株で儲ける方法は、極端に言ってしまうとシンプルにただ一つです。
その方法とは株を「安く買い、高く売る」ことです。シンプルなのですが、それが難しいのです。
これを実践しようとすると、株がなぜ上がるのか、なぜ下がるのかを知っておくことがとても大切です。
ここでは、株はどうして上がったり下がったりするのかを見ていこうと思います。
株価とは何か?
そもそも「株価」とは何かということから考えていきましょう。
株には、各銘柄ごとに株価(一株当たりの価格)が公開されています。株を買うときは、(株価×株数)のお金を支払って購入することになりますが、リアルタイムで投資家に売買されることにより、株価は変動しています。
インターネット等でA社の株価を調べると、300円だったとしましょう。
この300円という株価は何を意味しているのでしょうか?
現在のA社の企業価値(実際には株数をかけた時価総額が企業価値です。)という意味も持っていますが、ここで理解してほしい株価の意味は、直近で取引が成立した価格であるということです。
要するに、A社の株を300円で売りたいという人と300円で買いたいという人の取引が直近に成立したことを意味しているのです。
かなり初歩的な説明ではありますが、今後株に関して知っていく上で、基礎的な知識です。このことが分かっていないとストップ高やストップ安も分かりませんので、理解しておきましょう。
株価が上下する仕組み
株価は、常に上下変動しています。
この変動は、一体どのように起こっているのでしょうか。
先程説明した株価の意味「株価=直近で取引が成立した価格」を踏まえた上で考えていきましょう。
例えば、1株200円の株があったとします。この会社は今期の決算で大きな損失を出しました。
そうなると、この会社の株を、「250円を出しても買いたい!」と思う人はいませんよね。
したがって、
「1株200円は高いが、150円なら買ってもいい」
「こんなに大赤字を出している会社の株は欲しくない。」
どちらかの考えになるのではないでしょうか。
簡単な例を挙げて考えてみましょう。
〈具体例〉
株を保有しているAさんは、
「株価が下がっていきそうだな。それなら今の200円のうちに売ってしまおう。」
と考え、売り注文を出します。
これから株の保有を考えているBさんは、
「この株は200円の価値は無さそうだが、180円でなら買ってもいいな。」
というふうに考え、180円で買い注文を出します。
そうすると、200円で売り注文を出しているAさんは、そのまま注文を出したままにして、200円で買ってくれる人が現れるのを待つか、Bさんが注文をだしている180円まで下げて売り注文を出し直すかの選択を迫られることになります。
ところが、その選択をする前にCさんが190円で買い注文を出しました。Aさんは、190円なら売ってしまいたいと考え、190円に売り注文を訂正し、Cさんとの間で無事に売買が成立します。
この時に、この会社の株価は190円となるのです。
(=直近で取引が成立した価格)
これが、株価が下がる時の簡単なシナリオです。株価が上がる時はこの逆のパターンと思って下さい。
株価を動かす要因
ここまでで、株価が上がったり下がったりする仕組みを見てきました。仕組みを理解した上で、ここからはどのような要因で株価が上がったり下がったりするのかを詳しく見ていきたいと思います。
株価を動かす要因は、広く捉えればこの世界で起きているあらゆる事象です。今の世界経済は、グローバル化が進んだことで、世界各国で起きた事件や事象がリアルタイムで世界経済に影響を与えます。
私たちが、日本に住み、日本の企業に株式投資をしていたとしても、世界経済の情勢を無視することは決してできません。
昔は、投資の格言のようなもので、「アメリカがくしゃみをすれば、日本が風邪をひく」などと言われましたが、今や世界のどの国がくしゃみをしても日本は風邪をひきかねないと言えます。
しかし、このように株価変動の要因を漠然と考えているだけでは、分析も何もできません。
世界各国のあらゆる事象に株価は影響されるということを意識した上で、
「自分が買おうとしている株は安いのか・高いのか」
「この株は、今後上がる見込みがあるのか無いのか」
ということを判断しなければならないのです。
そこで、具体的にどういった要因で株価は上がり、そして下がるのかを知る必要があるのです。
株価を動かす7つのポイント
様々ある株価を動かす要因の中でも、より実践的なものを取り上げて説明していこうと思います。
- 企業の業績
- 業界の動向
- 決算の修正
- 配当金
- インパクトのあるニュース
- 合併・買収
- 割安株
以上7つの要因は、実際に投資を行う上で、知っておくとすぐに役に立つものです。
