格安SIMでよく利用する「IP電話」や「中継電話」の通話料金はなぜ安い?

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格安SIMでは、「音声定額」のように長時間の音声通話をお手軽な料金で利用するサービスを実現するハードルは非常に高いです。ですが、通話料金を安く済ませられるサービスは、数多く存在しています。

「IP電話」や「プレフィックス番号」は、通常の通話機能に比べてやすい電話料金で利用することができます。これらのサービスは、どうして安くできるのでしょうか?

 

格安SIMの電話料金は安くならないのか?

一般的に、格安SIMは「通話料金が高い」というイメージを持たれています。事実、格安SIMの通話料は30秒あたり20円が必要であり、1時間の通話で2400円もかかります。

これでは基本料金が安くても、通話料だけでそれなりの金額になり、格安SIMの魅力が薄れてしまいます。では、なぜ格安SIMの電話料金は安くならないのでしょうか?

 

格安SIMには音声通話料金の完全定額制がない

格安SIMの通話料金の高さの代名詞ともなっているのが「格安SIMには音声通話料金の定額制がない」ということです。前述のとおり、格安SIMの通話料金は30秒あたり20円という、通話時間に比例して料金がかかる仕組みとなっています。

しかし、大手キャリアの場合は「かけ放題」といった、一定の料金を支払うことでいくら通話しても追加料金が発生しない仕組みがあります。

 

格安SIMの中にも「毎月◯分までなら通話無料」という条件を付帯しているプランも有ります。

しかし、条件にある時間を超えてしまった場合には料金が発生してしまいますので、仕事を含めてスマートフォンで通話する機械の多い人にとっては「あっても無いような」サービスであると言えます。

結局のところ、時間あたりの通話料の高さと、通話し放題のプランが存在しないことが、格安SIMの通話料金の高さの原因となっているのです。

 

MVNOのサービスがこのような課金体系になっている理由

さて、通信会社に務めているわけではない筆者でもこの程度の分析はできるわけです。

であれば、専門家である通信会社の担当者であれば、この程度の分析は当然ながらできますし、かけ放題のプランを持たない格安SIMの現状を鑑みれば、その先駆けとなることで多くのユーザーを集めることができるはずです。

ですが、実際にはどこのMVNOもこれを実行に移していません。これにはれっきとした理由があるのです。

 

その理由は「MVNOが音声通話に関する設備を持っていない」ということが挙げられます。MVNOは、大手キャリアの設備を利用してユーザーに音声通話のサービスを提供しています。

そのため、ユーザーは格安SIMを利用している最中でも音声通話に関しては大手キャリアの設備を利用しているということになります。

この仕組みにおいては、「大手キャリアからMVNOに通話料金を請求→MVNOがユーザーに通話料金を請求」というプロセスで通話料金の支払いが行われます。

 

この現状から一新し、MVNOが独自に音声通話の設備を保有している状態になれば、設備の稼働状況とコストを鑑みて、それに適した独自性の高い料金プランを提供することもできます。

しかし、現状ではMVNOの音声通話の設備の自綱との接続を許可している大手キャリアは存在していません。

 

キャリア設備を利用した状態では独自の料金プランを作ることが困難

MVNOが独自に音声通話の設備を保有していれば、通話し放題やその他の独自的な料金プランを提供することができます。

しかし、大手キャリアの設備を利用している現状において、MVNOが独自の料金プランを提供することはできず、30秒20円の通話プランを提供することしか出来ないのです。

 

無論、今後MVNOが音声通話の設備を保有して運用することができれば、大手キャリアのようなかけ放題のプランも提供できるようになることでしょう。

ですが、現状では極めて難しい話でもあるということには変わりません。「理論上はできるが現実的には難しい」というのが結論です。

 

「IP電話」を使う方法

MVNOは通話し放題のプランを現状では提供できる見通しがない、であれば、格安SIMでは音声通話を利用しない、もしくは高い料金を甘んじて受け入れて音声通話を利用しなければならないのかと思ってしまいます。

