妊娠中は、薬の服用をしてはいけないとよく聞きますよね。
すべての薬が良くないの?
妊娠したのを知らずに薬を飲んでしまったけどどうしたらいいの?
赤ちゃんへの影響は??など妊娠中の薬の服用については、いろいろな不安がありますね。
今回は、そんな妊娠と薬との関係について紹介していきます。
この記事の目次
妊娠週数の数え方とは?
妊娠と薬との関係を考えるとき、まず必要になってくる知識は、妊娠週数の数え方です。病院に行くと、今は第何週ですよ、と教えてもらえますが、自分でも計算できるようにしておきましょう。
まず、妊娠週数は、最後にあった月経の「始まった日」から数えはじめます。
最終月経の始まりの日を0週0日とし6日間が一週間。7日目が、1週0日になります。
この計算によって、分娩の予定日は40週0日目として産出されます。
また、妊娠週数の数え方には、何週ではなく何ヶ月でいうこともありますね。
実際の1ヶ月は、30日だったり31日だったり月によって日数がバラバラですが、妊娠何ヶ月、という場合の1ヶ月は、きっちり4週間で計算します。
すなわち、0週0日~3週6日までが妊娠1ヶ月。4週0日~7週6日までが妊娠2ヶ月となります。
胎児への薬の影響の時期とは?
妊娠週数の数え方がわかったところで、次に実際にどの週数に薬の影響があるのか見ていきましょう。
薬の服用は、妊娠期間のいつ薬を服用したかによって、胎児への危険の度合いが違ってきます。
妊娠1か月前後(妊娠0週~3週)
薬の影響は低いと考えられている時期です。もし、薬による大きな影響があったとしても、受精卵が死んでしまって妊娠に至ることはありません。
また、軽い影響であっても、ほかの細胞によって補ってくれるため、受精卵への影響はほとんどないと考えられています。
妊娠2ヶ月前後(妊娠4週~7週)
薬の影響が最も現れやすい時期で「絶対過敏期」といわれます。
この時期は、胎児の体の重要な器官、特に神経系や循環器系(心臓)、消化器、四肢など、が作られる時期です。
この時期に薬を服用すると、器官の発生や細胞分化に影響が出て、奇形が生じやすくなります。
一番危険な時期ですので、覚えておきましょう。
妊娠3ヶ月~4ヶ月前後(妊娠8週~15週)
最も危険な時期は過ぎましたが、この時期もまだ奇形の生じる恐れがあります。
体の根幹をなす重要な器官の形成は終わっていますが、性器や口蓋などの発生の時期にあたります。
この時期に薬の影響が出ると、性器の形成不全や、口蓋裂などが生じますので、まだまだ注意が必要な時期です。
妊娠5ヶ月~10か月まで(妊娠16週~36週)
この時期に入ると、胎児の体の形成はほとんど終わっているため、奇形の心配はなくなります。
ただし、薬は胎盤を通過して胎児に移行しますので、奇形以外の影響があります。
胎盤を通過しやすい薬とそうでない薬がありますが、大抵の薬は胎盤を通過すると考えて、服用する際には自己判断をせずに医師や薬剤師に相談しましょう。
知られているものでは、解熱鎮痛消炎剤(いわゆる頭痛薬)が胎児の循環器系に悪影響を及ぼす例があります。
そのほか、持病の薬を日常的に飲んでいる人は、妊娠週数に関わらず、妊娠の前に医師に相談してみましょう。
いずれにしても、自己判断はせずに、妊娠していることを医師に伝え、薬について相談してみる必要がありますね。
妊娠に気づかずに市販薬を飲んでしまった!市販薬の影響は?
風邪をひくと市販の風邪薬を飲みますし、花粉症がひどい人は、季節になれば花粉症の市販薬を日常的に服用するというようなことがあるでしょう。
前述したように、最終月経日から28日たった頃からが一番、薬物の影響が出やすい危険な時期です。
難しい判断ではありますが、妊娠を望んでいる場合、もしくは妊娠したかもしれないと思う場合は薬の服用はやめましょう。
次の生理が来て妊娠していないことがわかるまで、なるべく薬を飲まないようにすると安心です。
これは、病院でもらう処方薬だけでなく、街の薬局で売っている薬も同様です。
しかし大抵の場合は、妊娠にまったく気がつかないまま薬を飲んでしまうことが起こります。
いつものように、解熱鎮痛薬や風邪薬を飲み、その後になって妊娠がわかり、薬を飲んでしまったことを心配するケースが多いようです。
実際、妊娠中に薬を飲んでしまった時期で一番多いのが、28週~50週だという統計データもあります。
しかしながら、一度や二度薬を飲んだからといって、確実に奇形になるわけではありませんので落ち着いて下さい。
解熱鎮痛消炎剤、総合感冒剤、抗生物質などが、飲まれている薬の上位になりますが、いずれも「確実に」奇形を起こすような成分は含まれていません。
あくまでも、薬の服用で可能性が上がるというだけです。
ただ、出産までの間、「妊娠に気づかずに薬を飲んでしまったので心配」などという無用の心配をしないですむように、不要の薬は飲まないという心がけが必要です。
妊娠中の服薬については、必ずかかりつけの産婦人科医によく相談して下さい。
サプリメントにも注意が必要!?
