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部下の転職を「裏切り」と言うのは古い!?日本の風土では仕方ない?

 

昔は企業に勤めるとその会社と定年まで共に働き、社員は会社への貢献のため、会社は社員生活を守るため、といったそれぞれ持ちつ持たれつの関係でした。しかし、今では会社が定年まで面倒を見てくれる保証はどこにもなく、ブラック企業のような社員を会社の駒としてしか扱わないような事例も出てきました。こうした中で働く側の意識としても、愛社精神よりも自分をより高く評価してくれる企業への転職が活発になり、もはやそれが当たり前ともなっています。果たしてそれを「裏切り」と呼んでしまうのは仕方のないことなのでしょうか。

目次

大切に育てた部下が転職することに…

永久雇用のシステムが崩れた世代なので、転職はやむを得ない

永久雇用があった時代であれば、上司は部下をきちんと育てて自分が定年退職する際に引き継ぐことで、会社全体の人材不足やスキル低下を防いでいました。そういった中で急に部下が転職してしまうと、それまで育成に掛けた時間も経費も無駄になってしまいます。

しかし、今では永久雇用というシステム自体が無いに等しく、特にリーマンショック以降は会社の倒産や経営不振で、いつ自分が人事整理の対象になるかわからない時代になってしまいました。そのため、一人一人が自分を守るためスキルを磨き、他の会社に転職していくということも珍しくないです。年齢的には20代から30代前半の人は転職が珍しくないものと捉える人が多いですが、それ以降になると「裏切り」だと感じてしまう人が出てくる傾向にあります。

そもそも「転職=裏切り」なのか

目的のしっかりした転職は、前向きに応援できる理由ではないか

転職と言っても理由はそれぞれに違います。「仕事が嫌になった」「人間関係がうまくいかないから」という理由だけで転職されてしまうと、人事や上司としてはいい気分ではありません。ですが、もっと前向きな理由であればすんなり送り出すことができると思います。

例えば「会社で経験した○○の分野に特化した仕事がしたいと思い、資格を取るなどして努力してきたので転職したい」と言われれば、本当にやりたいことを見つけてそれなりに努力もしており、今の環境よりもその人にとってプラスになる転職であることがわかるので応援できるのではないでしょうか。部下思いの上司であるほど「裏切られた」と思いがちですが、きちんと話せばわかってもらえるはずです。

きちんとした手順を踏んだ転職も裏切りとはいい難い

事前にしっかりと上司などに相談し、筋を通した転職であれば裏切りとまでは言えません。何の相談もなく、急に来月からライバル会社へ転職するというのであれば裏切りとも言えますが、会社で定められた手続きや期間を守って、なおかつ周りの理解も得られている場合は誰にも非難されることはありません。ただし、気をつけなければならないのが、転職先が同業他社のライバル企業だった場合です。転職すると伝えた際に転職先企業まで答える必要はありませんので、答えたくない場合は「あまり知られていない小さな会社です」というようにはぐらかしておきましょう。

あからさまに「ちょっと言えません」と言ってしまうとトゲが立ちますし、場合によっては技術盗用を懸念されてしまい、いろいろとややこしいことになることも。企業によっては就業規則に「同業他社への転職は退職後、半年間休業すること」と一定期間仕事をできないような定めになっている企業もあります。具体的には技術系の仕事を行う会社の場合、研修や業務で知り得た知識、情報を他社に使われないようにこうした決まりが存在しています。知らなかったでは済まされないことですし、これに反することもまた「裏切り」と見なされる原因になるので気をつけましょう。

部下の転職を心から納得するには、上司の努力も必要

いくら相談されており、筋が通っていたとしても直属の上司にとっては、やはり「裏切られた」と感じてしまうのは人間なので仕方のないところです。頭ではわかっていても「自分のせいで転職してしまうのか」自分自身を責めることもあるでしょうし「今まで掛けた時間はなんだったのか」という虚無感に襲われることもあります。しかし、そこは上司の考え方も前向きに「自分が育てたおかげでやりたいことを見つけられた」「自分の教え方がいいからスキルが上達して、新しいステージで活躍できるようになった」と思うことで納得する努力も必要です。

また、部下も上司にそう思って貰えるようにするためには、転職する時に感謝の気持ちをきちんと伝えることが大切。ただ伝えるだけだと「なぜ感謝しているのに転職するのか?」不安を逆効果になるため、「感謝しているけども他の仕事がしたい」というように上司の責任でなく、会社を変えたいだけというようなことを理由に転職するという形にするとうまくいくでしょう。

部下としても「裏切り」とされない転職方法に努めよう

在籍中からの転職活動は周りに知られないよう気をつける

転職活動をしていることが知れ渡ると今の仕事に不満があり、辞めるつもりで仕事をしていると思われがちになります。人によっては「だから最近やる気がないのか」と今の働きぶりにクレームをつけられる原因にもなりかねません。妙な噂を立てられたり、目をつけられると、在職中の会社での居心地がかなり悪くなりますので、転職が決まるまでは周りに気づかれないように転職活動をしましょう。転職が決まっても上司や人事には早々に伝えて今後のスケジュールを決めるべきですが、同僚や他の関係者へ伝えるのは引き継ぎで必要にならない限り、退職の1週間前といった直前でも大丈夫です。

