LINEがMVNOに参入!「LINE MOBILE」に見えるユーザーの不利益

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2016年3月、高い知名度を誇る「LINE」が「LINE MOBILE」として通信事業への参入を発表しました。

 

これは、主要なコミュニケーションサービスに必要な通信料が無料になるということで、業界やユーザーに衝撃を与えたことは記憶に新しいです。

 

さて、それだけ見ると何だかお得な響きであるように感じます。しかし、そういったものほど、きちんと中身を見ておかないと、いざ自分が関わった時に思わぬ損をしてしまうことにもなります。

 

そこで、LINE MOBILEの中身をある程度解説した上で、それがユーザーにとってどのような効果をもたらすのかということについて解説していきます。

 

LINEがMVNO事業に参入の衝撃!

 

2016年3月、スマートフォンのコミュニケーションツールとして絶大な知名度を誇り、スマートフォンユーザーでなくとも名前だけなら知っているという人が圧倒的に多い「LINE」は、事業戦略を発表するイベントを開催しました。

 

このイベントでは、LINEに関する新しい要素が大量に紹介されました。

 

近々、5周年という節目を迎えるLINEにとって、さらなるユーザーの獲得や既存ユーザーの顧客満足度を向上させるために、様々な新戦略を用意しているのです。

 

中には、決済方法に関する新しいサービスを盛り込むなど、その熱意と意欲が垣間見えます。

 

その中で特に注目を集めた発表があります。

 

それは「LINE MOBILE」という通信サービスです。

 

今まではコミュニケーションツールの提供を行ってきたLINEなのですが、このLINE MOBILEはMVNOとして、つまり「通信事業」として参入するということなのです。

 

この発表には、LINEやスマートフォンユーザーだけでなく、スマートフォンに関わる各企業にも大きな衝撃となりました。

 

LINEの通信料が無料!料金プランは月額500円から

 

ユーザーが利用するにあたって必要になるのは、その「中身」がどのようなものであるかです。

 

LINE MOBILEは,2016年夏からのサービス開始を発表しており、まだ時間があるので細かいところまでは情報が入っていません。

 

現時点で知り得る情報としては、以下のとおりになります。

 

まず、「使用するのはドコモ回線」ということです。これは他の多くのMVNOが同様に利用しているので、安心と安定感を享受できます。

 

とは言え、LINEが独自に提供するサービスであるということで、他社との差別化のためにもいくつかの特徴があります。

 

それはまず、月額料金が500円から利用できるという手軽さです。

 

500円という金額はかなり魅力を感じるユーザーも多いでしょうが、現時点での評価は難しいです。

 

通信容量や通信速度に関するはっきりとしたスペックがまだ公表されていないので、スペックとコストで見比べたコストパフォーマンの面では、一概に評価を下すことは出来ません。

 

なお、音声通話に関しては、「LINE Out」の利用が想定されているようです。

 

まだまだ判明していない要素も多いのですが、少なくとも「低コストで利用することができるサービスである」という点は間違い無さそうです。

 

次に「LINEの通信料が無料」という特徴です。これには、メッセージだけでなく、写真や動画などのやりとり等も含んでいます。

 

つまり、データ容量の上限に達しても、LINEの利用だけは継続できるということになります。LINEのヘビーユーザーにとっては、分かりやすくて大きな恩恵であると言えます。

 

通信料の点で言えば、「ツイッター」や「Facebook」といった大手のコミュニケーションサービスの利用料についても、通信料がかからないというプランの提供が予定されています。

 

他にも、「LINE MUSIC」などについても同様のプランが提供予定となっています。

 

どういった月額利用料になるかで、どれだけお得であるかも変わってきますが、毎月かかっている通信料さえ把握していれば、何円節約できるのかも簡単に計算できます。

 

最後に、「年齢確認」の機能が搭載されているという特徴です。

 

LINE MOBILEがサービスを提供することで、ユーザーが成人であればID検索が可能になります。

 

従来は、大手キャリアのみが利用できる機能であり、MVNOの利用の場合では年齢確認が出来ず、ID検索が出来ませんでした。

 

LINE自身が通信サービスを提供することで、この点についても解決することができるのです。

 

日本のスマホ普及率をさらに上げるためと言っているが果たしてどうなのか?

 

さて、これだけ魅力的な特徴を持つLINE MOBILEですが、「お得である」ということは経営戦略的に見て何らかのメリットが企業側にあるものです。

 

もちろん、ユーザーから搾取するような意味ではなく、ユーザーにメリットがありながら企業にもメリットが有る戦略を打ち出さなければ、企業として成り立たせる事はできません。

 

では、今回のLINE MOBILEではどういった狙いがあるのでしょうか?