サプリメントも薬と同じで、妊娠中はできることならば摂取しない方がいいです。
医薬品と違い、サプリメントは製造メーカーごとに品質や規格などが異なり、成分が一定ではありません。
複数摂取することで、成分同士の相互作用や過剰摂取などの問題もあります。
特定の栄養成分を抜きだしてタブレット状にしたサプリメントは、通常の食事をバランスの良い物にするように心がければ、ほぼ必要がないと考えられます。
逆に、過剰に摂りすぎてしまうことによるリスクが潜んでいます。
例えば、ビタミンAは、特に妊娠初期に過剰摂取すると、胎児に先天異常が発生する原因となる可能性があるといわれています。
このように、健康のために良かれと思って使用するサプリメントが、胎児に悪い影響を与えることがありますので、使用には注意が必要です。
しかし一方で、妊娠前から妊娠中に摂取が推奨されているサプリメントがひとつあります。
それは、ビタミンBの一種である「葉酸」です。
葉酸は、神経管閉鎖障害の発症リスクを低減することが期待できるとして、食品からの摂取に加えてサプリメントで1日0.4mgを目途に補うことが厚生労働省から推奨されています。
妊娠を希望する人や妊娠したかもしれないと思う人は葉酸サプリを飲みましょう。
妊娠と薬情報センターを活用しよう!
薬について詳しくもっと知りたい!と思われた方は、国立成育医療研究センターの「妊娠と薬情報センター」がとても役立ちます。
はじめて耳にすることも多いと思われる、このセンターではどういった取り組みをされているのでしょうか?
詳しくみていきましょう。
妊娠と薬情報センターとは?
妊娠と薬情報センターは、2005年10月より厚生労働省の事業として始まりました。
「妊婦・ 胎児に対する服薬の影響」に関する相談や、情報収集を実施する機関として、直接質問に答えるなどして情報提供を行われています。
寄せられる相談は、カナダ・トロント大学とも連携し、データとして活用し、科学的に検証された医薬品情報を提供しています。
これにより、妊婦や妊娠希望者の不安に答え、妊婦や胎児への薬剤による影響を未然に防ぐことを目的としている機関です。
妊娠に関する薬の相談が出来ます!
相談は、基本的に、問診票一式を郵送して申し込む方式になっています。
その後の相談は、電話での相談、全国に29カ所ある「妊娠と薬外来」を受診しての相談、ご自分の主治医の元での相談の3通りの相談方法が選べます。
- 持病で薬を飲んでいるが、妊娠しても赤ちゃんに影響はないか?
- 妊娠していることを知らずに、薬を飲んでしまった場合
など、妊娠を希望する方や、妊娠中の方からの相談を受け付けています。
また、HPには、個別の相談の他に、「よくある質問」コーナーに、センターがこれまでに受けてきた相談内容を紹介していますので、参考になると思います。
詳しくは公式サイトをご覧ください。国立成育医療研究センター 妊娠と薬情報センター
自己判断はせずに、主治医や専門医に相談しましょう!
以上、妊娠と薬についてみてきましたがいかがでしたか?
日常とは違う状態になる妊娠中は、普段通りの生活を送るだけでも、さまざまな不安がつきまといますよね。
特に、薬については、直接おなかの赤ちゃんに影響するので心配になります。
基本的には、薬の影響が出やすい時期を除けば、奇形などの重篤な影響が出ることは少ないと考えられていますし、妊娠がわかる前に少し摂取してしまったくらいでは、それほど深刻に考える必要はありません。
薬を飲んでしまったからといって、あまり自分を責め過ぎないでくださいね。
いずれにしても、自己判断はせずに、少しでも不安に思ったら、主治医に相談したり、妊娠と薬情報センターの専門医に相談したりして、正しい情報を得ましょう。
参考文献:あいち小児保健医療総合センター 「妊娠・授乳と薬」
