為替が株価に与える影響を考えよう!「円安と円高の基礎知識」

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株式投資をしたことが無い人であっても、日々ニュースなどで、

「急激な円高により・・・」

「今日の為替相場は円安傾向・・・」

などという言葉を耳にしたことがあると思います。

特に、海外旅行に行く人は為替を気にしている人も多いのではないでしょうか。

 

日本で生活している以上、「円安」「円高」という言葉は、常に付きまとってきます。私たちの生活に思っている以上に影響を及ぼしています。

その意味を正しく理解できているでしょうか。

株式投資において、為替は極めて大きな影響を与えますので、知識としてしっかりと身につけておくことが必須です。

ここでは、為替について知識を深めていきましょう。

為替とは?

私が証券会社に勤めている時から感じていたことですが、意外と「円高・円安」の意味を勘違いしている人が多いです。

さすがに、一企業の社長はしっかりと理解していますが、主婦の方であったり、比較的若い方は覚え間違いをしている方や、曖昧な知識を持っている方も多かったように思います。

まずは、「円高・円安」の話に入る前に、「為替」の基礎知識から深めていきましょう。

 

私たちは日本に住んでいますから、「円」という通貨を使用して生活をしていますが、「円」は日本でしか使われていません。

他の国では、他の国それぞれで決めている通貨を使用しています。一番代表的な通貨は、「ドル(米)」です。

例えば、日本の企業がアメリカの企業から1万ドルの車を買おうとした時、「為替」という概念が無ければ、どれだけの「円」を支払えばいいか分かりませんよね。

 

そこで、

  • 「1ドル=100円」

という為替レートが決まっていれば、

 

1万ドルの車を買おうと思ったら、

  • 1万ドル×100円=100万円

を支払えばいいということが分かります。

 

このように、それぞれの国の通貨の力関係(価値)を数値化することで、外国との貿易(つまり、通貨の交換)が可能になるのです。

このとき数値化されたものが、為替レート=外国為替相場です。

難しく聞こえますが、通貨を交換するときの基準となるレートであると理解しておいてください。

先ほど、他の国それぞれの通貨を使っていると言いましたが、他の国がどのような通貨を使っているかを参考までに一部紹介しておきます。

【代表的な国の通貨】

  • 日本(円)
  • アメリカ(米ドル)
  • EU(ユーロ)
  • イギリス(ポンド)
  • オーストラリア(豪ドル)
  • ニュージーランド(NZドル)
  • カナダ(カナダドル)
  • スイス(フラン)
  • 中国(元)
  • 韓国(ウォン)
  • 香港(香港ドル)
  • インド(ルピー)
  • インドネシア(ルピア)
  • ブラジル(レアル)
  • メキシコ(ペソ)
  • 南アフリカ(ランド)
  • トルコ(リラ)

円高・円安とは?

上記で説明した為替レートは変動します。

1ドル=100円の時があったり、1ドル=110円の時があったりします。

この動きを見て、「円高だ」、「円安だ」という言い方をするのです。

「円高・円安」を簡単に説明すると、

  • 円高・・・「円の価値」 が 「他国の通貨の価値」 より 「上がる」 こと
  • 円安・・・「円の価値」 が 「他国の通貨の価値」 より 「下がる」 こと

 

ではここで質問です。

1ドル=100円→1ドル=110円

これは、円安になったのか、円高になったのか、どちらか分かりますか?
答えは円安です。

円の金額が増えているので、「円高じゃないのか?」と思う人もいるのではないでしょうか。私も為替のことを知る前は同じ勘違いをしていました。

 

簡単に解説しますと、

1ドル=100円の場合

1ドルを手に入れる為には、100円を支払います。

 

しかし、

1ドル=110円の場合

1ドル手に入れる為には110円支払わなければなりません。

 

今までは、1ドルは100円で買えたのに、110円支払わなければ買えなくなってしまったのです。

つまり、(ドルに対して)「円の価値が下がった」ということなのです。これを「円安」といいます。

 

「円高」は逆です。

1ドル=110円→1ドル=100円

になったとすると、

1ドルを手に入れる為に110円支払わなければならなかったのが、100円で手に入れることができるようになったのです。

(ドルに対して)「円の価値が上がった」のです。これが、「円高」です。

 

では、この円高・円安が、株式市場にどのような影響を与えるのでしょうか。

順番に見ていきましょう。

円高が市場に与える影響

円高になったり円安になったりと、為替相場が動くことは株式市場に大きな影響を与えます。

まずは、為替が円高になった時に株式市場にどのように影響を与えるのかを見ていきましょう。

メリット

何より大きいメリットが、輸入企業が恩恵を受けるということです。

為替が円高の時、商品を輸入して販売している企業は非常に恩恵を受けます。

具体例で考えていきましょう。

A社は、アメリカで100ドル/個の商品を輸入して日本で15,000円/個で販売しています。

このA社の業績を、為替が「円高」の時と「円安」の時で比較してみましょう。

 