ちなみに、理解しやすくするため、株価が上がるという前提で説明していきます。株価が下がる時は逆の場合を考えるようにしてください。
7つの要因に共通して当てはまるのは、投資家が「この株を買いたい」と思うのかどうかです。
前述の「株価が上下する仕組み」では、株が下がるケースを想定して説明しました。
株が下がる時は、「株を売りたい」と思う人が主導して株が下がっていきます。つまり、「売り」の数が「買い」の数を上回っているので、株価が下がっていきます。
その逆で、多くの投資家が買いたいと思う株は、株価が上がっていくのです。「買い」注文が集まれば株価は上がり、「売り」注文が集まれば株価は下がります。
基本的には株価の上昇には、「買い」が「売り」を上回ることだということを念頭に置いて考えてください。
①企業の業績
株価は企業の業績に大きく左右されます。企業業績が毎年順調に伸びている会社は、投資家から注目されます。利益が出ていますので、会社の中に利益として生まれたお金が貯まっていきます。
会社に貯まった利益は、会社が使い道を決めます。
「会社の今後の成長の為に新しい工場を建設しよう」
「新しいプロジェクトを立ち上げるのに必要な資金に回そう」
「今のうちに返せる負債を減らしておこう」
などと選択肢はあるのですが、これらは会社の為にお金を使うケースです。
もう一つの選択肢として、「株主の為にお金を使う」ケースがあります。
具体的には、
「株主に分配する配当金を増やそう」
「自己株式を買い戻そう」
これら2点は、株主のために会社がお金を使うケースに当たります。
「自己株式の取得」は少し話が難しくなるので割愛しますが、「配当金を増やす」と投資家が株を買いたくなるのは何となく分かるかと思います。
- 会社が儲かる
- 内部留保(会社の貯金)が増える
- 配当を増やす可能性が大きくなる
- 投資家の「買い」注文が集まる
- 株価が上がる
という流れで、株価の上昇を説明することができます。
②業界の動向
会社は何かしらの業界に属しています。
例えば、自動車業界、金融業界、家電業界、食品業界・・・など様々ありますが、それぞれに景気の影響や為替の影響の受け方に特徴があります。
また、業界には流行り廃りもあります。以前にITバブル相場がありましたが、当時はインターネット業界に勢いがありました。時代と共にそれぞれの業界に吹く風が追い風であったり、向かい風であったりするのです。
業界自体に勢いがあると、新聞等を騒がせるようなニュースが頻繁に出てきます。そうすると、投資家はやはり注目しますよね。
先程と同じ構図ですが、投資家の注目が「買い」注文につながり、株価は上がっていきます。
例を挙げるとすれば、私が証券会社で働いていた時には、中国経済に非常に勢いがありました。
そうすると、中国で業績を伸ばしている企業のニュースが頻繁に新聞に取り上げられることで、中国関連株が活況を呈していました。具体的な銘柄を挙げると、“建設機械関連のコマツ“や、”トイレタリー関連のユニチャーム“などです。
このように業界全体の動向も株価を上昇させる要因となります。
③決算の修正
会社は1年を会計期間として、年間の経済活動を報告するために決算を発表します。
今やほとんどの企業が四半期毎(3か月毎)に決算を発表しており、決算報告で投資家は知ることができます。
同時に、会社は業績予想も発表しています。
この業績予想に対して、修正が行われて実際の決算が明らかになるという流れが一般的です。
この予想に対しての修正が、良い方向への修正であった場合(=上方修正)、株価は上昇したりします。
「A社、最終決算を10億円の上方修正」
このような見出しの記事を新聞やニュース等で目にしたことがあるのではないでしょうか。
要するに、「思っていたよりも儲かっていました」ということです。
業績予想の修正は、株価が上がる要因として分かりやすいため、投資家が非常に注目しています。修正の幅が大きければ大きいほど、「買い」の注文は多くなり、株価は上昇します。
④配当金
株は保有しているだけで、配当金がもらえる銘柄があります。
①で説明した通り、企業の業績が良いと、株主に対して支払われる配当金が増える可能性があります。
①の場合は、配当金が上がる可能性に投資家が注目して株価が上がるケースですが、この場合は、実際に配当金が増えた場合(増配)、または配当が無かった(無配)会社が配当を始めた場合(復配)です。
この場合、企業は「配当を増やしますよ」というニュースをアナウンスします。それを知った投資家が株を買いに来るため、株価が上がるということです。
⑤インパクトのあるニュース
ここまで説明してきたことに共通しているのは、「投資家の注目が集まると株価は上がりやすい」ということです。
