妊娠とは、お腹の中に自分とは全く別の生命を宿す神秘的なものです。
そして、その妊娠にとって欠かせないのが「胎盤」(プラセンタ)です。
胎盤という言葉を聞いたことがない女性はいないと思いますが、ではどういうものかといわれると、よく分からないのではないでしょうか?
妊娠の時だけに作られる不思議な器官、「胎盤」の不思議に迫っていきましょう。
胎盤とは?
胎盤は、胎児の成長にとって不可欠な組織です。妊娠の間だけ存在し、出産とともに不要となり排出されます。
直径は約20cm、厚さ2~3cmにまで成長する胎盤は、無数の血管の集まりです。胎児は、胎盤とへその緒(臍帯)で繋がって成長します。
胎盤は、卵子と精子が出会ってできる受精卵が、子宮壁に着床してから新しく作られる器官です。
着床後すぐから作られ始め、安定期に入る頃(妊娠16週目頃)までに完成します。
一説には、この胎盤を作るための体の変化が、つわりの原因とも言われています。
胎盤の中は、細かな絨毛が密生していて、フカフカな絨毯のようになっています。
絨毛の中には、胎児側から来た細かな毛細血管が張り巡らされています。
胎盤の作る空間(絨毛間腔)には母体側の血液が解放しており、母体の血液が存分に流れ込んでいます。
母体の血液中の酸素や栄養分は、この空間で絨毛の中に取り込まれ、胎児に届きます。
逆に、逆に胎児から出た老廃物を受け取り排出する役目も果たします。
胎盤の中は、胎児にとっては呼吸器であり、消化器であり、泌尿器であるわけです。
胎盤の重さは、およそ500~600gにもなります。胎盤が厚みもありしっかりしていることが、胎児の健康な成長に大きく影響します。
胎盤はどうやって作られる?
胎盤は、着床後のホルモンの働きによって作られます。
子宮粘膜と胎児側の絨毛膜が結合し、絨毛が細かに枝を広げます。
中隔と呼ばれる壁によっていくつかに区画に分かれた絨毛間腔という空間には母体の血液が満たされ、その中に絨毛が伸びて、酸素、栄養物、老廃物などのやり取りを行います。
受精卵が子宮に着床すると、母体は、「ヒト絨毛性ゴナドトロピン」というホルモンを分泌するようになります。
受精後8~10日後から分泌されはじめるホルモンです。妊娠12週目頃にピークとなり、その後妊娠中期まで分泌され続けます。
このホルモンによって、子宮への血流が増加し、子宮壁を柔らかくし拡張しやすくします。
また、受精卵が着床した部分の子宮内膜を肥厚させ、絨毛を作りはじめます。
胎盤が完成するのは、妊娠14週目頃で、遅くとも16週にはできあがります。
胎盤ができてしまうと、ホルモンの分泌量は徐々に減っていきます。
胎盤はママと赤ちゃんを繋ぐ役割
みなさんは、輸血の際に血液型が同じでないと輸血ができないことを知っているとおもいます。
でも、お母さんと赤ちゃんは、血液型が違うことが多くあります。
これはいったいどうなっているのか不思議に思ったことありませんか?
それだけではなく、胎児の遺伝子の半分はパートナー由来のものです。
自分と違う遺伝子を持つ赤ちゃんが、母体とは全く違う「異物」とならないのは、胎盤が大きな役目を果たしているからです。
胎児と母体とはへその緒で繋がっています。へその緒は胎盤と繋がることで母体と繋がっています。
胎盤では、母体と胎児の血液が直接交じり合っているわけではありません。
胎盤の中に満たされた母体の血液の中に、胎児から繋がる血管を包んだ細かな絨毛が入り込み、その絨毛を通じて栄養分や酸素、二酸化炭素の交換を行います。
このフィルター機能は、とても優秀で小さな分子しか通さないので、母体の血液が直接入り込むことはありません。
そのため、母体の免疫系細胞に認識されないので、遺伝子や血液型の違いがあっても、胎児が「異物」として排除されない絶妙な仕組みなのです。
まだまだある胎盤の役割とは?
