MENU

「SIMロック解除義務化」の注意点と考えるべきリスクの管理

「SIMロック」の解除が義務化されて、この記事の執筆時点で既に1年以上の時間が経過しています。

既にSIMロックの解除を何度か経験しているユーザーも多く、特に格安SIMロックの解除を利用する前提としてSIMロックを解除するというケースが多いです。

SIMロックを解除することを、正式に義務化することでユーザーの利益となっています。基本的に全ての端末が対象となり、使用している端末をそのまま使いつつ、今までと別のキャリアに乗り換えを行うことができるようになりました。

しかし、実は「SIMロックの解除義務化」が確実にユーザーの利益に繋がるとは言い切れない、という事実が有ることをご存知でしょうか?

SIMロックの解除についてきちんと理解していないと、安易にSIMロックの解除を利用して思わぬ損失を被る可能性もあるということを理解しておきたいものです。

そこで、SIMロック解除義務化との上手な付き合い方について解説していきます。

目次

そもそも「SIMロック」って?

まず、

「そもそも『SIMロック』って何?」

「解除義務化っていうけど、自分のスマホに何か制限が付けられてるの?」

という疑問を持った人のために、SIMロックとは何かということについて簡単に解説していきます。

まず、「SIMカード」について知っておきましょう。簡単にいえば「電話番号などの契約情報が記録されているICカード」のことで、1.5cm四方程度の大きさのパーツになります。

どの端末にも基本的に挿入されているものであり、スマートフォンで通信を行うためにはこれが端末に挿入されていないと通信ができないのです。

「ロック」とは言いますが、ちょっと手順を踏むことで誰でも簡単にSIMカードを端末から取り出し、別のSIMカード(端末の規格に合うサイズ)を挿入することもできます。

ロックがかけられている部分は「SIMカードの利用」に関する部分です。確かに、ちょっとした作業をすれば誰でも簡単にSIMカードを入れ替える事ができますが、それを利用することに関しては別問題です。

SIMカードには、スマートフォンでの通信などの情報も記録されているので、SIMカードがきちんと機能していないとスマートフォンは使えません。SIMロックは、特定のキャリアのSIMカード以外のSIMカードを使えなくする制限のことになります。

例えば、大手キャリアの「ドコモ」で購入した端末には、ドコモのSIMカードしか認識できないような設定が施されており、これはユーザーが勝手に設定を変えることは出来ません。

このロックにおいて、ドコモ以外の「au」「ソフトバンク」といったキャリアのSIMカードを挿入しても、ドコモのSIMカードではないので通信はできません。

SIMロックがかけられている最大の理由は「端末購入代金の割引の原資の確保」にあります。大手キャリアでスマートフォンを購入すると、多くの場合は「割引」を受けることができます。

具体的には、分割払いになる端末購入代金を、毎月の請求額から差し引くことで割引を行い、結果的に支払う端末代金が安くなるという仕組みです。

当然ながら、値引きをした分だけキャリアが受け取る収入は減少することになりますが、これは利用者の毎月の利用料を原資としているので単純な損失にはなりません。

ですが、もし端末購入からすぐに解約されて別のキャリアに乗り換えられてしまうと、それ以降の利用料は確保できなくなります。

なので、基本的にどのキャリアでも6ヶ月という期間、そのキャリアの通信契約を継続することで利用料を十分額回収できるように、SIMロックがかけられているのです。

キャリアの乗り換えにはSIMカードの変更も含まれるので、SIMロックが掛けられている限りは、他のキャリアに乗り換えすることは出来ないのです。

「SIMロック解除義務化」の注意点

さて、2015年の5月をもって、条件を満たしていればSIMロックを解除することを義務付けられているため、ユーザーは条件を満たすことでSIMロックを解除してもらうことができるようになりました。

キャリアの乗り換えに際して端末を購入しなおさなければならないこともなくなり、ユーザーにとって有益な部分しか無いようにも見えます。

しかし、SIMロックを解除してもらうユーザー側も注意しなければならないポイントが有るのです。

SIMロック解除の対象となるのは「2015年5月以降に発売された端末のみ」

まず、解除の義務化の対象となっているのは、2015年5月以降に発売された端末だけが対象となっています。5月以前に発売された端末に関しては、技術的な解除自体は可能でも「義務」にはなっていない点に注意が必要です。