しかし、格安SIMであっても「安い料金で音声通話を利用する方法」というものは存在します。その一つ目として「IP電話」という方法があります。

 

その通話は、キャリアの設備ではなくMVNOのデータ通信の設備を通る

IP電話は、スマートフォンで専用のアプリを使用することで利用することができます。この通話方法の場合だと、通常の音声通話とは異なり、MVNOの通話設備を通って音声通話を利用することになります。

要するに、大手キャリアの設備に依存しない音声通話になるということです。

 

この場合だと大手キャリアの設備ではなく、MVNOが保有する音声通話設備を媒介して通話を行いますので、「設備がないから通話料金に自由度がない」という欠点を解消し、独自の料金プランを提供することができるのです。

そのため、IP電話では1分あたり10円前後で利用できるので、大手キャリア経由の通話の3分の1以下のコストで音声通話を利用することができるのです。

 

050から始まる新しい電話番号を使って、通話する方法

IP電話の方法としては、まず「050」から始まる電話番号を利用した通話方法があります。NTTコミュニケーションズの 「050 plus」は、専用のアプリを利用することで割安の音声通話を利用することができます。

月額300円の基本料金を支払うことで、固定電話へは3分8.64円で、携帯電話へは1分17.28円で通話が可能です。

 

他には、ケイ・オプティコムの 「LaLa Call」が挙げられます。eo光/mineoを利用中のユーザーの場合は、基本料金が無料になり、携帯電話には1分18円、固定電話には3分8円で通話が可能になります。

 

090/080/070番号がそのまま使える方法

前述の方法は、電話番号の最初の3桁が「050」になるという特徴があります。しかし、「090」「080」「070」の番号がそのまま利用できるIP電話サービスも存在します。それが、ニフティの 「NifMoでんわ」です。

 

専用のアプリを利用することで、月額1,300円で音声通話をかけ放題になります。また、前述のサービスと比較して基本料金が高くなる代わりに、通話時間に比例した料金を追加で支払うことがなく、毎月1300円で音声通話をかけ放題のサービスとなっています。

欠点として、「フリーダイヤル」や「緊急電話番号」などにはこのアプリからかけることはできません。

 

SkypeやLINEの無料通話

無料で音声通話を楽しめることで有名なアプリとしては「Skype」や「LINE」といったものが代表的です。データ通信量は発生しますが、アプリ同士であれば完全無料で音声通話を楽しむことができます。

ただし、「同じアプリ同士」でしか無料の音声通話を利用することはできず、連絡相手が該当するアプリをインストールしていない場合には利用できません。

 

IP電話は全体的に通話の音質があまり良くない

これらの方法で、音声通話を格安、あるいは無料で利用することができます。音声通話を利用する機会の多い人にとっては、大幅な節約効果が期待できます。

しかし、欠点がないわけではありません。前述の「同じアプリ同士」という欠点以外にも、IP電話全体の欠点として「音質が悪い」というデメリットが有ります。

 

先ほど、「SkypeやLINEはデータ通信を行う」という話をしましたが、IP電話は一般的な音声通話用の設備ではなく、データ通信用の設備を利用して音声通話のやり取りを行っています。

そのため、通信制御の方法が、音声のやり取りを行うことには不向きなのです。

 

実際にどういったデメリットが発生するかといえば、「電波の弱い場所では急激に音質が悪くなる」という弊害が発生します。データ通信が良い状態で行える環境下においては、音質には特に問題は発生しません。

しかし、電波の弱いところにいる状態だと、データ通信が途切れ気味になってしまい、急激に音質が悪くなってしまいます。

そのため、電波の弱いところや人混みでデータ通信が混雑してしまうような場所で音声通話を利用する機会が多い人にとっては、かなり不便に感じてしまう可能性があります。

 

