相続した不動産を売却する時には、相続登記と税金、そして名義人に気を付けなければいけません。
この3点に気を付けておけば、売却もスムーズに行えますし、節税効果がある場合もあります。
相続した不動産を売却するには、被相続人(亡くなった方)から相続人(相続を受ける人)への名義変更を行う、相続登記が必要になります。相続登記の簡単な流れは以下の通りです。
相続した不動産を売却する時には相続登記が必要
相続した不動産を売却するには、被相続人(亡くなった方)から相続人(相続を受ける人)への名義変更を行う、相続登記が必要になります。相続登記の簡単な流れは以下の通りです。
- 被相続人の遺言書があるかを確かめる
- 相続人の人数などの調査を行う
- 相続財産がどのくらいあるのか調査を行う
- 相続人同士で遺産分割協議を行う
- 相続人全員の合意の元遺産分割協議書を作成する
- 相続登記、名義変更を行う
この一連の手続きである1~6までを全て終わらせないと、相続した不動産を売却する事は出来ません。
相続登記とは?
相続登記とは、簡単に言うと「名義変更」を行う事です。良く勘違いされている事は、相続登記の期限です。
被相続人が亡くなった後、相続人に財産は相続されますが、相続登記をする期限は法律で決まっているワケではありません。
そのため、名義人が亡くなってから何年も経っているのに名義が書き換えられていない不動産も多く存在するのです。
特に、被相続人が亡くなってから時間が経っている場合は、前項の1~6まで全て終わっているか確認しておきましょう。
売却したいと思っている人の名義に変更されていなければ、そもそも不動産の売却が出来なくなります。
特に財産が多かった場合には、相続登記が後回しにされて、名義変更が行われていない事もあり得ます。
相続登記の具体的な方法は?
相続登記は被相続人から相続人への名義変更をする必要があるので、両者の身分や立場を証明する以下のような書類が必要になります。
- 被相続人の戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 相続人全員の印鑑証明書
- 相続人全員の住民票
- 不動産の固定資産評価証明書(年に一度所有者に郵送されます)
- 不動産の全部事項証明書(法務局で取得できます。※1)
- 遺産分割協議書(後述します)
- 相続登記申請書(次項でお話します)
※1不動産の全部事項証明書は法務局に行かなくても以下URLより取得できます。
「登記情報提供サービス」
相続登記申請書について
前項の中で「相続登記申請書」について、分かりにくいと思いますので個別に解説します。
この申請書は、不動産の名義書き換えに必要な申請書になります。
記入欄が多いため、ひな形※2を見ながら記入しないと難しいです。
この申請書を作成して、前項で紹介した書類を全て揃えて最寄りの法務局へ持って行きます。
その法務局の登記官が、書類を全て受理すれば相続登記の申請完了です。書類に不備がなければ、書類提出から1~2週間程度で新しい登記事項証明書(権利書)が発行されて、相続登記が完了となります。
こちらも良く勘違いされるのですが、登記自体は司法書士の専門業務ではありません。
つまり、司法書士の資格を持っていない一般の方でも登記することは可能です。
しかし、前項の相続登記申請書の内容や、必要書類の多さを考えた場合に、慣れていない人が相続登記をすると非常に手間と時間が掛かります。
そのため、司法書士に委任する場合がほとんどです。
※2法務局ホームページ
相続登記申請書遺書ひな形
http://www.moj.go.jp/MINJI/MINJI79/minji79.html
相続登記にかかる費用について
相続登記は必要書類の取得費用が掛かり、司法書士に登記を依頼した場合には、司法書士に支払う報酬料も掛かってきます。以下が費用の内訳です。
- 戸籍謄本や印鑑証明などの必要書類:1通200円~800円程度
- 不動産の全部事項証明書:600円/1物件
- 登録免許税:固定資産税の0.4%※3
- 司法書士報酬料:5万円~(依頼する司法書士によって異なります)
このように、相続登記に必要な費用はそれ程大きな費用ではありません。司法書士に支払う報酬料と、登録免許税によって大きく総費用額は変わってきます。
※3詳細は国税庁ホームページをご覧ください
https://www.nta.go.jp/taxanswer/inshi/7191.htm
相続した不動産を売却するなら早めに売却する
相続した不動産を売却するなら、相続してからなるべく早めに売却する事をお勧めします。
早めに売却することによって、売却のタイミングによっては節税出来る可能性があるからです。
相続税と譲渡所得税
不動産に限らず財産を相続した時には、その財産額に応じて相続税がかかります。
その相続税の申告は、被相続人が亡くなった事を知った日から10カ月以内に申告する必要があります。
つまり、2月4日に亡くなった事を知ったのであれば12月4日が相続税の申告期限になります。
また、申告するだけでなく、相続税が発生するのであれば、この期限内に納税する義務もあります。
更に、相続した不動産を売却して利益が出た場合には、その利益(譲渡所得)に対しての税金である「譲渡所得税」も掛かってくるのです。
相続税の申告期限の翌日から3年以内の売却
前項のように、場合によっては相続税も支払い、譲渡所得税も支払うという二重の課税になる場合があります。
しかし、これには特別措置があり、相続税申告期限の翌日から3年以内の相続不動産を売却すれば、相続税の一定額を取得費に加算できます。
この特例を「相続税の取得日加算の特例」と言います。この特例を利用すれば、譲渡所得自体を小さくできるのです。
例えば、相続した不動産を売却した時の譲渡所得(利益)が700万円発生したとします。
通常であればその700万円に対して譲渡所得税が掛かってくるのですが、仮にその不動産に関する相続税が700万円掛かっており、更にその不動産の相続税申告期限の翌日から3年以内の売却であったとします。
その時には、譲渡所得の700万円と相続税で支払った700万円は相殺され、譲渡所得税は掛からないという仕組みになっています。
諸条件などの詳細は国税庁ホームページ※4をご覧ください。
※国税庁ホームページ
https://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3267.htm
名義人が複数人いる場合の注意点
相続した時に、一つの不動産を兄弟などの他の相続人と共有で相続した場合には注意が必要です。
なぜなら、売却や賃貸を含む不動産の「処分」については、名義人全員の同意が必要になるからです。
つまり、仮に実家を兄と共有名義で相続した時には、自分が売却したいと考えても兄が売却しなければ、不動産を売却する事が出来ません。
不動産の売買契約書も成立しませんし、そもそも不動産の売却を不動産会社に依頼する媒介契約書すら締結出来ません。
そのため、単体ではなく共有の場合には、事前に共有者と話し合っておきましょう。
売却するかもそうですが、売却金額や引渡時期なども事前にすり合わせておかないと、売却中のトラブルの元になります。
まとめ
このように相続した不動産を売却する時には、まずはそもそも相続登記をキチンと済ましてあるかの確認を行いましょう。
もし相続登記をしていなく、被相続人名義のままであれば迅速に相続登記を行い名義の書き換えをしましょう。
また、相続した後に不動産を売却する場合には、相続税の他に譲渡所得税もかかる事があること。
また、その譲渡所得税は相続した後に素早く売却すれば節税出来る事も覚えておきましょう。
最後に名義人が複数の場合は一筋縄ではいきません。
売却中にトラブルになってしまえば、せっかく高く早く売れる機会があっても逃してしまう可能性があります。
そのため、売却金額と引渡時期は必ず事前に話し合っておきましょう。