少なからずポジティブなニュースで投資家の注目を浴びると、その銘柄の株価は上昇しやすくなります。
例えば、経済情報番組で企業が特集で取り上げられたり、社長がメディアで有名になったり、業績とは全く関係ないけれどもユニークな取組みをしている等、様々な情報で投資家の注目は集まります。
テレビ等で取り上げられた株を翌日調べてみると、いつもより取引量も増え、活況になっていることもあるかもしれませので、一度調べてみてはいかがでしょうか。
⑥合併・買収
近年、会社同士の合併や買収の案件が増えています。これらの企業活動も株価を動かす要因となります。
ただし、気を付けなければならないのは、合併や買収が行われると、必ず株価が上がるのかというと、そうではありません。重要なのは合併・買収の中身であり、何のための合併・買収なのかを考える事が大切です。
業績不振の企業同士が、生き残るために合併するのと、お互いの強みを生かして業界トップを狙うための合併では大きく意味が違ってきます。
また買収についても、業績悪化している赤字の企業を買収するのと、将来性のある黒字の企業を買収するのでは、株価の動き方は異なります。
買収が、買収を行う側の企業のメリットになると思えば、投資家の「買い」注文が集まり、株価は上昇します。
ちなみに、買収される側の企業の株価は少し考え方が違います。
買収される側の企業に対して買収する側の企業が、現在の株価以上の価値を支払って買収する場合、株価は上昇します。
⑦割安株
株価は、投資家の需給により上昇したり下落したりしていることが分かってきたと思います。
普通であれば、投資家の需給により株価は適正な株価に落ち着きます。これは、モノの価値と一緒です。
分かりやすく果物で説明してみましょう。需要(買いたい人の量)は一定とします。
去年は天候にも恵まれリンゴが非常に豊作でした。そのため、スーパーでの価格は100円/個で売られていました。
一方、今年は天候不順などでリンゴの収穫量が減ってしまい、200円/個で売られています。
同じリンゴにも関わらず、去年と今年では価格が大きく違います。
しかし、去年の100円/個も今年の200円/個も、当時の需要と供給を踏まえた適正な価格なのです。
しかし、これは十分な市場参加者(需要)がいることが前提です。当たり前ですが、リンゴを買える人が一人しかいないとすると価格は適正な価格にはなりません。
株の銘柄は山ほどありますので、投資家が全銘柄を隅々までチェックできているとは言えません。
そうすると、業績は好調、将来性のある事業も行っているのに、割安(適正な価格より安い)のまま放置されている株があるのです。掘り出し物と言ってもいいかもしれません。
そのような株を見つける事ができれば、その銘柄が何かのきっかけで注目されると株は適正な価格まで上昇する可能性が高いのです。
きっかけは様々ですが、例を挙げるとすれば、市場の鞍替えなどです。
(例:東証2部から東証1部へ移る→急に投資家の注目を集める)
割安株とは反対に、割高株も存在します。投資家が非常に注目して株価はどんどん上がっていきますが、実力以上に株価上がってしまい、割高(適正な価格より高い)になってしまっている銘柄のことです。
割安・割高を見抜けるようになるには少し経験値が必要です。株式投資を続けていく中で、指標を読めるようになったり、チャートを見れるようになると、感覚的に分かるようになります。
それまでは根気よく、買おうとしている株が割安なのか割高なのかを考えながら買っていくと、いずれ自分の力となっていくことでしょう。
まとめ(株価を動かす7つのポイント)
以上の7つのポイントは、明日からでも投資を始める方でも活用できます。
ある銘柄の株価が他の銘柄より大きく上がっている時、7つのポイントを思い出しながら、
「どうしてこの株はこんなに上がっているのか」
を考えて、自分なりに答えを出すようにしてください。
- 企業の業績 「業績が好調なのか」
- 業界の動向 「業界に勢いがあるのか」
- 決算の修正 「決算の上方修正があったのか」
- 配当金 「増配予測が出たのか」
- インパクトのあるニュース 「新聞に何か良いニュースが載ったのか」
- 合併・買収 「M&Aのニュースが出たのか」
- 割安株 「何かきっかけがあり投資家の注目が集まったのか」
ほとんどの場合が、以上の7つの項目に当てはまります。
毎日このような事を考えて株式投資をしていると、株に対する分析力が日に日についてくると思います。
投資力を磨く第一歩として、ぜひ参考にして下さい。
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