SIMロック以外の機能制限について

総務省が制定したガイドラインにおいては、SIMロック以外の機能制限についてもSIMロック解除時に解除できることが望ましいという旨が記載されています。また、SIMロック解除時の料金も無料が望ましいとされています。

しかし、各キャリアのホームページにも記載されている通り、現実にはSIMロック解除時に手数料がとられるケース(店頭での解除申し込み)も存在しているので、全てがガイドラインに沿っているとも限らないのです。

キャリア専用にカスタマイズされた端末が多い

注意すべきポイントとして、キャリアごとに性能が異なるカスタマイズが施されている事に関してです。

キャリアでは、基本的に自社の通信契約で利用してもらうことを前提として端末を販売しているので、他社の契約で使用されることは想定していません。

そのため、格安SIMに乗り換えることで一部の機能に関しては、端末本来の性能を発揮できなくなる可能性があります。

大手キャリアでの販売施策が大幅に変化

もう一つは、SIMロック解除が義務化されることによって、大手キャリアでの販売施策にも大きく影響するということです。

どういうことかといえば、大手キャリアではSIMロック解除が義務化されることによる損失を、別の形で補う必要があるということです。

まずSIMロックの解除には、店頭での受付で3,000円ほどの手数料が必要になるだけです。それ以降は格安SIMに乗り換えることによって契約が解除され、利用料は支払われなくなります。

契約解除に伴う端末購入代金の割引サービスが停止されるというリスクが有りますが、既に端末代金を支払い終えているユーザーにとってはデメリットとはなりません。

そこで大手キャリアは、安い手数料でユーザーを手放すリスクを抱えなければならなくなるため、別の部分で損失を補う必要があるのです。それがつまり、販売施策に関わるのです。

また、現状で各キャリアが運営している各種割引サービスや料金体系に関しても、キャリア間の取り決めや総務省の通知など、周囲を取り巻く環境で今後も大幅に変わってくる可能性もあります。

実際、MNPによって転入した場合の割引サービスは廃止されていますし、現状で運営しているサービスが急に廃止されたり、逆に別のサービスが新たに登場する可能性もあり、SIMロック解除を狙っているユーザーはこの点に関しても情報を密に仕入れておく必要があります。

「SIMロック解除」を機にリスク管理について考えよう!

SIMロックを解除することは、ユーザーがキャリアを乗り換える自由を得るだけではなく、さまざまな部分でユーザーの不利益になるような場合もあることは理解しなければならないのです。

ですが、デメリットにばかりに目を向けていては、人間は行動することができなくなってしまうものです。

重要なのは「リスク管理」をきちんと行えるかどうか、どういったメリットがデメリットがあって、どんなリスクが発生する可能性があるのかということを正確に把握して、自分なりに管理することが必要なのです。

利便性だけに捕らわれることなくリスクを意識することが重要

SIMロックを解除することによって、端末を購入したキャリア以外の回線のSIMカードを利用することができます。

特に格安SIMにおいて選択肢が少ないauや無いソフトバンクで端末を購入したユーザーにとっては大きな利便性が有ると言えます。

ドコモの場合でも、海外でプリペイドSIMを利用できるという利点もあるので、多くのユーザーにとって何らかの利便性を享受できるということになります。

しかし、「利便性が高くなる」ということは、同時に「リスクが大きくなる」という側面も見せるということは忘れてはいけません。

もちろん、スマートフォンやSIMカード、通信環境を取り巻くさまざまな制度や取り組み、法制度の整備に関しても必要不可欠ではありますが、それだけで全ての問題を解消できるわけがありません。

最近で言えば「ポケモンGO」というゲームアプリが世界的な人気を博していますが、楽しい半面それをめぐってさまざまな問題が起きていることも、日々のニュースで目にするところでもあります。

便利なもの、楽しいもの、新しいものは、ユーザーにとって利益であると同時に、それを利用することになるユーザーが抱えるべき、管理すべきリスクの存在を忘れてしまえば、どのような害悪となってユーザーを襲うかわかりません。