ちなみに、売上は日本で販売しているのでどちらの場合も、

  • 15,000円×100個=150万円

で同じです。

為替相場が【1ドル=120円】の場合

商品を100個仕入れると⇒仕入にかかる費用は120万円

  • 100ドル×120円=@12,000円
  • @12,000円×100個=120万円

為替相場が【1ドル=80円】の場合

商品を100個仕入れると⇒仕入にかかる費用は80万円

  • 100ドル×80円=@8,000円
  • @8,000円×100個=80万円

そうすると利益は

【1ドル=120円】の時

  • 150万円-120万円=30万円

【1ドル=80円】の時

  • 150万円-80万円=70万円

 

仕入れた商品の数も売り上げた数も同じであるにも関わらず、為替レートが「円高」になっただけで、利益が大きく増えました。

これが、円高により輸入企業が恩恵を受けるという大きなメリットの内容です。

 

この円高によってメリットを受けるのは、輸入関連企業といわれる企業群です。

主に、水産・紙パルプ・電力・ガス・空運・陸運・食品などの業界のことです。これらの輸入関連企業は、円高によってメリットを受けます。

 

食品などの業界は、海外での仕入れが安くなります。

紙パルプ・鉄鋼は海外から仕入れる原材料のコストが下がります。

円の価値が上がる為、海外旅行が安くなるので、陸運・空運も好調になります。

このように為替が円高に動くだけで、経済に大きな影響を与えるのです。

デメリット

一方で円高は輸出関連株、とくに自動車産業に悪影響を与えます。

トヨタやホンダなど自動車メーカーは、日本だけではなく海外で自動車を販売しています。

むしろ売上に占める割合は海外の方が圧倒的に多いといえます。

 

最近の四季報ベースで見てみると、トヨタの売上高の78%、ホンダは86%、日産は85%が海外での売上です。そうすると、先程と逆の現象が起こってしまうのです。

例を挙げて考えてみましょう。

海外に向けて5万米ドルで自動車を販売するとしましょう。

 

この自動車が売れた場合、

1ドル110円の時→売上550万円

しかし、

1ドル100円の時→売上500万円

 

同じ車が1台売れたという事実は同じであるにも関わらず、売上は10%下がってしまいます。

このような理由によって、円高になると自動車メーカーは打撃を受けます。

海外での売上比率が非常に大きい為に、為替が1円上昇するとトヨタの場合300億、ホンダ170億、日産150億規模の利益が失われると言われているほどです。

円安が市場に与える影響

先ほど説明させていただいた「円高が与える影響」の逆になりますので、ここでは簡単にお話しさせていただきます。

メリット

円安になれば輸出関連企業の業績は好調になります。恩恵を受ける具体的な業界は、自動車・電機・精密機器・機械などです。

また、「円安」ということは、海外の通貨の価値は上がっているので、日本に来る外国人旅行客が増えるのも日本経済にとってはメリットでしょう。

デメリット

輸入関連企業にとっては、海外からの仕入が高くなるというデメリットを受けます。

先ほどの説明通りに利益が下がるのはもちろんですが、海外からの仕入が高くなるので、販売価格も値上げを余儀なくされることがあるかもしれません。

そうすると、安売りを掲げて商売している企業などは、独自の魅力が薄れてしまい、国内での売上の減少につながります。

 

日本の産業は昔から輸出型産業でした。

自動車メーカーに代表されるように、国内の輸出関連企業が日本の経済成長をリードしていた時代があったのは間違いありません。

その名残もあり、現在でも「円安」になると株が上がる傾向にあります。

 

「円安」になると株が上がる理由として、

  1. 為替が「円安」になる
  2. 日本の輸出関連企業の業績が良くなるとの思惑
  3. 日本経済は輸出が牽引している
  4. 日本の景気が良くなる
  5. 株が上がる

との説明をよく聞きますが、現在は昔と違い、日本企業は輸出関連企業の一人勝ちのような時代ではありませんので、実際の経済に与える影響は、「円安」のメリット・デメリットで相殺されてしまいます。

 

ただ、投資家の「円安になると株高になる」というイメージに基づく投資行動と、円安時の海外投資家の日本株への資金流入が、「円安株高」のトレンドを生んでいるのではないかと思います。

ですので、「円安=株高」、「円高=株安」と一概に決め付けることはできません。

どういったときに円高・円安になるのか

ではどのようなときに為替は「円高」もしくは「円安」に動くのでしょうか。

為替の動く要因は、何よりも複雑です。しかも、通貨の中でも「日本円」は特殊な通貨で例外が多くあります。法則通りに為替が動くことがありません。

為替が動く要因を4つ説明しますが、一般論として頭に入れていただければと思います。

 

まず、4つとの要因全てに共通して言えることは、為替は、

「需要と供給の関係で動く」

ということです。

 

