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映画「めがみさま」の脚本家が描く、理想と現実の中から見つける「ありのままの自分」

1つの地域にスポットを当てて作る「Mシネマ」の第2弾として、2017年6月10日から全国で公開をされている、映画「めがみさま」。
松井玲奈さん×新川優愛さんのW主演として注目を集めていて、人生に絶望を感じていた理華と同じく過酷な人生から立ち直ったセラピスト・ラブとの関係性を描いていくストーリーとなっています。
今回は、本作がデビューとなる若手脚本家、大月ももさんに「めがみさま」の脚本を担当することになったキッカケから、作品に込めた思いまで、じっくりとお伺いしてきました。
 

目次

映画「めがみさま」の脚本を担当することになったキッカケ

今回、脚本を担当することになったキッカケは?
もともと今回の映画の制作会社であるMMJで企画のお仕事をしていたときにお世話になったプロデューサーから、映画の原案を考えるお話をいただいたのがキッカケでした。原案が通ったら脚本も担当させてもらえるという話を聞いたのはしばらく経ってからで……
はじめは脚本の実績もなかったので、まさか脚本をやるとは思っていなかったのですが、原案が通り、脚本家としてデビューすることになりました。
今回が脚本を書くのが初めてで、脚本家としてのデビュー作なんですね!
そうなんですよ。今でも何が起こっているかちょっと分からないくらい驚いています(笑)
ストーリーを書き始めるときの着想はどのようにされたのですか?
若い女性の物語にしたいということは決まっていて、自分自身、エンタメ系ではなく、精神的な感じのものが書きたいといったようにあらかじめテーマは考えていたので、それに沿って書き始めて、後からプロデューサーや監督たちとあれこれ話し合って作っていった感じです。

「めがみさま」のストーリーを描くうえで心がけたこと

作品のテーマについて語る大月ももさん

主人公の理華とラブは正反対の性格ですが、人物を描くうえで心がけたことは?
理華とラブどちらも居そうで居ないような、両極端な人物を描くようにしました。でも理華はなるべくリアルに近い感じで、母親との関係性は実際にありそうな感じをこだわりました。母親とのシーンは監督と最後まで話し合いを重ねましたね。
大月ももさん自身は、理華とラブどちらの性格に近いですか?
私は理華に近いです。ラブみたいにズバッと喝を入れたりすることはできないですね。
そうなんですね!ラブのセリフには、「他人の人生の中で生きているんじゃない」とセラピストらしい言葉が所々でありますが、そんな自分とは違う性格であるラブのセリフはどうやって考えられたんですか?
自己啓発本とかを読んだり……あとは、自分の理想というか、こうなりたいというイメージを持って考えましたね。やっぱりラブのセリフは作中でも一番、魅力的に見えるようにこだわって書いたので、その中の一つでも観た人の心に刺さってくれればいいなと思います。

実際に出来上がった作品を観られた感想

理華とラブを演じた、松井玲奈さんと新川優愛さんの演技を見て、大月ももさんが思い描いていたイメージと比べてどうでしたか?
お二人とも私が思ってた想像をはるかに越えてらっしゃって、圧倒されちゃいました。
理華はどちらかというと台詞より表情や雰囲気で見せるタイプの役柄だったので、すごく難しかったと思うんですね。この作品は理華とラブWヒロインですが、下手すれば理華の方が全然目立たなくなる可能性もあったんです。でも松井さんは本当に絶妙に演じてくださって、不安を抱いた自分が恥ずかしくなりました。泣き叫ぶシーンはもちろんのこと、最初の作り笑いのシーンとか、圧倒されました。
ラブは個性が強くて、一見わかりやすいキャラクターではあります。でもキツい言葉を口にしながらもそれで人々を魅了して、なおかつ愛されるキャラクターとなるとやはり難しいはずで。それでも新川さんは、ぶっ飛びながらも愛らしく演じてくださいました。現場でお会いしたときもハマってて目の前にラブがいる!と思ったくらいです(笑)
お二人とも難しい役を演じていただいて、本当に感謝しかありません。この作品は俳優さんに支えられた面が大きいなと感じているので、主演のお二人をはじめ、キャストの皆様には感謝でいっぱいです。
思い入れのあるシーンはありますか?
どれも思い入れはあるのですが、私個人だけでなく、スタッフの総意でこだわったシーンとして理華と母親のシーンが印象に残っています。はじめは暴力的な母親の設定にしていたんですけど、もっとリアルな母親に近づけるためにみんなで話し合って、一見したら虐待には見えないけれど、子どもを追いやっている母親という設定になりました。
そのシーンの撮影自体も最終日の1日だけだったんですけど、母親役の筒井さんも本当に役を作りこんでくださって、じっくりとこだわって考えたシーンだけに、特に思い入れがあります。

