景気の先行きもあまり明るさが見えない昨今、副業に活路を見出す人も多いのではないでしょうか。
本業で会社勤めをしている人の場合は、本業による所得は会社の方で年末調整することによって過不足が精算されています。
しかし、副業、Wワークについてはどのように処理すればよいのでしょうか?
これについても条件によっては確定申告をする義務が生じることがありますので、しっかりと理解しましょう。
「副業」とあるものの種類
所得の種類によって課税方法が異なる
本業とされるもの以外に何らかの収入がある場合、それらを総合的に「副業」と呼んでいますが、税法上正確に定義されているわけではありません。
副業とはあくまで俗称として使われる呼び方に過ぎないのです。
ですから、「副業の課税はこうする」という定め方がされているわけではなく、どのような方法で得た収入なのか、ということで所得の種類や課税の方法は異なってきます。
所得税の課税には基本的に「総合課税」と「分離課税」という2つの課税方法があります。
収入源がどんな性質のものなのかによって税法の上での所得は10種類に分かれていますが、これらの中で
「○○所得は総合課税として他の所得と合算して課税する(総合課税)」「○○所得は他の所得とは分けて考える(分離課税)」
など、所得の種類によって課税の仕方が異なるということなのです。
所得の種類とは、たとえばサラリーマンの給料なら「給与所得」自営業者が事業によって得た収入は「事業所得」、不動産を所有する人が家賃で得た収入は「不動産所得」といった形になります。
ただ、これらの線引きには微妙な部分もあり、たとえばアフィリエイトでお小遣い稼ぎをしていた人の収入は基本的には「雑所得」となりますが、その収入が本業を超えるような金額になってしまった場合、もはやそれは「事業所得」であると解釈されることもあるのです。
事業所得と雑所得の違い
事業所得として申告してそれが税務署に認められるためには「ある程度儲かる可能性があり、事業としての設備が整っており、それがなければ生活に影響があり、職業として認知できること」など一定の条件を備えていなければなりません。
つまり、アフィリエイトやネットオークション、先物取引などの比較的単発と思われる収入は雑所得に区分されることが通常です。
近年、実態は雑所得であるものを事業所得として申告し、税務署から修正される案件が増えているそうです。
そもそも「副業が事業所得か?雑所得か?」ということにこだわらなければならない理由は何なのでしょうか?
もし「事業所得」として解釈することができれば、所得から一定の金額を差し引いて所得税、住民税、健康保険料などを安くできるなど、税制上さまざまな優遇を受けることができるため、なるべく事業所得にして恩恵を受けたいと思っている人が多いということなのです。
事業所得として受けられる特典には以下のようなものがあります。
①損益通算
事業所得は給与所得等と損益通算することができます。
損益通算とは、「片方の所得で黒字になれば儲かった分だけ税金が発生するが、もう一方で赤字になっていればそちらの分を黒字から差し引いて考えられるので税金が安くなったり、ゼロになったりする」ということです。
つまりトータルで見て黒字が少なかったり赤字になっていたりするのであれば、黒字部分だけを見て課税するのは適切ではないためそのような措置を設けているのです。
②繰越控除
青色申告している人は、事業所得での損失があればその年に損益通算しますが、それでも控除しきれなかった分については翌年以降3年間にわたって控除することができます。
③青色申告特別控除
青色申告をしている人で、下記の条件を満たしている人は所得から最高65万円の控除を受けることができます。
- ア.不動産所得または事業所得を生じるような事業を営んでいること。
- イ.上記の所得にかかる取引を複式簿記により記帳していること。
- ウ.この記帳に基づいて作成した貸借対照表および損益計算書を確定申告書に添付して、この控除の適用を受ける金額を記載して、法律によって定められた申告期限内に提出すること。
なお、これらを満たしていない青色申告者は最高10万円の控除を受けることができます。
副業でも確定申告が必要となるケース
副業での収入額が20万円を超えると確定申告が必要
では、副業で確定申告しなければならないようなケースとはどのようなものでしょうか。
ひとつの目安としては、本業以外での副業収入が年間20万円を超えているかどうか、ということです。雑所得の場合はもちろん、雑所得以外であっても、(給与所得と退職所得以外であれば)20万円以下ならば申告しなくてもかまいません。
