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新たな基軸通貨と期待されながらも、問題続出の「ユーロ(EUR)」

 

1993年に誕生したEU(欧州連合)は、2002年に欧州単一通貨であるユーロ(EUR)を導入しました。

その後のEU拡大にともない、ユーロの採用国も2016年10月時点で19か国にまで拡大しています。

しかしユーロを導入するには、欧州連合や欧州中央銀行等が定める、厳しい導入条件があること、また国の存立基盤でもある通貨の発行権をEUに委ねる必要があることから、EUには加盟しているものの、ユーロの導入にまでは至っていない国も存在しています。

国家と通貨発行権限を別々にするという、ある意味では人類の壮大な社会実験が進行中とも言えるユーロ。

ドルに次ぐ、世界第2位の基軸通貨としての地位は獲得しましたが、問題も山積しています。

目次

ドイツの経済状況の影響を受けやすいユーロ

ユーロはEUの共通通貨とされていますが、28か国ある全てのEU加盟国がユーロを採用している訳ではなく、ユーロの採用は19か国に留まっています。

ユーロ採用は19か国ありますが、それぞれの国の経済力は非常に離れており、ドイツ・フランス・イタリアといった大国の経済状況の影響を大きく受けます。

その中においても、ドイツの経済力が他を圧倒している状況であり、現状ではユーロの状況=ドイツの経済力、という構図が成り立っている、と言っても過言ではありません。

ユーロという通貨は、ドイツ・マルクとフランス・フランが統合する形で誕生しています。

しかし、フランスはEU内の大国ではありますが、長らく経済が低迷しており経済力という観点では、ユーロ内における発言力はドイツと比べるとそれほど高くありません。

フランスの経済低迷が、ユーロにおけるドイツの圧倒的な発言力の大きな背景になっています。

ユーロの足を引っ張る南欧諸国

ユーロ採用国の財政状態は様々ですが、特に南欧諸国の財政状態が悪化しているのはギリシャ問題始め知られています。

現在はギリシャの財政問題は沈静化していますが、ギリシャ問題はユーロの通貨としての鼎の軽重を問う結果となりました。

直近では最も印象に残っているのはギリシャ危機ですが、その前にはイタリアの債務問題やポルトガル・スペインでも債務問題が発生しており、ユーロ採用国の問題の火種はギリシャのみにとどまりません。

2016年秋の時点でユーロ採用国での経済問題は発生していませんが、ギリシャ始め火の粉はいまだ存在しており、今後も何かしらの形でユーロ採用国において経済問題が発生する可能性は残っています。

ユーロの特徴

ユーロの大きな特徴として、国力が異なる複数の国が共同で利用していることから、加盟国の負担がそれぞれ大きく異なっている、という点が上げられます。

現状、ユーロ圏最大の経済大国ドイツが、そのリスクを大きく抱えていることになります。

またユーロ採用国においても、独自の財政政策を行う権限を有しており、ユーロ採用国が統一した通貨政策を取りにくいという弱点を有しています。

特に経済危機が発生した時に、機動的な対応が取りにくいという点が問題となっています。

当初順調にスタートしたユーロですが、加盟国の拡大そしてユーロの浸透が進むにつれ、様々な問題も生じるようになっています。

現状、強い経済を背景としたドイツがユーロの信認を守っている面がありますが、今後ドイツ経済が停滞した時、通貨ユーロの信認をどこまで守ることができるのか、非常に興味深い所です。

イギリスはEU離脱を決定

2016年6月にEU加盟国のイギリスはEU離脱を国民投票で決定しています。

イギリスの通貨は英ポンドを利用しているため、ユーロには直接的な影響はありませんが、国民投票当日、ユーロはポンドとともに大きく売られることになりました。

今後イギリスがEU離脱をすることが、ユーロ及びEUに対して大きな影響を与えるのではないか、といった懸念によって、2016年10月より再びユーロは売られ始め、ユーロ/ドルはイギリスのEU離脱決定日に付けた安値を下回るレートに突入しています。

通貨ユーロの取引について

ユーロを含む通貨ペア(クロスユーロ)は、大きく動きやすいことで知られています。

また、ユーロ/ドルは世界一の取引量を誇る通貨ペアであり、世界中の経済指標に敏感に反応します。

そして、ユーロ/ドルは取引量が圧倒的に多いので、スキャルピングやデイトレードに最も適した通貨ペアと言われています。

ユーロ/ドルの特徴として、時としてトレンドから大きく外れる値動きをした後でも、また元に戻る程のトレンドの強さを示すこともありますし、1つの経済指標でトレンドが転換することもあります。

近年はユーロ圏での経済問題がクローズアップされないこともあり、欧州中央銀行ドラギ総裁の会見で大きくユーロ/ドルが動くことも少なくなりましたが、以前はドラギ総裁の会見でユーロ/ドルが大きく動くことも頻繁にありました。

尚、ユーロの金利はそれほど高くないので、スワップポイントを獲得するには不向きな通貨となっています。

ユーロ加盟国の経済発表は、毎週多くの発表があります。

フランス、ドイツや欧州中央銀行他から多くの指標発表がありますが、特に欧州中央銀行からの発表及びその発表の推移は、ユーロ圏内のファンダメンタル情報を得るのに必要不可欠と言えます。

ユーロ/円について

日本人のFXトレーダーには非常に馴染みのあるユーロ/円ですが、世界的にはそれほど取引されている通貨ペアとは言えません。

よってユーロ/円は、大口投資家の投機の対象となり、大きな値動きが生じることもしばしばあります。

一見日本人に馴染みのあるユーロ/円ですが、値動きが荒い通貨ペアとしても知られています。

英ポンドの値動きの荒さは有名ですが、ユーロ/円は英ポンド程ではないにせよ、荒い値動きを見せることがあります。

なので、FXトレード初心者は、ユーロ/円の取引は避けることをオススメします。

ドル/円等のトレードでFXトレードに慣れて自信をつけた後に、ユーロ/円はトレードすべき通貨と言えます。

[図1:ユーロのチャート]

まとめ

欧州統合の理想とともに発足したユーロですが、現状では南欧諸国の問題等があり、理想とは程遠い姿となっています。

しかしながら、それでも強いドイツ経済を背景に、米ドルに次ぐ世界第2位の基軸通貨としての地位を得ており、そしてユーロ/ドル(EUR/USD)は世界最大の流通量を誇る通貨ペアとなりました。

採用国が多いだけに、今後もまだ問題が噴出する可能性があるユーロですが、壮大なる社会実験とも言えるユーロが今後どのようになっていくのか、非常に興味深い所ですね。