もちろん退職に際して挨拶は必要なのですが、あまり前から伝えてしまうとこれもまた余計な噂の原因になります。また、伝える順番がバラバラになってしまうと「あの人は聞いていたけど、自分は聞いていない」と不満を持つ人もいます。そうならないためにも1週間ほど前に挨拶周りとしてきちんと時間をとり、一気に伝えるほうが効率的で不満を抑えることができます。

退職願の提出は、最低1ヶ月以上の余裕を持って行う

退職願を出すタイミングとしては少なくとも1ヶ月以上の余裕は持つべきです。理由としてはあなたが辞めたあとの仕事の割り振りや、抜けた人員の確保を企業側がしなければならないので、その期間が必要になります。仕事内容によってはさらに先のスケジュールまでが決まっている場合もありますので、自分の職場のスケジュール感に合わせてどのくらい前に切り出すべきかを転職活動前に把握しておきましょう。これを怠ると、転職先から内定を貰った際や面接の場面で「いつから入社できますか?」という問に答えられなくなります。

勝手に来月には退職できると思い込んで、そう答えてしまったばっかりに、今の会社では退職するための手続きや引き継ぎが思うようにできず、結果的に入社予定日に入社することができなくなり、最悪の場合それを伝えた結果「出社日が変わるなら採用しない」と言われかねません。

引き継ぎなど、退職者として必要な作業をきちんと行う

転職先が決まったからといって、今の仕事を疎かにしてはいけません。むしろ、最後のラストスパートだと思って気を引き締めて仕事すべきです。そうすることで自分の仕事の引き継ぎもスムーズに行えますし、引き継ぎされる側も仕事を押し付けられたというような不快な思いをすることもありません。最後まで手続きや引き継ぎと共に仕事を一生懸命することで「きちんと仕事をやり遂げてくれた人」というイメージに繋がります。辞めるとは言え「早くいなくなって欲しい」と思われるより「いなくなることが惜しい」言われる人材でありたいですよね。

さらにそうしておくことで、何かしらのトラブルでまた同じ会社にお世話になりたいと思った時にも復帰しやすくなることも考えられます。実際にとても優秀だった人がベンチャー企業で挑戦したいと思い転職したものの、転職先が経営困難になってしまい失業しそうになったところ、前職の友人や上司を通じてもう一度入社できるように採用活動をしてもらった結果、無事復職できたという例もありますので、こうした人脈を傷つけないように退職することも非常に大切なことです。

「転職=裏切り」とならないためには?

裏切りとなるかどうかは、相互の気持ち次第

裏切りとは気持ちの持ちようによって、そのように思ってしまうかどうかが決まります。転職する側は「この会社にお世話になった」というような感謝の気持ちを持ち、送り出す側である上司や職場の仲間が「次の場所でも頑張って欲しい」と応援している状態が相互にできていれば裏切り者と思うことはないはずです。

少なくとも転職するあなた自身が「さっさと辞めて次に行きたい」という気持ちを持たないことが重要。気持ちは行動に出てしまいますので、そういった意識があると仕事が雑になりミスが多発します。その結果周りに迷惑を掛けることにもなりますので、最後まで全力で頑張る意識で仕事に取り組みましょう。

円満退社は難しいが「裏切り」とならないために最低限のことはしよう

定年退職や寿退社といった形であれば円満退社しやすいですが、転職となるとどこか「裏切り」感が出てしまうため円満には事が運ばないことがあります。しかし、最低限会社の規則を守り、社会人としてのマナーを守っておくことで「裏切り者」というレッテルを貼られることを防ぐことができます。具体的には「上司への相談→退職手続き→仕事の引き継ぎ→挨拶回り」といった4つのことを順に行うようにしましょう。いきなり退職願いを出すのはマナー違反ですので、上司への相談が不可欠。

また、仕事の引き継ぎ後に後任の人を連れて、挨拶回りしておくことも大切です。これをしておくとあなた自身の印象を下げることもありませんし、後任の人も仕事がしやすくなります。大事なことはあなたが抜けた後も、滞りなく仕事が進められるようにすること。いつもの業務に加えてやることが増えますので大変かと思いますが、しっかりとやり遂げて次の職場に気兼ねなく向かえるようにしておきましょう。

まとめ

転職が当たり前となった現在でも「裏切り者」と言われてしまうのは日本の風土では仕方ないのでしょうか。特に昔の永久雇用時代に働いてきた人にとっては転職というものが認めにくく、そう思ってしまう人が多いようです。中にはあの手この手を使って退職させないように妨害されることや、転職が決まった途端に嫌がらせをされることもあるので、転職先が決まっても気を抜かず仕事をしましょう。嫌がらせがひどい場合には、退職するまで職場にボイスレコーダーを持って言動を記録しておくことも必要かもしれません。

しかし、比較的話題世代の人たちになると転職が当たり前になってきますので、時間が経つにつれて転職を「裏切り」だと考える人もいなくなっていくことになるでしょう。とにかく転職先が決まってから自分にできることは精一杯仕事を頑張りながら、会社の手続きを怠らず、周りとコミュニケーションを取りながら引き継ぎを確実に行うこと。なるべく円満退職にできるように、最善を尽くしながらスムーズな転職ができるようにしたいものです。