年齢や性別そして生活習慣によって、個人の体臭は様々なものに分けられます。
体臭と聞くと加齢臭や汗臭といったものがイメージされますよね。
しかし、体臭の中には疾患が原因となって生じる独特のものも存在します。
こちらでは、なぜ病気になると体臭が変化するのかというメカニズムと共に、体臭の種類ごとに考えられる病気について分かりやすくご紹介します。
病気のサインとしての体臭に気付き、早期発見・早期治療のために必要な知識を身につけておきたいですね。
年齢や性別そして生活習慣によって、個人の体臭は様々なものに分けられます。
体臭と聞くと加齢臭や汗臭といったものがイメージされますよね。
しかし、体臭の中には疾患が原因となって生じる独特のものも存在します。
こちらでは、なぜ病気になると体臭が変化するのかというメカニズムと共に、体臭の種類ごとに考えられる病気について分かりやすくご紹介します。
病気のサインとしての体臭に気付き、早期発見・早期治療のために必要な知識を身につけておきたいですね。
病気になると体臭が変化する理由としては、「病気から体内で生成された物質がニオイを生じさせて体の外へと放出されること」そして「病気によって排出されるはずのニオイ物質が体内に蓄積されていくこと」の2つが挙げられます。
まず、病気から生じた物質が独特なニオイ物質を発生させると、そのニオイが血液に溶け出して全身を巡るようになります。
血液を介してニオイが毛穴から出れば体臭として、肺から呼気として出れば口臭として体臭を変化させますし、汗や尿のニオイをも変えてしまうのです。
また、疾患によって内臓機能が低下し、アンモニア成分や老廃物といった本来であれば正常に排出されるはずのニオイ成分が体内に蓄積されていくことでも体臭の変化が生じます。
健康であれば体内で生じないニオイ物質が生成されたり、病気による内臓機能の不調から排出されるはずのニオイ物質が体内に蓄積したりと、病気になると生じる体臭には2つのメカニズムがあります。
どちらも体内での急激な変化によって引き起こされますから、体臭が急に変化する・急に体臭が強くなる場合には病気による体臭の発生が考えられます。
汗をかくと生じる汗臭は、汗のニオイによって引き起こされているように感じられますよね。
しかし、約99%が水分で構成されている汗自体には、ほとんどニオイがなく無臭です。
汗自体は無臭であるものの、汗に含まれるわずかな皮脂や乳酸を餌とする雑菌に分解されると汗臭が発生します。
したがって、汗をかいた後にそのままにしておいたり分泌された皮脂をきちんと洗い落とさずに皮膚に蓄積していったりと、体臭を発生させる雑菌の餌が皮膚に多くなればなるほど嫌なニオイが発生しやすくなります。
汗を分泌する汗腺は、エクリン腺とアポクリン汗腺の2つに分類されます。
エクリン腺からの汗は運動による体温の上昇や暑い気候から分泌され、上記でご紹介しました約99%が水分で占められる無臭の汗です。
一方、アポクリン汗腺からの汗は、アンモニアやタンパク質などのニオイ成分や雑菌の餌となる成分の含有量が多く強いニオイを発生させます。
また、アンモニアやタンパク質の含有量が多い分、粘度が高くなかなか落ちないという性質からもニオイが強まります。
汗自体のニオイが強く、また雑菌の餌を多く含み落としにくいアポクリン汗腺からの汗こそが、ワキガの原因となります。
加齢による体臭はその名の通り「加齢臭」です。
加齢臭は40歳を過ぎた中高年の年代から男女問わず出始め、皮脂腺内で脂肪酸と過酸化脂質とが結びついて生じるニオイ物質「ノネナール」が原因となって生じます。
男性の場合には皮脂分泌が活発になる、女性の場合には抗酸化作用のある女性ホルモンが急激に減少するといった加齢による体の変化が大きく関係しています。
皮脂分泌量の増加や女性ホルモンの急激な減少など、加齢臭が生じるメカニズムは男女で多少の差があります。
しかし、40歳を過ぎた頃から活性酸素が生じやすくなり、ノネナールの原因である過酸化脂質が増えやすくなるという点で男女ともに共通しています。
ストレスを強く受けると皮脂分泌を促進する男性ホルモンや副腎皮質ホルモンそしてアドレナリンなどのホルモンの分泌が活発になり、皮脂分泌量の増加と比例して雑菌の分解による体臭が強まります。
さらに、ストレスを解消できずにストレスを感じる期間が長期に渡ると、内臓機能のコントロールを司る自律神経に乱れが生じます。
