MENU

経済大国として国際通貨を目指す「中国人民元(CNY・CNH)」の特徴

 

日本を抜いて世界第2位の経済大国の地位に登り、一部の領域ではアメリカと覇権を争うまでに経済成長を遂げた中国。

中国が世界経済に与える影響力は以前と比べると、格段に増しています。

しかし経済面での存在感とは裏腹に、通貨である人民元は外国為替市場において、その存在感は全くと言っていいほど感じられず、取引は非常に低調なものとなっています。

このコラムでは、世界第2位の経済大国の地位を手にした中国の通貨「人民元(CNY・CNH)」について、その特徴を解説します。

目次

中国は共産党の独裁国家

大前提として、中国は共産党の独裁国家、という点は踏まえる必要があります。

共産党の独裁国家というのは、一言で言えば共産党が全てを決定する国、ということになります。

経済政策や通貨政策も、共産党の指導の下で政策が遂行されます。

例えば、先進国では中央銀行は通貨の信頼性維持のために、政府から独立する形となっていますが、中国では中央銀行たる中国人民銀行も、共産党の指導の下に運営されています。

中国の通貨政策というのは、専門家集団の中央銀行が景気動向やインフレ等の状況を見て決めている、というのではなく、共産党の指示を受けて中央銀行がその政策を実行している、という形になっています。

したがって人民元は、中国共産党の通貨政策に左右される通貨、と言っても過言ではありません。

つまり、現在の人民元のレートは、実質的には中国政府がコントロールしている状態となっています。

中国には2種類の人民元が存在

中国の通貨・人民元には、英語シンボルで表すと

  • CNY
  • CNH

の2種類が存在しています。

CNHは中国人民銀行により管理されており、原則として売買以外での取り扱いは出来ません。そして一般的な通貨が、CNYに相当します。

また原則として、人民元は国外に持ち出しが禁止されています。

中国に行くと、帰国の際に保有の人民元を他の通貨に両替するように言われることがありますが、それは、中国政府は原則的には人民元の海外持ち出しを認めていないから、という部分から来ています。

以前は、東京金融取引所がサービスを提供している「くりっく365」が中国元/円(CNY/JPY)のFX取引を行っていました。

しかし既に取引を停止しているため、現在はCNYを取引できるFX会社は見当たりません。

“投資”という観点では、人民元に投資をしたい投資家は、これまでは中国経済に連動しやすい香港ドルを買っていた、という背景があります。

政治的には中国と香港の一体化が進みつつありますが、一国二制度が通貨の分野ではまだ維持されており、人民元の代替通貨としての側面を香港ドルは有しています。

スワップポイントも付くオフショア中国人民元=CNH

中国は、通貨・人民元を中国人民銀行がコントロールしており、人民元の為替レートも実質的には中国政府がコントロールしています。

しかし中国大陸以外においても、流通している人民元は大量に存在しています。

日本円も高度経済成長を経て円が国際化する過程で、日本国内以外で流通する円の存在が一時期話題になりました。

中国政府は、2010年に海外で流通する人民元(ただし大半は香港で流通)を対象に、人民元市場を開設しています。

この主に中国以外で流通している人民元を、オフショア人民元と呼び、アルファベットでCNHを表記されています。

そしてこのCNHは、スワップポイントも付くようになっています。

よって人民元をFXトレードする場合は、もっぱらCNHで取引されるケースが大半を占めています。

CNHを取引できるFX会社

CNYのトレードができるFX会社は見当たりませんが、オフショア人民元のCNHをトレードできるFX会社は国内に存在しています。

代表的なのは、下記の3社となります。

 

  • SBI証券(SBI-FX)
  • セントラル短資FX
  • 上田ハーローFX

人民元のトレードに興味があるようなら、口座開設をして少額トレードから試してみてはいかがでしょうか?

中国政府が国際化を進める人民元

為替取引の世界では非常にマイナーな存在と言える人民元ですが、世界第2位の経済大国、という影響力を武器に、中国政府は人民元の国際化の手を着実に打ちつつあります。

中国主導で2015年に発足したアジアインフラ投資銀行(AIIB)は、決済を人民元で行うことが予定されており、人民元国際化の役割を担う組織となっています。

また同じ2015年に、国際通貨基金(IMF)が人民元を特別引出権(SDR)に組み込んでおり、国際機関が認める通貨としての地位を確立しつつあります。

[図1:人民元のチャート]

国際政治の舞台では人民元の影響力は増しつつありますが、FXトレードの現場では人民元の存在感はまだほとんどないに等しい状態です。

しかしながら、今後中国経済の継続的な発展、そして人民元の更なる国際化の進展とともに、FXトレードの世界でも人民元の存在感が増してくるのではないか、と言われています。

まとめ

世界最大の人口を抱え、大消費地としての中国はまだまだ魅力に富んだ市場と言えます。

2015年のチャイナショック以降、世界は中国の経済成長に若干の疑問を挟むようにはなっていますが、それでも先進国の経済成長と比べれば、中国の成長率は頭一つ抜け出ています。

そして経済成長と軌を一に合わせるように、中国政府はこれまで人民元を国際化させるため、様々な手を尽くしてきました。

AIIBの設立成功及び国際通貨基金(IMF)が人民元を特別引出権(SDR)に組込みを行ったのは、その大きな成果と言えます。

しかしながら今現在も人民元は、外国為替市場において、存在感及び信頼感は乏しい状況が継続しています。

が、本当に国際化できるのか?

そんな疑問を呈されることもありますが、それでも中国は世界第2位の経済大国です。

その経済力及び、今後の経済成長も考えれば、人民元は注目に値すべき通貨というのは間違いありません。

確かに足元では、それほどFXトレードのメリットが感じられない人民元ですが、将来を見据えれば、少しずつでも情報収集は行うべき通貨と言えます。

FXトレードに興味があるようなら「すぐにトレード」という観点ではなく、将来性という観点から、人民元の値動きや情報を掴んでおくと、トレード環境が改善した時に、一歩先んじて人民元トレードで収益を上げるチャンスに恵まれるかもしれません。