さらに、国税庁によってこのような場合も申告が必要と定められています。
給与を2箇所以上から受けていて、年末調整をされなかった給与の給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得と退職所得を除く)との合計額が20万円を超える。
(給与所得の収入金額の合計額から所得控除の合計額を差し引いた残りの金額が150万円以下で、さらに各種の所得金額の合計額が20万円以下の場合は申告不要)
ただ、知っておきたいのはこの「20万円以下なら確定申告不要」のルールが適用されるのは所得税のことです。
住民税については少額ならば免除されるというルールが適用されないこともあります。
また、住民税についてはもし給与所得を受ける勤務先から給与支払報告書が提出されていない場合は確定申告が必要となることにも注意が必要です。
各所得による税率と計算方法
所得税の計算をする際には、本業と副業の所得を合算して、必要経費を差し引きます。
年末調整を受けている人は、下記に沿って最終的に出た税額からすでに納めた所得税額を引いて納めればよいことになります。
年末調整を受けていない人は納税者なら誰でも控除できる38万円を差し引くこと、また、上記の「青色申告特別控除」を受けられる条件にあてはまる人は最高65万円までを差し引くことを忘れないようにしましょう。
平成27年以降の所得に関する所得税はこのようになります。
課税される所得金額 |
税率 |
控除額 |
195万円以下 |
5% |
0円 |
195万円を超え 330万円以下 |
10% |
97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 |
20% |
427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 |
23% |
636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 |
33% |
1,536,000円 |
1,800万円を超え4.000万円以下 |
40% |
2,796,000円 |
4,000万円超 |
45% |
4,796,000円 |
この表に従うと、課税所得700万円の人の具体的な計算方法としては以下のとおりになります。
700万円×0.23-63万6千円=97万4千円
そのWワーク、会社にバレない?
住民税の源泉徴収額でバレるケースが多い
副業をしていることを会社にバレたらまずい、という人も多いことでしょう。
多くの会社では職務に専念するために就業規則などで副業を禁止しており、ばれたら懲戒や減給などということもありえるからです。
では、副業禁止の会社においてバレてしまうのはどういったことが理由なのでしょうか。もちろん、ついうっかり自分で会社の誰かに言ってしまい、そこから漏れる場合も少なくありません。
しかし、それ以外で考えられることとしては、役所から通知された住民税の金額が多かったというケースなのです。
本業、副業の会社はともに役所に給与支払報告書を提出し、役所側はすべての収入を合算して計算した住民税の金額を源泉徴収のため本業の会社に通知します。
そこで、経理の職員がじっくり見ていなくてスルーしてくれればよいのですが、副業分は「給与所得以外」という項目に記載されているためそれを不審に思って上司に報告などされると、そこからバレるという流れになる可能性があるのです。
バレたら困る人は、バレない対策をしておこう!
では、副業が会社にバレたらまずいという人がぜひしておきたい対策を考えてみましょう。
これは、「自分で確定申告して住民税を普通徴収にしてしまう」という方法です。
税金の納付方法には「普通徴収(通知書が送られてきて自分で銀行などで支払う)」と、「特別徴収(会社などに源泉徴収してもらう)」があります。自分で確定申告すれば普通徴収を選択することができますので、こうしておけば会社給与所得の分の住民税しか通知されないわけです。
確定申告なんてやったことがないからどうすればいいのかわからないと思うかも知れませんが、きちんと納税したいという人の相談であれば税務署も前向きにやり方を教えてくれます。
副業の分を確定申告したいということ、住民税を普通徴収で納付したいということをきちんと伝えた上でアドバイスを受けて自分で申告するようにしましょう。