妊娠中は安静にしたほうがいいのか、それとも運動を積極的にしたほうがいいのか、初めての妊娠であれば気になるところだと思います。
特に妊娠初期は不安になることがたくさんあり、迷ってしまうことが多いとおもいます。
運動に関して言えば、「してはいけない」というルールはありません。
適度な運動は妊婦にとって体重管理や体型維持などたくさんのメリットをもたらしてくれるのです。
元気な赤ちゃんを産んだ後、お母さんも早く元気な体に戻るためには実は妊娠中の運動はした方が良いと言われています。
ただし、運動の種類や方法は気をつけなければなりません。
今回は妊婦が運動することによって得られる効果や注意点を解説したいと思います。
妊婦スポーツの安全管理基準について
妊婦の運動やスポーツに関しては2004年に日本スポーツ医学会学術委員会が「妊婦スポーツの安全管理基準」なるものを発表しています。
胎児の安全管理に気をつけ、母体の健康維持、増進を目指すために作られた基準です。まずはその安全基準を抜粋して紹介します。
- 母児の条件
1)現在の妊娠が正常で、かつ既往の妊娠に早産や反復する流産がないこと。
2)単体妊娠で胎児の発育に異常が認められないこと。
3)妊娠成立後にスポーツを開始する場合は、原則として妊娠12週以降で、妊娠経過に異常がないこと。
4)スポーツの終了時期は、十分なメディカルチェックのもとで特別な異常が認められない場合は特に制限しない。
- 環境
1)真夏の炎天下に戸外で行うものは避ける。
2)陸上のスポーツは、平坦な場所で行うことが望ましい。
- スポーツ種目
1)有酸素運動、かつ全身運動で楽しく長続きするものであることが望ましい。
2)妊娠前から行っているスポーツについては。基本的には中止する必要はないが、運動強度は制限する必要がある。
3)競技性の高いもの、腹部に圧迫がかかるもの、瞬発性のもの、転倒の危険があるもの、相手と接触したりするものは避ける。
4)妊娠16週以降では、仰臥位になるような運動は避ける。
- 実施時間
1)午前10時から午後2時の間が望ましい。
2)週2〜3回で、1回の運動時間は60分以内とする。
出典)日本臨床スポーツ医学会誌:Vol.13
これらの基準を満たし、安全に配慮すれば運動しても問題ないようですが、少しでもわからないものがある場合は、医師に相談しましょう。
それでは、この安全管理基準に基づいて、妊娠中のスポーツについて詳しくみていきましょう。
妊婦におすすめの運動とは?
妊婦の運動はもちろんなんでもいいというわけではありません。
妊婦スポーツの安全管理基準にあるように、母体にとって安全な「有酸素運動」で楽しく長続きするものが良いと言われています。
ここではオススメの運動をいくつか紹介します。
ウォーキング
買い物ついでに歩くなど、気軽にできるのがウォーキングです。有酸素運動として優秀なウォーキングは妊婦にはぴったり。毎日続けるのも難しくないため、オススメです。
転倒の危険を回避するため、ウォーキングに適した滑りにくいシューズを選びましょう。
歩く際は万が一転んだ時にお腹を守るために両手を開けておくように。ポケットに手を入れて歩くなどは厳禁です。
水分補給をこまめにして、気分が悪くなったり、疲れたりしたら無理せず休むようにしましょう。
水泳
妊娠中期から後期にオススメなのがスイミングです。転倒の危険もありませんから安全です。
また、浮力があるため、お腹の重みを感じずに運動ができます。ただし、体を冷やしすぎないように温水プールを選ぶと良いでしょう。
エアロビクス
妊婦用のマタニティビクスもいいでしょう。専用の教室もあるようですから気になる人は近所の施設やサークルを調べてみてもいいかもしれません。
妊婦仲間と集まって運動すれば、いろいろな悩みを共有できたり、情報交換ができたりするのもメリットです。
ヨガ
酸素を取り入れながらゆっくりとした動きで関節などをやわらかくできるヨガも妊婦の運動には適しています。
ただし、ヨガの体勢によってはお腹に負担をかけるものもありますから注意しましょう。
関節をほぐして、筋肉をやわらかくしておけばお産の際にも安心です。自宅の中で気軽にできるのもヨガのいいところです。
妊婦が避けたい運動
妊婦が避けるべき運動はウエイトトレーニングや短距離走などの「無酸素運動」です。
息を止める、あるいは踏ん張らないといけないような運動は、筋肉や関節を痛める可能性があるからです。
また、縄跳びやバスケットボールなどはジャンプをした時、お腹が上下に振れるため避けたほうがいいでしょう。
その他にも、サッカーやボルダリングなどは衝突や落下の危険があり、これも胎児にはよくありません。
さらに、テニスやゴルフなどの体を捻転する運動も避けましょう
運動はいつからはじめるのがいい?