「中継電話」を使う方法

IP電話には、通信環境によって音質が大きく左右されるという欠点があります。では、他に安い料金で音声通話を利用できる方法はないのでしょうか。実は、他にも「中継電話」という方法が利用できます。

 

電話料金を安くするための別の方法 「中継電話」

中継電話は、その名の通り「電話を中継するための設備」を、MVNOが提供している方法です。

この場合は、電話をかける時に指定された「プレフィックス」という番号を先に追加することで、中継電話の設備に入ってから大手キャリアの設備に接続し、音声通話を行うことになります。

 

この方法は、前述の「IP電話」のような「音声通話用の設備ではない」という欠点がなく、中継電話の設備を媒介としながらも大手キャリアの音声通話用の設備を経由しているので、通信環境による音質の低下が発生しません。

通話料金に関しては、30秒あたり10円と、通常の音声通話の半額で利用できます。IP電話に比べると割高になりますが、音質が低下しないというメリットは大きいです。

 

楽天の「楽天でんわ」

中継電話には、いくつかの選択肢があります。まずは「楽天でんわ」です。専用の電話アプリを利用し、月額無料、30秒あたり10円で通話が利用できます。また、通話料金100円ごとに楽天スーパーポイントが1ポイント貯まるサービスもあります。

 

IIJmioの「みおふぉんダイアル」

次は、IIJmioの「みおふぉんダイアル」です。専用のアプリを利用することでプレフィックス番号を付けることなく通話ができます。また、スマートフォンのアドレス帳にも同期しており、1件1件アプリに登録することなく通話できます。

 

FREETELの「携帯革命通話料いきなり半額」

最後は、FREETELの「携帯革命通話料金いきなり半額」です。アプリを利用することで電話番号を変えることなく、端末に登録してある連絡先にすぐさま電話をかけることができます。名前の通り、30秒あたり10円で従来の半額で通話が利用できます。

 

中継電話はどうして安くなるのか?(接続料について)

ここで気になるのは、なぜ中継電話は料金が安く設定されているのか、ということです。IP電話よりは割高ですが、音質が低下しないこと、従来の音声通話の半額で利用できるということは大きなメリットです。その理由について解説していきます。

 

中継電話の基本的な仕組みは、「中継電話の設備が間に挟まる」と説明できます。ですが、間に挟まるだけで料金が安くなるというのは、いささかイメージしにくくなります。

通常、一般的な流通の場合は間に業者が挟まればそれだけ流通コストが高くなるものです。

では、中継電話の場合は中継先が登場することでどうして料金が安くなるのか、その点を正確に理解するためには「電話会社同士の通話料金の精算方法」を知る必要があります。

 

携帯会社Aの利用者Xが、携帯会社Bの利用者Yに電話をかけた場合

まずは、従来の通話の方法における通話料金の精算について解説します。この場合、「X→Y」への通話が行われています。

同時に、「Xが利用している携帯電話会社→Yが利用している携帯電話会社」への接続が行われており、これによってX→Yの通話が成り立っています。

 

この場合、30秒20円の通話料は携帯電話会社AがXから受け取ります。ですが、同時に携帯電話会社Aから携帯電話会社Bへも、「接続料」として30秒あたり2円が支払われています。

これを「アクセスチャージ」とも言います。このアクセスチャージは、固定電話や050IP電話にも存在します。

 

中継電話が入った場合の料金精算の方法

それを踏まえたうえで、中継電話が入った場合の通話料金の精算方法について解説します。中継電話会社がその間に入ることで、利用者に対する通話料の請求は携帯電話会社Aではなく、中継会社が利用者に請求する形になります。

中継会社は、発信者の携帯電話会社と受信者の携帯電話会社それぞれに接続料を支払う形になります。

 

また、発信者と受信者の利用している携帯電話会社が同じである場合(上記の例で言えば、受信者の携帯電話会社がBではなく、発信者と同じAの場合)は、携帯電話会社が往復分の接続料が支払われることになります。

 