 

先の発表イベントでは、「日本におけるスマートフォンの普及率を高める」ということが狙いであると明言されています。

 

安い月額利用料など、新規でスマートフォンを利用しやすい環境を作り上げることで、現時点でスマートフォンを利用していないユーザーをスマートフォンの利用へと促そうという狙いです。

 

スマートフォンの利用者数が増えれば、それだけLINEの利用にもつながります。

 

LINEはスマートフォン専用のコミュニケーションサービスであり、スマートフォンユーザーの人数が利用者の最大数になります。

 

これを増やすことで、LINEはその利用者数を増やそうとする狙いがあるのです。

 

ユーザーにとっては「安い料金」、LINE側にとっては「顧客の増加」という、双方にとってメリットが有る戦略であるため、ここだけを見れば「理に適っている」と評価できます。

 

しかし、冷静に考えてみたいところでもあります。

 

この戦略だと、

 

スマホユーザーが増える

LINEの利用者が増える

LINEの売上が増える

 

という構図が基本概念となります。

 

さて、「スマホユーザーが増える」ということは、イコール「現時点でスマ-トフォンを使っていないユーザーに、スマートフォンに乗り換えてもらう」ということになります。

 

つまり、この戦略のターゲットは「非スマホユーザー層」ということになるわけです。

 

では、「非スマホユーザー」とは誰か、現時点では往々にして「シニア層」になります。

 

彼らがスマートフォンに乗り換えない理由はいくつか考えられますが、安い料金で利用できるという点は、彼らにとっても一定のメリットが有ります。

 

しかし、彼らの中には「料金の問題以外」で、従来型の携帯電話を使っているユーザーも多いのです。

 

例えば、「従来型の携帯電話の使い勝手が良い」という場合です。この場合、そこに料金の安さという要素が入り込む余地はありません。

 

そうなると、「利用料が安いですよ!」「LINEやツイッターがタダで利用できますよ!」というキャッチコピーは、ほとんど意味を成さないのです。

 

なぜなら、従来型の携帯電話にLINEやツイッターなどの比較的新しいコミュニケーションツールを利用することは求められておらず、往々にして従来型の音声通話が利用できれば良いと考えているユーザーが多いです。

 

かつて、従来型の携帯電話から初めてスマートフォンに乗り換えた時のことを思い出してみてください。もしくは、初めて携帯電話を持った時のことでも構いません。

 

最初は、操作一つに苦労したのではないでしょうか?

 

全く新しいツール・デバイスというものは、なかなか速やかに使いこなせるものではないものです。非スマホユーザーの中には「使いこなせるかどうか心配」と考えている人も多いです。

 

そうなると、「スマホの新規顧客を増やす」という旗印を掲げている今回のLINE MOBILEの戦略には、新規ユーザーへの「サポート」が充実していることが求められます。

 

しかし、現時点ではユーザーサポートの充実さについては、全く言及されていないと言っても過言ではありません。

 

もちろん、何らかのサポートサービスは用意してくるものと思われます。ただ、そこには少し違和感があります。

 

もし、本当に「スマホユーザーを増やす」ということを旗印として掲げるのであれば、まず最初に「新規ユーザーへのサポートを充実させます」という内容を発表するはずなのです。

 

新しいレストランをオープンするとして、その食べ物のジャンル(和食や洋食、肉料理や魚料理)を最初に公表しないなんてことがあるでしょうか?この点で、どうしても違和感を覚えてしまうのです。

 

ここまでの内容を振り返ってみると、

 

①LINE MOBILEは利用料が安く、LINEが無料

②ツイッターなどのサービスに係る通信料を無料にするプランを用意する予定

③サポートサービスについては触れておらず

 

ということになります。

 

これを総合すると、今回のLINE MOBILEのターゲットは「既存のスマホユーザー」と考えるほうが自然なのです。

 

「LINEの通信料無料」の裏にあるネットワーク中立性の問題

 

もう一つ考えておきたい内容があります。それはLINE MOBILEが「ネットワークの中立性」を欠くのではないかという懸念です。

 

例えば、「ウチのコミュニティに加入したら、『レストランA』での食事代が10%オフになります」というキャッチコピーで加入者を募ったとします。すると、レストランAの利用者は増加するというわけです。

 

ここに新たに、『レストランB』や『レストランC』などの同種の店舗が新規に出店するとなると、『レストランA』から顧客を奪うには、価格面やサービス面でそれなりの努力をする必要があります。

 