簡単に言うと、

人気のある通貨は価値が高くなり、不人気な通貨は価値が低くなるということです。

円を欲しがる人が多ければ、円の価値が上がり、結果円高になります。

円を売りたがる人が多ければ、円の価値は下がり、円安になります。

為替も株やモノの価値と同じく、「需要と供給の関係で動く」ということを頭に入れた上で、為替が動く4つの要因を見ていきましょう。

①日本の景気・企業業績

日本の景気が好調だと、日本の株は上がります。

日本の株が好調なので、海外の投資家は日本株を欲しがります。

海外投資家は日本株を買うには、「円」で買わなければなりませんので、「ドル」や「ユーロ」など他の通貨を売って、「円」を買います。

すると、「円」の価値は上がり、為替は「円高」に動きます

「円安」に動くときは、逆に日本経済が低調で海外投資家などから人気が無い時です。

②金利水準

日本の金利が他の国よりも高ければ、海外投資家は金利が高い日本国債を買いたいと思いますし、日本の銀行にお金を預けたい(外貨預金)と思います。

日本国債を買うのも、日本の銀行に預金をするのも、やはり「円」が必要になってきます。

金利の高い国の通貨は、通貨の価値が上がりやすいということを覚えておきましょう。

③財政状態

国の支出が収入を大きく上回る状態を財政赤字といいます。

その赤字を埋め合わせる手段のひとつとして、国がお金を借りる手段があります。それは、「国債」を発行することです。

 

国債を発行するのは悪いことではありませんが、支出が収入を上回る状態がずっと続いて多額の借金が積み上がっていくと、「あの国は、国債を通じて借りたお金をしっかりと返せるのだろうか?」という不安感が広がってしまいます。

返せなくなると、その国の信用は失われてしまい、国が破産してしまいます。破産してしまうと、国債を購入して、国にお金を貸した人はお金を返してもらえなくなるのです。

 

そのため、国の財政状態が良くない場合、その国の国債を買おうとする人は減りますし、その国の企業に投資したいと考える人も減るので、通貨の価値は下がってしまいます。

④政情不安がおこったとき 

戦争に巻き込まれたり、国内で紛争が起こるなど政治が不安定になった場合、通貨の価値は下がります。

今後の戦争の状況や紛争の状況次第では、国が大きな赤字を背負ってしまったり、国が分裂してしまったりすることが考えられます。

 

そのため、混乱している国へ投資をするのはやめておこうと思う人が増えるので、通貨は人気がなくなります。

また、その時点で株などに投資をしている人は一旦売却して様子を見ようという投資家が増える為、その国の株を売って、自国の通貨に戻してしまう人が多くなり、為替相場は下落しやすいのです。

⑤まとめ

以上が、為替が動く4つの要因です。

しかし、為替が動く要因はこれだけではありません。為替を勉強していくと、いかに為替が複雑な動きをしているかが分かると思います。

通貨ごとに、動きに特徴があったりもします。先ほども言いましたが、「日本円」は特に変わった特徴を持っています。

ここまでは基礎的知識として一般論を説明してきましたが、せっかくなので、「日本円」の為替の動きについて少しだけ説明しておきます。

日本円の特徴

安全資産としての「円」

要因の二つ目として「金利水準」が為替に与える影響について説明しました。

「金利が高い国の通貨は通貨の価値が高くなる」

とのことでしたが、日本の金利は長らくゼロ金利です。

(※今は、ゼロを通り越してマイナス金利です。)

 

にも関わらず、為替は事あるごとに円高傾向に動く局面が見られます。それはなぜなのでしょうか。

これは、「日本円」が「安全資産としての円」という特徴を持っているからです。

 

何か不安なことが起こったとき、世界経済の先行きが不透明であるとき、世界のどこかで戦争状態に突入しそうな緊張状態が発生したとき、投資家は「安全資産」として「円」を買うのです。

昔は、この特徴は世界の基軸通貨である「米ドル」のものでした。

 

しかし、近年アメリカでも財政不安が起こったり、積極的に戦争に参加したり、9.11に代表されるテロが起きたりしています。

世界と比較して、日本は極めて安全でノーリスクな国であるとの評価を受けるとともに、「日本円」も同じ評価を受けているのです。

何か不安なことが起これば、金利はゼロだけれども「日本円」を買っておくという投資行動が非常に多く見られる為、紹介した4つの要因が起こっても、「円高」になるのです。

最後に

このように、現実の経済を見てみると、色々な事情が複雑に絡み合っているので、4つの要因の通り動くかと言われれば、そうとは限りません。

ただ、4つの要因のような力が為替市場に加わっているのは事実であると言えます。

要するに4つの要因を含めた他の様々な要因が、「円高」と「円安」それぞれの方向に綱を引っ張り合っているのです。

 

為替と株価は非常に密接に関係しています。どちらも分かっていないと株式投資もできませんし、FX(為替証拠金取引)もできないでしょう。

株を始める際には、為替の仕組みもしっかりと理解しておきましょう。

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