Web広告を非表示にできるiOS 9の「コンテンツブロッカー」について

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「iOS 9」の新機能として、多くのユーザーが注目している機能があります。それが「コンテンツブロッカー」です。

この機能は、「Safari」でアクセスしたWebサイト上に表示される広告を消去することが可能であり、この点はさまざまな視点から議論を呼んでいます。

さて、Appleはどうしてこのような機能を搭載するに至ったのでしょうか?

 

専用のアプリを使えば、Safariの広告もブロックできる!?

まず、コンテンツブロッカーの概要について解説していきます。コンテンツブロッカーがどのような運用がなされ、それが議論を呼んでいる原因がどこにあるのか、3つの項目にわけて解説していきます。

 

iOS 9に搭載されている 「コンテンツブロッカー」

iOS 9は、「iPhoneSE」を除き現行で最新機種に当たる「iPhone6s」「iPhone6sPlus」に搭載されている最新のiOSであり、ほぼ同時期に従来モデル向けに配信が開始されています。

iOS 9はユーザー数を伸ばしていますが、その中で議論を呼んでいるものが「コンテンツブロッカー」という機能です。

 

前述のとおり、コンテンツブロッカーはWebブラウザ「Safari」で表示されたWebページの、一部のコンテンツを非表示にすることができる機能を持ちます。この「一部のコンテンツ」に、Web広告も含まれているのです。

 

コンテンツブロッカーは、対応アプリをインストールすることで有効

「iOS 9に搭載されている」という表現をしましたが、厳密には初期状態ではコンテンツブロッカーを利用することはできません。

コンテンツブロッカーは「Safariの拡張機能」に分類される機能であり、専用のアプリをインストールすることでこの機能を利用することができます。インストールしたアプリの種類によって、表示を制限するコンテンツの内容も異なります。

 

このコンテンツブロッカーが論議を巻き起こしている理由

コンテンツブロッカーは、前述のとおり議論を巻き起こしている存在でもあります。その理由は、コンテンツブロッカーがブロックできるコンテンツに「Web広告」が含まれていることです。

コンテンツブロッカーを利用することで、Webサイト上の広告を全て非表示にすることもできます。実際に、App Storeではこの機能を利用したさまざまなアプリは登場しています。

 

これが物議を醸す原因は、Webサービスのビジネスモデルが深く関わります。

 

ユーザーの利便性を高める一方、ビジネス面で多くの論議を巻き起こす

コンテンツブロッカーは、iOS 9のユーザーにとって大きなメリットとなりますが、これがビジネス面において大きな議論を呼ぶことになります。

 

広告がブロックされると、得られるはずの広告収入がなくなる

「広告が表示されない」ということは、「広告が見られなくなる」ということであり、それはそのまま「本来は得られるはずの広告収入がなくなる」ということになります。

これがビジネス面において大きな問題となるのです。Webサービスの中には、無料で利用できるサービスも少なくありません。

これは、広告料によって利益をあげ、無料で利用可能なことによってユーザーを集めることで広告料による収益を確保しているのです。広告収入がなくなれば、この仕組が成り立たなくなってしまいます。

 

Webサービスの多くは、Webサイトにアクセスしたユーザーの動向を追跡(トラッキング)することによって、ユーザーの動向分析を行います。

これによって、そのユーザーに適した広告を表示したり、コンテンツの内容を改善することにも役立てることができます。

しかし、コンテンツブロッカーによって行動追跡が拒否されてしまうと、トラッキング情報を基本としているサイト内容の改善が難しくなってしまいます。

 

このように、コンテンツブロッカーによって一部のコンテンツがブロックされてしまうことによって、それに関わるさまざまなビジネス面での弊害が生じてしまうのです。

 

Webサイトを利用するユーザーの視点で考えると、メリットはある

しかし、ビジネス面に関係ない一般ユーザーの視点から見ると、コンテンツブロッカーはメリットがあるとみることができます。

まず、Webコンテンツが表示されることによるストレスの問題です。無用な広告が眼に入ることで、人は余計なストレスを感じてしまうことが多いです。

次に、パケット通信に関することです。広告の表示にもデータ通信が必要であり、データ容量の少ないプランで契約しているユーザーにとってはこれをブロックすることによって通信量を節約することができます。

 

さらに、前述の「トラッキング」に関する抵抗感という視点もあります。

トラッキングは簡単にいえば「自分のWeb閲覧等の動きが監視されている」ということであり、自分の行動に即した広告が表示されることによって不快感をあらわにするユーザーも少なくありません。

コンテンツブロッカーによってトラッキングを制限することで、この点にも言及することができるのです。

 

事実、有料のアプリが多いコンテンツブロッカーですが、これが意外と人気を博しているのです。お金がかかるのにわざわざアプリをインストールするということは、それだけ需要があるということになります。