自律神経が乱れれば、その支配下にある多くの内臓が正常に機能しなくなり、老廃物やニオイ物質の排出が正常に行われずに体内に蓄積されていきます。
その結果として、呼気や汗そして皮脂と共に老廃物やニオイ物質が排出され、体臭や口臭のリスクが高まってしまうのです。
ストレスと体臭とは無関係なように思えますが、自律神経の乱れや皮脂分泌量の増加から間接的に体臭のリスクを高めるのですね。
自律神経の乱れから消化機能が低下したり、食生活の乱れから腸内環境が悪化したりすると便秘が引き起こされます。
腸内に留まり続けた便が腸内で過剰発酵されると、有害でニオイの強いガスが発生します。
便秘のときに「お腹が張る」「おならが増える」「おならが臭くなる」といった不快な症状が生じるのは、便から発生したガスによるものだったのです。
このガスがおならとして排出されなければ、腸壁から血管を介して血液へと溶け出します。
血液から全身を巡ったガスは、強い体臭や口臭として体の外へと排出されます。
発症している疾患や体内環境の変化から生じる体臭には、根本的な原因となっている体内トラブルによってニオイの種類が大きく異なります。
体がSOSのサインとして発している体臭の変化にいち早く気付き、早期発見早期治療に努めることが思わぬリスクを回避するために必要不可欠となります。
次に、病気によって引き起こされる体臭の特徴を病気別にご紹介します。
もしも、体臭の変化や体調の異変が感じられる場合には、できるだけ早く病院を受診するようにしましょう。
胃では食道を通ってきた食べ物を胃液で溶かして分解しやすくしたり、水や糖分そしてアルコールといった限られた成分の吸収を行ったりします。
また、腸では消化分解された栄養素や水分を吸収したり、栄養を吸収しきった食べカスを便として排出したりといった働きがあります。
生命維持には欠かせない胃や腸などの消化器官の機能低下や消化不良、さらには胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍といった胃腸の疾患では「卵が腐ったようなニオイ」が発生します。
これは、消化不良から口にした食べ物・飲み物が胃の中に留まり続け、過剰に発酵することでニオイが発生するからです。
胃の内容物を消化していく過程でニオイが血液に溶け出して体臭として放出されるほか、肺から呼気として放出されると口臭となります。
タンパク質・脂質・糖質からエネルギーを取り出したり、体内で発生したある特定の物質を分解したりすることを代謝と言います。
特に、代謝機能が低下したり何らかの異常が生じたりしていると、体臭が「魚が腐ったようなニオイ」に変化します。
魚臭症候群(トリメチルアミン尿症)と呼ばれる代謝異常の疾患では、トリメチルアミン(タンパク質の変化から生じる)というニオイ物質が体内に発生して汗や息と共に排出され、体臭や口臭が「魚が腐ったようなニオイ」となります。
肺炎や気管支炎などの呼吸器系の病気、鼻炎や蓄膿症などの鼻腔系の病気、そして歯槽膿漏や歯肉炎といった口腔系の病気では「肉が腐ったようなニオイ」が発生し、体臭ではなく主に口臭として強まる傾向にあります。
口腔系の疾患では、原因となる歯周病菌をはじめとした口内細菌による発酵臭・膿によるニオイが大きく関係しています。
鼻腔系の疾患や呼吸器系の疾患でも膿によってニオイが強まります。
しかし、時には肺の細胞が壊死して腐りかけていることによってニオイが発生していることも考えられますから、一刻も早い受診が必要となります。
腎臓は、体内で発生したアンモニア成分や老廃物を尿と共に体の外へと排出する働きを担っています。
腎機能が低下したり疾患が生じたりするとアンモニア成分や老廃物が正常に排出されません。
このように、腎機能の低下や疾患からアンモニア成分や老廃物が体内に蓄積されていくと、トイレや尿に似た「アンモニア臭のようなニオイ」を体臭や口臭として発するようになります。
糖尿病を発症すると体臭が「甘酸っぱいニオイ」へと変化します。
糖尿病特有の甘い体臭の原因としては「ケトン体」というニオイ物質が挙げられます。
糖尿病の基礎知識から「ケトン体」の発生メカニズムについて見ていきましょう。
そもそも、私たちは食事から生命維持のために様々な栄養素を摂取していますよね。
その中でも糖質(炭水化物)は体内で消化されるとブドウ糖(グルコース)となり、エネルギーとして体内で消費される成分です。