日本以外の国々でのSIMフリーの「常識」

日本においては、音声通話SIMカードを購入する際にはどのキャリアにおいても「本人確認」が必要になっています。

これは、振り込め詐欺のような犯罪に利用されることを防止するための措置ではありますが、海外ではこのようなルールはあまり一般的とはいえません。

そういった国々では、SIMカードも普通の商品と同じように手軽に手に入れることができるようになっています。

一つの指標として、振り込め詐欺のような全国的な犯罪行為が日本以外ではあまり見られていません。その理由の一つは、「騙されない」ことにあります。

例えば、米国の場合、電話をかけてきた相手が自分の名前を名乗るまで、自分から名乗らないようなしつけを施されています。

そのため、振り込め詐欺のように相手が自分の名前を正確に名乗る前に、要件を言い始めた場合には不審に思い、相手が誰なのか分かるまで真っ当な会話をしないようにしているようです。

インターネット社会に対応するための制度作りを

パソコンが一般家庭に普及し、個人的なインターネットの利用が爆発的に普及し、今ではスマートフォンを使って外出先でもネット上の高画質の動画を視聴できる時代になっています。

これはこの数十年で一気に成長した技術及び普及したものであり、それ以前の認識やルールでは対処しきれない大革命とも言えます。

インターネットは国内だけでなく、ネットワークを通じて世界中とコンタクトし、自分の考えを発信することができるようになっています。

インターネットという環境は、取り巻く全ての企業において想定外のリスクを発生させる可能性を大きくしています。

インターネットという「従来とは異なる規模のサービス」において、企業側が想定しきれないほどのさまざまなトラブルが、毎日のように起こっています。

時に、いちユーザーが悪意を持って、専門家並みの知識と技術をもって他のユーザーや企業を陥れようとする動きもあります。

従来の「お店とお客」という、小さい規模での話ではなく、下手をすれば世界中をその規模として認識して、決して多いとはいえない運営側の人間が世界中の人間が起こしうるトラブルに対応しなければならないのです。

それではパンクしてしまうので、厳格な法整備を急ぐ必要もあります。しかし、従来とは異なる背景と世界観に、適切なリーダーシップを持ってこの問題に立ち向かえる状況にはなっていないというのも現状です。

要するに、新しい仕組みや枠組みに対しては、ルールを決める側も新しい仕組みや枠組みをもって対処し、古い考えに縛られることなく、その時代、その時に最適なルールを考え、施行しなければならないのです。

そのためには、国と企業、そして一般ユーザーも枠組みにとらえ、一体となってこの問題にあたる必要があります。

自分自身で自らを守る意識も必要

要するに、SIMロック解除の義務化は、まだSIMロックや格安SIM、スマートフォンが普及して世界が広がっていく中、必要となる仕組みを十分に用意しきれていない状態でユーザーに提供されたということです。

なので、ユーザーはしっかりとしたルールの中でサービスを享受するのではなく、不十分で不安定な枠組みの中で利便性を勝ち取り、発生するデメリットやリスクを上手く回避することが必要になります。

勝手にそうなるのではなく、ユーザーが積極的に手を伸ばし、足を踏み出さなければ、不要なデメリットやリスクにさらされる可能性が高まるということです。

そのため、利便性の反面発生するリスクがどのようなものであるかをしっかりと認識し、そのリスクから自分を守るためにどのようなことが必要なのかを知るという意識を十分に持つ必要があります。

言うなれば、カードレールのない急カーブ、鎖で繋がれていない狂犬のようなものだと思わなければなりません。

安全な枠組みが提供されているわけではなく、企業や一般ユーザーからもたらされた情報を自分なりにまとめて把握し、自分が利用するサービスにおいてどのような利便性があるのか、どういった使い方をすると危険なのか、不具合や損失が発生した際のサポートはあるのか、どうすれば良いのか、悩みは尽きません。

今までは「説明書」すらまともに読んだことのない人も、もはや説明書にどれだけの時間を費やさなければならないことでしょうか。

利便性の高さの反面、襲いかかるリスクから守ってくれるルールや仕組みは不十分であり、それらの脅威から身を守る盾や体術は、自分で用意しなければならない時代に立たされているという自覚を持つように心がけましょう。

そうでなければ、「SIMロック解除」という利便性を享受する資格なしと言っても過言ではありません。

目次