前述の、広告やトラッキングを制限する事によるメリットを、多くのユーザーが共有しているということにほかなりません。

 

Webビジネス全体の構造に大きな影響をもたらす可能性がある

ユーザーへの利益が大きい反面、前述のとおりビジネス面において大きな問題となる可能性を抱えるのがコンテンツブロッカーです。

例えば、現在は無料で提供されているサービスが、採算が取れなくなって有料サービス化する、あるいはサービスの品質が低下するということが考えられます。もしくは、サービスの提供自体を継続できなくなる可能性もあります。

 

また、考え方の一つとして「他社の利益を奪い取る」とも考えられます。前述のとおり、コンテンツブロッカーはアプリのインストールが必要になりますが、このアプリは有料です。

広告場ブロックされることによって広告収入が激減し、アプリの販売者は売上を伸ばすことができます。この部分だけ見ると、アプリの販売者が広告業者の利益を奪い取っていると見ることができるのです。

そういった観点からか、広告ブロックアプリを公開2日で取り下げるというケースも発生しています。

 

広告をブロックするという発想自体は、今までもPC分野で存在していた

ですが、実は「ブラウザの拡張機能で広告をブロックする」という発想自体は、PCの分野で存在していました。決して、近年になって新たらしく登場した機能というわけではないのです。

具体例を挙げれば、コンテンツブロッカーを利用した広告ブロックアプリを発表した「Adblock Plus」は、PCの「Firefox」「Chrome」向けの広告非表示アドオンを提供しています。

実際にこのアドオンは広告ブロックによってWebサイトの読み込み速度が上昇することで人気を集めています。

 

加えて、完全に広告をブロックするということにはならないのです。コンテンツブロッカーが機能するのは、iOS標準のSafariだけであり、それ以外のブラウザや開発者向け機能「WebView」にはコンテンツブロッカーの影響は及びません。

 

「コンテンツブロッカー」はWebからアプリへの布石なのか

このように、コンテンツブロッカーによるユーザーの利益と広告会社の不利益の折衝が危惧されているわけです。では、この記事をまとめる項目として「コンテンツブロッカーの狙い」について解説していきます。

 

OSを開発するApple自身が、広告ブロック機能を提供する狙いは?

まず、そもそもOSを開発しているApple自信が広告ブロック機能を導入したことにおける推察です。これが一アプリ開発会社の提供によるものであれば、まだ納得がいきます。

しかし、OSを開発するApple自信がこれを提供するということには大きな意味があるように思えます。有り体に言えば、Appleは従来の「広告収入に頼ったビジネスのあり方」を変えようとしているのではないかと思うのです。

無論、これはあくまでも推測に過ぎず、Appleの公式の意見ではありません。Appleは、コンテンツブロッカーをそこまでプッシュしている様子はありません。

 

一つの可能性としては、スマートフォンの利用におけるWebサービスの存在感そのものを低下させたいのではないかと考えられます。根拠の一つとして、AppleがiOS 9の提供に合わせて用意した「News」という独自のニュースアプリの存在が挙げられます。

これにより、Appleは自信のニュース配信のプラットフォームを持つことになり、Apple自身がWebメディアに成り代わってインターネットメディアとして情報と広告を抑えようとしていると考えられます。

 

これに加えて、コンテンツブロッカーの提供の日時が近いことも根拠として考えられます。Newsとコンテンツブロッカーがほぼ同時期に提供されていることは、大きな関わりがあることを示唆しています。

 

iPhone 6s/Plusと同時に発表された新Apple TVが搭載する「tvOS」

もう一つ、注目しておきたい存在があります。それは、Appleのセットトップボックス「Apple TV」のために開発された新しいOSである「tvOS」です。

iPhone6s等と同時に発表された新Apple TVが搭載しているこのOSは、そのベースがiOSであり、従来とは違ってさまざまなアプリをインストールして利用することができるという大きな違いがあります。

 

tvOSには、前述の「WebView」が搭載されていません。tvOS向けのアプリはWeb技術を利用したコンテンツが実質的に活用されないということで、開発者の間では話題になっていました。

また、Appleは過去にも「Adobe Flash」をiOSから排除してアプリの開発言語に独自の「Swift」を採用しているという動きがあります。それだけAppleはコンテンツ技術に対して強いコントロール方針があるということです。

 

これらの事柄から、Appleはいつかコンテンツ技術のメインをオープン性の強いWebからApple自身がコントロールしやすいアプリに大きく方針転換するのではないかと予測されます。

もちろん、それが今すぐということはあまり考えられませんが、コンテンツブロッカーの存在がその「布石」なのではないかと考えることができるのです。

 

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