パンやご飯そして麺類といった炭水化物を食事として摂取すると、血糖値(血中のブドウ糖の量)が上昇します。
その後、運動をはじめとした活動によってブドウ糖がエネルギーとして消費されると血糖値が低くなります。
食事の前後で血糖値の数値は異なりますが、健康な人の血糖値が極端に変化しないのは血糖値のコントロールを担うホルモンの作用が正常に働いているからです。
ホルモンの中でも糖尿病と密接な関係にあるのが、血液中のブドウ糖を筋肉や肝臓へと取り込み、血統を下げる働きを持つホルモン「インスリン」です。
インスリンの作用が十分に働かないために、ブドウ糖をエネルギーとして使用できず血糖値が高くなっている状態こそが糖尿病なのです。
インスリンの作用がうまく働かずにエネルギーをブドウ糖から得られなくなった体内では、脂肪を脂肪酸へと変化させ、その脂肪酸を燃焼させることでエネルギーを得ようとします。
この脂肪酸が燃焼されると甘酸っぱいニオイ物質である「ケトン体」が生成されます。
このケトン体が体内にどんどん増えていくと、体臭や口臭のみならず汗や尿にもケトン体が含まれるようになり「甘酸っぱいニオイ」が体から発するようになります。
したがって、「甘酸っぱいニオイ」のする体臭がする場合には、それほど体内にケトン体が増加している、つまりインスリンの作用が正常に働いていない糖尿病の恐れがあると十分に考えられますよ。
肝臓では食事から摂取した糖分・タンパク質・脂肪を吸収しやすいように変化させる代謝を行ったり、アルコールや老廃物といった有害物を無害な物質へと分解解毒したりする役割を担っています。
ストレスや体内環境の悪化から肝機能が低下すると有害な物質やアンモニアを無害なものへと分解できなくなり、体臭や口臭が「カビやドブのようなニオイ」になります。
こうした重大な役割を担っている肝臓ではありますが、何らかの障害が生じても痛みをはじめとした自覚症状に気づきにくいため「沈黙の臓器」と言われています。
体臭や口臭の「カビやドブのようなニオイ」は肝臓の不調から得られるSOSのサインだと受け止め、その他に何らかの自覚症状がなかったとしても病院を受診するようにしたいですね。
体臭が「脂っぽいニオイ」になっている場合には、脂漏性(しろうせい)皮膚炎を発症している恐れがあります。
脂漏性皮膚炎とは皮脂分泌の異常や細菌の感染から発症し、もともと皮脂分泌が盛んに行われる頭皮・顔・胸部といった部位に発症しやすい皮膚炎です。
脂漏性皮膚炎では赤くなって痒みを伴ったり、肌荒れからカサついたりするほか、慢性することが多くあります。
また、過剰に分泌された皮脂が体臭を強くする原因となります。
疾患や体内環境の悪化から生じるニオイの種類や程度には個人差があるものの、知らず知らずのうちに発症している疾患や体内環境の悪化をいち早く知るために役立つ大切な情報です。
したがって、体臭の変化や不安を感じた際には、早期発見早期治療のためにできるだけ早く病院を受診するようにしましょう。
体臭の変化から不安を抱いたままでいるよりも、一度病院を受診して「何の心配もない」と知れば不安を解消することもできますよ。
体臭というと嫌なイメージが持たれやすいですが、健康維持のためには決して軽んじてはいけない体のサインの1つなのです。
体臭の異変に気付けるためにも、自身の体臭に敏感になりすぎない程度に、日頃の自身のニオイをきちんと確認しておきたいですね。
何らかの疾患の発症や体内環境の変化では、「健康な体では生じないニオイ物質が生じる」あるいは「本来であれば体の外へと排出されるはずのニオイ物質が体内に蓄積する」といった2つの側面から体臭が強まります。
したがって、普段の体臭と違うニオイやニオイの程度が強まっていると感じられた場合には、何らかの体の不調が生じていると判断して病院の受診が好ましいと言えます。自分自身のみならず家族や友人といった身近な人に体臭の変化が生じていると感じられた際には、それとなく体臭についての指摘をすることも大切ですね。
嫌なイメージを抱かれやすい体臭ですが、時には思わぬ疾患や体調不良をいち早く私たちに伝える「体からのSOSサイン」です。「単なる体臭だし」と軽んじるのではなく、体が懸命に発しているサインだと認識しましょう。
体臭ときちんと向き合う姿勢を大切にしていくことこそが、早期発見・早期治療によって毎日そしてこれから先の将来での健康を守っていく際に必要となりますよ。