「めがみさま」を観る人に伝えたい作品のテーマ

さいごに、今回の作品に込められたテーマや思いを教えてください。
この作品では、「ありのままの自分を全部受け入れてほしい」ということをテーマにしています。
例えば私なんか、全部捨てて誰も知らない土地でやり直したい、とか思うことがよくあるんですね。でも、もし新しい生活を始めたとしても、結局今の自分である限り同じことを繰り返すだけで何も変わらないと思うんです。だからといって、自分の理想を無理やり作っても絶対にどこかでボロがでてしまいますよね。
私たちが一番最初にやるべきことは、理想の自分を目指す前に、まず今のありのままの自分を受け容れて認めることだと思うんです。自分はこういう性格で、こういうことが苦手で……とか。そこから自分に何ができるか、どう変えていけるかを考えていく。スタートラインに目を背けても、何も始まらないんじゃないかなと。
これは余談ですが、この物語自体がカウンセリングの手法も取り入れてるんですけど、臨床心理学でよく言われることとして、大概の生きづらさの理由って、現実の自分と理想の自分がかけ離れすぎていることにあるそうなんです。「本当は友達に囲まれるような人気者になりたいのに、実際の自分は人と接するのが苦手」とか。
でも、カウンセリングではこの理想と現実をすり合わせて、一致させることを目的とするそうなんです。ある意味、作品の中でその過程を描いています。理華にとってはラブが理想だけど、その前にありのままの自分と向き合う必要があるので、その中で理華がどのように変化していくかに注目してみていただけると嬉しいです。

映画「めがみさま」の作品情報

映画「めがみさま」は、主にテレビドラマの制作を行っているメディアミックス・ジャパンによる「全国の各都道府県の中から1つの地域にスポットを当てた映画を製作し、その地域で公開する」といったコンセプトの企画「Mシネマ」の第2弾作品です。
第1弾作品としては、愛知県が舞台の映画「gift」で、元SKE48の松井玲奈と名脇役の遠藤憲一によるW主演として公開をされています。
今回の「めがみさま」は埼玉県が舞台となっており、前作でも主演を務めた、松井玲奈とモデルやドラマなどマルチに活動する、新川優愛によるW主演となっています。
脇を固めるのも、元EBiDANのメンバーで主に舞台で活躍する廣瀬智紀、映画やドラマで幅広い演技力をみせる筒井真理子、数多くの出演作をもつベテラン俳優の尾美としのりなど演技派俳優が揃っています。
監督を務める宮岡太郎は、Mシネマ第1弾作品「gift」に続き、本作が映画監督3作目となります。
あらすじ
閉塞的な郊外の田舎に住む、佐倉理華(松井玲奈)は、母親である市絵(筒井真理子)からの過干渉や職場でのいじめに悩みながらも、精神安定剤でなんとか日々をやり過ごしていた。そんなあるとき、同僚からの陰謀で職場を失い、母親からも存在意義を否定され、人生に絶望を感じた理華は自殺を決意する。
しかし、自分と同じような環境から這い上がり、セラピストとして活動するラブ(新川優愛)の存在を知り、すがるような思いで彼女と会うことに。
「私は我慢しない。言わなきゃわかんないの、何も変わらないの」
「他人の人生の中で生きるんじゃないわよ。自分の中で、自分の人生を生きなさい」
自分の思うままに、自分のために生きるラブの言葉に感銘を受けた理華は、家を出てラブのセミナーを手伝い、新しい生活をはじめる。理華と同じように、就職浪人で人生に絶望を感じていたところをラブに救われた川崎拓海(廣瀬智紀)への恋心、セミナーに参加をして自分らしさを取り戻していく人々との交流の中で、順調な日々を過ごしていた。
だが、ラブのセミナーに胡散臭さを覚えた記者の三坂あゆみ(梅舟惟永)が周囲を嗅ぎまわり始め、ある事件をキッカケに理華とラブの関係に不協和音が生じはじめる……

