に違いはありません。
しかし、軽減期間が優遇されており、一般住宅では3年のところ、長期優良住宅だと5年となります(一戸建ての場合)。
マンションであれば、5年のところが7年となります。
長期優良住宅に認定申請をする場合デメリットはある?
長期優良住宅に認定されると、税制面でのメリットは大きく、その点でデメリットはありません。
しかし、手続きに手間がかかり、認定されるまでには一定の日数がかかるのがデメリットと言えます。
申請しない場合に比べて、数週間から1ヶ月程度、余分に日数がかかると思っておいた方がよいでしょう。
また、申請にはコストがかかります。
事前に住宅性能評価機関の技術的審査をする場合であっても、しない場合であっても、5~6万円の費用がかかると思っておいた方が良いでしょう。
また、ハウスメーカーや工務店も手間賃を上乗せすることが多く、その額は数万円から数十万円になります。
この手間賃は無視できない金額です。固定資産税の軽減額と比べ、どちらが得かということをよく検討しなければならないでしょう。
また、建築を頼むハウスメーカーによって対応が違い、嫌がられる場合もあるということもデメリットです。
長期優良住宅に積極的に取り組んでいるところであれば、手続きも手馴れていて効率的に行ってくれますし、ポイントを押さえた提案をしてくれます。
交渉もスムーズに進むでしょう。
しかし、非協力的なところがあるのも事実なのです。
長期優良住宅を建築したいと思うのであれば、ハウスメーカーを決める前段階からそのことを話し、協力的なメーカーに建築を依頼するのが一番良いやり方と言えるでしょう。
長期優良住宅を建てる場合は、様々な手間がかかりますし、条件にあった建造物にするための担当者との話し合いも回数を重ねなければなりません。
優良な住宅を建てるには、耐震性や省エネの条件を満たさなくてはならないため、建築コストが約2割増しになるというデータもあります。
しかし、優良住宅であるということは、地震にも強く、省エネで、断熱構造等も整っているということになり、割増でかかるお金も、無駄なお金ではありません。
税金の優遇もあり、なおかつ安心な住宅に住めるということなのですから、これから住宅を新築しようと考えている人は、是非検討してみてはいかがでしょうか。
しかし、ハウスメーカーや工務店の中には長期優良住宅の建設に非協力的なところもあるようです。
長期優良住宅を建てたい!と思うならば、まずそれを伝え、営業の人の反応やハウスメーカーの考えかた、長期優良住宅にする場合は建築費がどれほど割増しになるかを確認してからハウスメーカーを決定するようにしましょう。
建築費が異常に高くなる場合は、建てるのを嫌がっているメーカーと言えるかもしれませんので注意が必要です。
できるだけ協力的ハウスメーカーや担当者を探し、長期優良住宅を建てるようにしましょう。