「第三者課金サービス」や「プレフィックスサービス」と呼ぶ

こうした「送信側でも受信側でもない会社が、通話料金を請求するサービス」のことを、「第三者課金サービス」もしくは「プレフィックスサービス」と言います。

あくまでも中継を行っているだけであるため、通話における音質の低下を避けつつ、中継会社による料金体系によって安い通話料で音声通話を利用することができます。

 

欠点としては、「データ通信専用SIM」では利用できないということです。

格安SIMは大別すると「データ通信SIM」と「音声通話SIM」の2種類のSIMカード(データ通信には「SMS利用可能」なSIMもあるので、多くの場合は3種類になる)があり、通常の音声通話を利用するためには音声通話SIMを利用する必要があります。

しかし、前述の「IP電話」に関しては、データ通信用の設備を使用して通話を行うので、データ通信SIMでも通話が可能になります。しかし、中継電話の場合はあくまでも通話用の設備を介するので、音声通話SIMでなければ利用することができません。

 

まとめ

このように、格安SIMの欠点である「通話料の高さ」は、IP電話や中継電話によって解決することができます。それぞれの方法にもいくつかの欠点はありますが、料金という工夫のしようがない部分を改善できるので、節約志向の方にはメリットが大きくなります。

 

よりよいサービスを目指して

ですが、IP電話や中継電話は「アプリを介さずに通話をしたい」「大手キャリアのような定額制で利用したい」というユーザーの要望に完全に応えられているわけでもないというのが現状です。

ユーザーの要望は「ユーザー向けのサービス」を提供する上で無視できない内容ですが、既に述べたとおり「大手キャリアの設備に直接接続できない」という問題点を解消しないかぎり、この問題も解決できないのです。

現在、MVNOの中には大手キャリアとの交渉によって独自性の高い料金プランの提供を実現しようという動きも見られます。

 

2つの方向性

現状で、MVNOが実現できる方向性としてはおおまかに2つ考えられます。一つは、大手キャリアがMVNOに提供する通話サービスの料金プランを増やすという方向です。

現状、どうしても30秒20円という料金プランで差別化が起きておらず、MVNOごとに独自の料金プランを提供することでユーザーへの即効性の高い利益だけでなく、MVNO間の競争によってよりユーザー向きの料金プランを提供できるようになります。

 

もう一つは、現状の問題である「MVNOから大手キャリアに接続できない」という問題を解消することです。

前述のとおり、MVNOが独自に設備を保有して大手キャリアに接続することで、設備の稼働状況等を見ながら料金プランを見直し、よりよいサービスを提供できるようになります。

 

「普通の電話を安く」の実現にはまだまだハードルがある

ですが、これも今の時点では「理想論」や「机上の空論」としか言いようが無いのです。これらの方向性を実現するためには、大手キャリアが相互接続のために開放している設備以上の開放が実現される必要があります。

加えて、MVNOにおいても今まで以上の多額の投資が必要になります。つまり、上記の方向性を実現するためには多額のコストが掛かるということになるのです。

 

さて、大きな負担を強いられながら、どれだけユーザー向けのお得なサービスを提供できるのか、という疑問が発生します。一般的に、コスト(原価)がかかるほどに料金(売値)は高くなります。

原価が高くなればなるほど現状の料金では利益が取れなくなりますので、値上げをせざるを得ません。料金が高くなれば、それだけユーザーにとって魅力がなくなるということに他なりません。

 

そのようなリスクを負ってまで、MVNOが現状以上の通話サービスを提供することに挑戦するだけのメリットが有るとも考えにくいのです。

現状で既にIP電話等の解決策があるので、わざわざコストを払って、失敗するリスクの高い方法をとることも、企業としては考えにくい方法です。

もちろん、MVNOとしても顧客を獲得するためにさまざまな努力をすることになるでしょうが、「普通の音声通話を今より安く」ということは、極めてハードルが高いと言わざるを得ません。

 

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