妊娠前から運動をしていた人は妊娠したからといって運動をやめる必要はありません。ややきついレベルの運動であれば継続して行うことができます。
具体的な運動量は運動の種類や激しさなどによって異なるため、医師に相談をしましょう。
では、妊娠するまで運動をしていなかった人はどうでしょうか?
運動をしていなかった人は、妊娠12週目以降からウォーキングやスイミング、ヨガなどを始めるといいと言われています。これは、自然流産の発生時期が妊娠12週目までにほとんど占めているためです。
流産の原因は主に染色体異常のため、運動をしたからといって必ず流産するわけではありません。
しかし、流産をした際に「あの運動のせいで赤ちゃんがダメになったのでは?」だと自分を責めてしまうことがないように妊娠初期に運動を始めるのは控えましょう。
妊娠中に運動がいいと言われる理由は?
妊娠中に運動することは妊婦にとってどんなメリットがあるのでしょうか。その一部をご紹介します。
むくみや腰痛の緩和
ウォーキングやスイミングなどの運動を行うと、血流が改善されます。すると、妊婦に起こりやすいむくみの症状の緩和が期待できます。
その他にも、運動することで筋肉がつけば腰痛の痛み軽減するという例もあるようです。また、つわりに悩んでいるときもいい気分転換になります。
太りにくい体を作る
妊娠をすると、動かなくなるだけでなく食欲も旺盛になりがち。
運動を定期的にすることで消費カロリーが増えるだけでなく、基礎代謝が上がるため、太りにくい体を作ることができます。
ホルモンバランスを整える
定期的に運動をすると、自律神経を整える効果があります。妊娠をするとホルモンバランスが崩れるため、体調を崩しやすく気分も乱れがちになります。
運動を行うと一般に「幸せホルモン」と言われるセロトニンが分泌され、リフレッシュ効果があるため気分も安定します。
出産に役立つ
出産の時はお腹に何度も力を入れるため、腹筋などのインナーマッスルが必要です。
普段から運動をしておくと、産後の筋肉痛も起きにくいため、産後の体調の回復も早いでしょう。
産後、体型を戻す際に有効
妊娠、出産を行うと骨盤が広がります。この開いた骨盤周りに脂肪がたまると妊娠前の体型に戻ることが困難になります。
運動をすることで骨盤周辺の筋肉を鍛えれば、開いた骨盤を元に戻しやすくするのに効果的です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。妊娠中の運動は種類や強度などの基準を守れば率先して行ったほうがいいとも言えます。
どの運動に関しても言えますが、ストレッチを運動前と後にするようにしましょう。運動後のストレッチには筋肉痛を和らげる効果もあります。せっかく運動しても筋肉痛がひどくて三日坊主に終わっては意味がありません。
どれくらい運動するか、どんな運動をするかは、症状や状態によっても異なりますので、迷った時は自分で判断せずに、主治医の指示を仰ぐようにしましょう。
