妊娠中の高血圧は危険、急激な体重増加には気を付けないといけない。
なんてことを聞いたことはありませんか?
それは、妊娠中にかかってしまう「妊娠高血圧症候群」の可能性があるからです。
重症化してしまうと大変危険な状態になってしまう「妊娠高血圧症候群」とはどのような病気でしょうか?
どのようなリスクがあって、発症する原因は何なのでしょうか?
今回は、妊娠高血圧症候群とはどのようなものかをみていきましょう。
妊娠高血圧症候群とは?
妊娠20週~産後12週までに発症した高血圧症状のことを、「妊娠高血圧症候群」といいます。
さらには、高血圧をきっかけに、尿蛋白や血管障害、臓器障害などを発症することもあります。
高血圧のみの場合は妊娠高血圧症、高血圧と蛋白尿を認める場合は妊娠高血圧腎症と分類されています。
この疾患はほとんどの場合、妊娠32週以降の妊娠後期に発症します。
妊娠32週未満で発症した場合には早発型と呼ばれ、重症化しやすいため特に注意が必要です。
ちなみに、以前は、妊娠高血圧症候群を含む、妊娠中に起こる症状全てを「妊娠中毒症」と呼んでいました。
現在では、妊娠中の高血圧は妊娠高血圧症候群と呼ばれるようになっています。
原因となりやすい人の特徴とは?
妊娠高血圧症候群は、妊娠によって血管に負担がかかることで血圧が上がり、高血圧になる、血管の問題によって引き起こされます。
しかし実は、そもそもの病気の原因が不明のため、どうして血管の問題が起こるのか、はっきりとしたことは分かっていません。
明らかなリスク因子は、今のところ特定されていないのです。
しかし、妊娠高血圧症候群になりやすいタイプはわかっているため、以下の症状にあてはまる人は注意が必要です。
- もともと妊娠前から血圧が高め、以前の妊娠で高血圧症候群を発症したことがある
- 母親が妊娠高血圧症候群を発症したことがある、身内に高血圧の人がいる
- 年齢が40歳以上または15歳以下
- 肥満(BMIが25以上)、急激な体重増加
- 腎臓病や糖尿病の持病がある
- 多胎妊娠や初産婦
- ハードワークや睡眠不足で疲労やストレスが多い
中でも、妊娠前からすでに血圧が高めの人は、特に妊娠高血圧症になりやすいです。
妊娠を望んでいる女性は、妊娠前から、食生活や生活習慣に気を配って、血圧が高くならないように心がけておくとよいでしょう。
妊娠高血圧症候群の症状とは?
妊娠高血圧症候群が妊娠中毒症と呼ばれていた頃は、血圧の上昇、むくみ、尿蛋白が3大症状といわれていました。
しかし、現在は「むくみ」はその対象から除外されています。
その理由としては、むくみは妊婦の約30%に起きる症状でそれほど珍しいものではありません。
自分で妊娠高血圧症候群かどうかを見極めることは難しいため、そのほかの症状に着目することが大切です。
しかし、一晩寝ても靴下のあとが元に戻らないようなむくみや、物が握りにくいほどに手にむくみがあるような場合は、医師に相談してみましょう。
軽症、重症の診断基準とは?
妊娠高血圧症候群の軽症か重症かの判断は、血圧の値と尿たんぱくの数値で判断します。
<軽症の場合>
1、収縮期血圧(最高血圧)が140mmHg以上160mmHg未満
2、拡張期血圧(最低血圧)が90mmHg以上110mmHg未満のどちらかに該当
(1か2のどちらかに該当)
3、尿たんぱくは300mg/日以上〜2,000mg/日未満
<重症の場合>
1、収縮期血圧(最高血圧)が160mmHg以上
2、拡張期血圧(最低血圧)が110mmHg以上
(1か2のどちらかに該当)
3、尿たんぱくは2,000mg/日以上。
治療法、過ごし方とは?
軽症の場合は自宅安静!
妊娠高血圧症候群の唯一の治療法は安静にすることです。
医師の指示に従い、自宅で出来るだけ安静にするようにしましょう。
軽症なら家事まで制限する必要はありませんが、無理をしないことです。
日中1~2時間は、横になって体を休めましょう。ストレスは血圧上昇にもつながります。
適度にリフレッシュできる楽しみを見つけながら、休養と睡眠をしっかりとりましょう。
また、栄養管理も重要です。塩分の摂取量を1日に7~8g以下に抑え、たんぱく質も摂りすぎないように気を付けてください。
塩分の代わりにカツオや昆布のだしを使ったり、レモン汁を風味づけとして使うのもおすすめです。
とはいえ、栄養は胎児の成長に不可欠なもの。必要カロリー量は減らさず、きっちりと栄養を摂取できるように心がけます。
重症の場合は入院管理!
重症の場合や自宅療養でも改善しない場合は入院することになります。
入院においても、基本は自宅療養と変わらず、安静にすることと食事療法です。
減塩食を摂りながら、安静にして血圧が上がるのを防ぎます。
さらに入院中は、血液検査で腎機能や肝機能を調べたり、超音波検査で赤ちゃんの様子を見たりして経過観察していくことになります。
入院中は症状が改善されるまで、とにかくベッドで安静に過ごしましょう。
妊婦健診は定期的に受けよう!
近年、妊娠高血圧になるかどうか早めに見極められないか、病気そのものを予防できないかと研究をされています。
しかし残念ながら、今のところ、正確な診断方法はありません。
妊娠高血圧症候群を早期発見するためには、妊婦健診を定期的に受け、常に血圧や尿たんぱくの値に気を配っておくしかありません。
そして、予防法の基本は減塩、低カロリーな食事を摂ることです。食事の管理が大事だからといって、偏った食事をするような自己判断はいけません。
赤ちゃんに栄養を届けるために、高たんぱくでカルシウムが豊富な食事を心がけましょう。
医師や保健師に指導をしてもらって、バランスのとれたメニューを学ぶのもいいですね。
妊娠初期から、体重を増やしすぎないように気を付けながら気を付けて血圧の管理をしていきましょう。