作品詳細
公開 2017年(日本)
監督 宮岡太郎
脚本 大月もも
キャスト 松井玲奈、新川優愛、廣瀬智紀、筒井真理子、尾美としのり、梅舟惟永、西沢仁太、西丸優子、片山萌美、鈴木ちなみ
撮影 根岸憲一
音楽 松本淳一
主題歌 SHE’S「Ghost」(ユニバーサル ミュージック)
公式サイト http://www.mmj-pro.co.jp/megami/
劇場情報
「めがみさま」を観られる全国の劇場は以下の通りです。

2017/6/10(日)~公開

  • シネマート新宿(東京都)
  • イオンシネマ浦和美園(埼玉県)
  • イオンシネマ熊谷(埼玉県)
  • イオンシネマ大井(埼玉県)
  • 土浦セントラルシネマズ(茨城県)
  • 小田原コロナシネマワールド(神奈川県)
  • 中川コロナシネマワールド(愛知県)
  • 小牧コロナシネマワールド(愛知県)
  • 半田コロナシネマワールド(愛知県)
  • 安城コロナシネマワールド(愛知県)
  • 豊川コロナシネマワールド(愛知県)
  • 大垣コロナシネマワールド(岐阜県)
  • 金沢コロナシネマワールド(石川県)
  • 福井コロナシネマワールド(福井県)
  • 福山コロナシネマワールド(広島県)
  • 小倉コロナシネマワールド(福岡県)
  • 岡山メルパ(岡山県)
  • MOVIXあまがさき(兵庫県)※6/16(金)まで公開予定

2017/8/12(土)~公開

  • ディノスシネマズ札幌劇場(北海道)

このほか、順次公開予定です。

「めがみさま」特別上映会&ティーチインショー
「めがみさま」の舞台となった埼玉県のロケ地としても使われた入間市で、映画上映会と上映後に作品についてのトークショーが行われます。
今回、インテビューをさせていただきました、大月ももさんも登壇予定です。
作品の裏側を覗けるチャンスなので、お近くの方は、ぜひ参加してみてください!
日時 2017/7/2(日)13:30~(開場13:00)
開場 入間市産業文化センターホール
ティーチイン登壇予定者 宮岡太郎さん、大月ももさん、新川優愛さん、廣瀬智紀さん
チケット販売 2017/6/17(土)10:00~ チケットぴあ、セブンイレブン、サークルK、サンクス
 

さいごに

日々、生活をする中でストレスを感じたり、生きづらさを感じたりすることは誰でもあります。理華のように、理想と現実の自分の違いに苦しんでいる人も中にはいるのではないでしょうか。
映画「めがみさま」では、「ありのままの自分とは?」「自分らしく生きるには?」と世の中で生きていくうえで忘れてしまいがちな、自分の人生を生きることの大切さを投げかけてくれます。
そんな脚本家の大月ももさんが伝えたかった、「ありのままの自分を受け止める」ということは、観る人それぞれの立場や考え方で変わってきますので、十人十色の解釈がある作品に仕上がっています。
一度見た人が、もう一度見たいと思える作品であるとともに、見るタイミングによっても捉え方が変わる作品でもあると思うので、ぜひ一度、劇場に足を運んでみてください。