胎盤には、赤ちゃんとママを繋ぐ上で、さまざまな役目があります。
その全てが、赤ちゃんを無事に育て、妊娠を継続させるための働きです。
胎盤には、どのような働きがあるのかをみていきましょう。
妊娠ホルモンの分泌
胎盤は妊娠中に必要なホルモンの分泌を行っています。
その代表例としては、ヒト絨毛性ゴナドトロピンやエストロゲン、プロゲステロンが挙げられ、胎児の成長や母体の体づくりを促進します。
エストロゲンとプロゲステロンは性ホルモンとも呼ばれ、妊娠前は子宮内膜を厚くしていつでも妊娠が出来る状態にさせる作用があります。
妊娠してからは、子宮を胎児が成長しやすい状態に整え、妊娠を継続させる役割をもっています。
また、子宮頚管を柔らかくしたり、乳腺を発達させるなどの出産に向けての準備も行っています。
しかし、これらのホルモンの分泌は、母体にとっては、妊娠中のマイナートラブルの原因になったり、精神状態を不安定にさせたりすることもあります。
いずれにしても、体調がすぐれない場合には担当医とよく相談して下さい。
赤ちゃんの肺の役割
お腹の中の胎児は、肺での呼吸ができません。
中期以降になると羊水を吸い込む呼吸様運動を始めますが、実際に呼吸をしているわけではありません。
そのため胎盤は、胎児の肺の役目も果たします。
胎盤に入ってくる母体の血液を通じて、胎児は酸素を受け取り、二酸化炭素を排出しています。
妊娠中の喫煙はご法度だといわれているのは、胎盤のこの役割が大きく関わっています。
たばこに含まれるニコチンの影響で血液量が減ると、赤ちゃんに十分な酸素や栄養を送ることができなくなります。
また、酸素の運搬は母体の赤血球が担います。
赤血球の中のヘモグロビンは、酸素と結合しますが、酸素よりも一酸化炭素との方が結び付きやすい性質があります。
喫煙によって一酸化炭素を吸い込むと、胎児に届く酸素の量が減少し、胎児が酸欠になってしまうのです。
喫煙中の女性が禁煙をするのは当たり前ですが、パパや周りの人に喫煙者がいる場合の副流煙にも注意が必要です。
赤ちゃんの消化器官
肺としての機能の他にも、消化器官としての役目も果たします。
胎児は、母体が摂取した栄養分を血液を通じて摂取しています。
赤ちゃんの成長に必要な栄養分は、血液に乗って胎盤に運ばれ、胎盤のフィルター機能を経由して胎児に伝わります。
胎盤がしっかりと機能していることで絨毛が十分に発達し、母体からの血液も十分にいきわたるため、胎盤の状態が胎児の成長の度合いを決めると言っても過言ではありません。
一方で胎盤には、有害物質をブロックする働きもあります。
大きな分子は胎盤というフィルターを通り抜けられないのですが、アルコールの分子や、ニコチン分子などは小さいため、胎盤の壁を通り抜けてしまいます。
出産後、胎盤はどうなるの?
無事に出産が終わると、胎盤は不要になるため、子宮内膜から剥がれ落ち排出されます。
後産と呼ばれ、出産後10~15分後に再び軽い陣痛が起き子宮が収縮し、胎盤と卵膜が排出されます。
これは自然に起こる反応ですが、20分を過ぎても排出されない場合は、医師が子宮内から人為的に引っ張り出すなどして補助することもあります。
まとめ
以上、胎盤の秘密についてみてきましたがいかがでしたか?
なんとなく大事なことはわかっていた胎盤ですが、赤ちゃんとお母さんを繋ぐ大切な臓器であることがわかったと思います。人間の体って本当に不思議ですね。
胎盤は赤ちゃんへ酸素や栄養を運び、フィルターの役割を担っています。
その役割を理解することで、やはり妊娠中のタバコとお酒が悪者でしかないことがわかると思います。
妊娠中は自分のした行動が赤ちゃんに伝わってしまうと考えて、喫煙や飲酒などの悪い行動はしないように心がけましょう。