もし、コミュニティの提供するサービスがさらに大きなものであった場合、それだけ新規参入者は苦労を強いられることになります。

 

既存の店舗も同様の影響を受け、次第にその街のレストラン利用者は、『レストランA』へと集中します。

 

他にも同様のサービスを提供する企業があったとしても、「サービス提供企業」「サービス非提供企業」で、利用者は前者へと集中することになります。これを「寡占化」と言います。

 

これと同じことが、スマホユーザーにも起こるのではないかと考えられているのです。

 

LINE MOBILEは、既存のスマホユーザーをLINEに集中させる効果が予想されています。LINEは最大手のコミュニケーションサービスの一つであり、高い知名度を持ちます。

 

スマホユーザーでLINEを利用していない人でも、周囲にLINE利用者が多い状況にあることは、現在の状況では全然あると思います。

 

そんな中で、LINEの通信料がタダになり、月額料金も安いサービスが提供されるとなると、乗り換えるユーザーも多くなると予測できます。

 

そして、LINEと同種のサービスを提供している企業の場合、LINEに対抗する特徴をそのサービスに付与できるかどうかは、かなり厳しい条件となります。

 

その結果、LINEの魅力ばかりが浮き彫りになり、他のサービスは細々と継続するか、あるいはサービス自体を終了させる可能性もあります。

 

ここに「寡占化」が成立します。「寡占化」や「独占化」が成り立ってしまうと、実はユーザーにも不利益となるのです。

 

例えば、何人かの商売人が、同じジャンルの商品を売る屋台を近くに展開するとします。

 

そのエリアでの顧客の数には限りがあるので、しっかりと売上を伸ばすためには、出来る限り多くの顧客に「自分のところの商品の魅力をアピールする」ことが必要になります。

 

「ウチは他所よりも安いよ!」「ウチは国産天然の材料をつかっているよ!」「ウチは3つ購入すると1つオマケするよ!」と、活気の良い宣伝合戦が繰り広げられます。

 

結果、ユーザーはより安く、より高品質な商品やサービスを利用することが出来ます。

 

しかし、これは同業他社が「そこまで大きな戦力差がない状況」であれば成り立ちます。その構図の中に1社だけが圧倒的な力を持っていた場合、他社は対抗することが出来ません。

 

するとどうなるかといえば、企業は顧客を得るための努力を怠るのです。値下げや品質を上げなくても他社は対抗することが出来ないので、努力しなくても顧客を得ることが出来ます。

 

顧客を得たいという企業の競争が無くなると、「競争によるユーザーへの利益」が発生しないのです。

 

今回、LINE MOBILEではツイッターやFacebookといった大手のコミュニケーションサービスについても通信料を無料にするプランを検討中です。

 

しかし、それ以外のコミュニケーションサービスについては、LINEに対抗することが出来ずに衰退することが予測されます。

 

「LINEに対抗できる企業」がどれだけあるかということになりますが、LINEは最大手の一角、寡占化が進むことは容易に想像できます。

 

もう一つ問題があります。それは「無料の通信を判断する」ということについてです。

 

例えば「会員登録すると入場料無料」という施設があるとします。会員登録してその施設に入場する際、多くの場合は「会員証」や「告知メール」などを、係員に提示することで無料で入場することができます。

 

LINEの場合にも同様です。LINE MOBILEはLINEの利用を無料にするものですが、それは「LINE以外の通信は無料ではない」ということです。

 

プランによっては、無料にできるアプリも増えてくることでしょうが、そうなると余計に「無料になる対象のアプリによる通信なのか、そうでないのかという判断」が必要になります。

 

上記の例で言えば「会員証」がそれに該当しますが、係員は「会員証を確認する」ことで判断の材料としています。LINEの場合、通信内容を確認することで初めて無料の対象かどうかを判断することが出来ます。

 

その仕組として「DPI」という仕組みが採用されています。LINEもこれを採用しており、通信のパターンを判別することによって、その内容が無料の対象であるかを調べることが出来ます。

 

しかし、これは同時に通信内容を何らかの形で参照しているということに他なりません。

 

おそらくユーザーの同意を得ることになりますが、問題なのは「どんな形で参照するのか」「どこまでなら参照しても通信内容を秘密にできるか」という基準が不明確であることです。

 

LINE MOBILE以外にも、特定のアプリを対象としてその通信を無料にするという内容を含んだサービスを提供する企業は増えつつあります。

 

そうした企業が増え続ければ、最終的には寡占化が懸念されます。そうなる前に、通信業界でこの問題についての議論をしっかりと行うことが求められます。

 

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