「株主優待」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
株主優待券がチケット屋さんで売っている、株主優待だけで生活している人がいる・・・などと最近はテレビで取り上げられることも多くなり、株主優待は私たちの生活にとって身近なものとなりつつあります。
この記事では、
- 株主優待の基本的な知識
- 株主優待目的の株の選び方・買い方
- 人気のある株主優待を紹介
- 注意点
について解説させていただきます。
株主優待とは
株主優待とは、企業から株主に対するお得なプレゼントのようなものです。配当金とは別にもらえます。
優待の内容は企業によって異なり、商品券や自社の製品、クオカード、施設の利用券、ポイント付与など、様々なお得な特典・サービスがあります。
また、株主優待がもらえる銘柄の数も1,000銘柄以上あるのです。
株を持っているだけでお得なプレゼントがもらえるということで、個人投資家の中には株主優待をもらうことを目的として株を保有している方も多くいます。
実はこの株主優待の制度は、外国ではほとんど行われておらず、日本独特の制度といえます。
では、株さえ買えば誰でも優待を受け取ることができるのでしょうか?
実は、株主優待を受け取るためには、2つの条件をクリアしなければなりません。
①権利確定日の時点で株を保有していること
この条件を理解するには、いくつかの用語を説明する必要があります。
3つの用語を説明しながら、同時に「権利確定日の時点で株を保有していること」という条件を満たす方法を見ていきましょう。
権利確定日
権利確定日とは、株の保有者に対して、株式に関する権利(株主優待・配当・株式分割等)が発生する日の事を言います。
(ここでは、株主優待に関しての権利が発生する日=権利確定日とします。)
株の受渡日
株式投資をしたことがある人は知っていると思いますが、株は即金決済ではありません。株を買った日にお金を払って、すぐに自分のものにならないのです。
株式は購入した日(約定日)から3営業日後に受渡し(=決済)が行われます。
つまり、株を買った日の3営業日後に口座から購入代金が引き落とされ、自分のものとなるのです。
(営業日とは、土・日・祝日を除いた平日です。)
権利付き最終日
株主優待をもらうためには、権利確定日時点で株を保有(受渡しを完了)している必要があります。そうすると、逆算して考える必要があります。
権利確定日の3営業日前までに株の注文を成立させていないと、権利確定日に株を保有することはできません。
つまり、株主優待の権利がもらえないのです。
この、権利確定日の3営業日前の日のことを権利付き最終日と言います。
〈具体例〉
A社(3月末日が権利確定日)の株式の株主優待をもらうには、3月31日の権利確定日に株を保有しておけば、株主優待をもらえることになります。
株主優待がもらえるかどうかは、株主優待の権利確定日の保有状況だけを判定要件としています。
そのため、3月31日を金曜日とした場合、権利付き最終日は3月28日(火)です。
つまり、A社の株を1年間保有していたが、3月27日(月)に売却(権利付き最終日前日)した人は株主優待をもらうことはできませんし、
今までA社の株は保有したことが無い人が、3月28日(火)にA社の株を購入すると、株主優待がもらえるということです。
権利付き最終日以前に株を売却してしまったり、株は購入したものの、権利確定日の時点でまだ株の受け渡しが済んでいなければ、株主優待を受け取る資格が無いのです。
株主優待を目的として株を購入する投資家は、権利確定日の1日だけ保有すればお得な株主優待がもらえるわけですから、長期間保有して株が値下がりすることを嫌がります。
そのため、権利付き最終日に株を買う人が多く、権利付き最終日には株価が上昇することが多いです。
株主優待をもらうことばかり考えていると、思わぬ高値で株を買ってしまう事にもなりかねませんので気を付けてください。
実際の優待品は、権利確定日から約2~3か月後に届くことが多いです。
②企業が指定する株数を保有していること
株主優待を受け取るには、企業が指定する株数を保有する必要があります。
何株以上を保有していれば優待がもらえるのかは、銘柄ごとに違うので、自分で調べる必要があります。(会社のホームページや四季報で調べることができます。)
なかには保有株数によって、優待の内容や優待品の量が変わる銘柄もあります。
「優待目的で株を買ったのに株数が足りなくて優待がもらえなかった」
「株数が足りなくて、希望していた優待と違うものが届いた」
などということが無いように、目当てにしている株主優待が何株以上の保有でもらえるのかなどは、事前に調べておきましょう。
株主優待目的の株の選び方・買い方
株主優待を目的に株を選ぶ場合、どのような株の選び方をすればよいのでしょうか。
株主優待を目的に株を買うのであれば、やはり自分が日常生活でよく利用する企業の株がおすすめです。
優待で企業の製品や商品券をもらった場合すぐに利用できますし、身近な企業の株であれば親近感もあって買いやすいでしょう。
例を挙げながら説明していきたいと思います。
イオン株式会社のケース
例えば、イオン株式会社という企業があります。最近では、主に大型ショッピングセンターの「イオンモール」の出店が目立ちますが、比較的知っている方が多い銘柄ではないでしょうか。
「マックスバリュ」「ミニストップ」「ウェルシア」といった会社もイオン系列の会社です。また、「ダイエー」もイオン系列の会社になりました。
「日々の買い物をダイエーもしくはマックスバリュでしている」
「平日は忙しいので週末にイオンでまとめ買いしている」
という方は大勢いらっしゃると思います。
実はこのイオン株、10万円台の投資でお得な特典やサービスがたくさん得られるということで、株主優待目的の方には、非常に人気のある株なんです。
仮に、このイオンの株を100株買ったとしましょう。
(ちなみに先程説明した権利確定日に関してはイオンの場合、年2回→8月末日と2月末日です。)
分かりやすく解説するために株価は1,500円として考えます。
つまり、100株買うと15万円(手数料は考慮しません)となります。
イオンの株主優待の中の一つに、
「イオンの株を100株以上保有していると「イオンオーナーズカード」という株主優待カードをもらうことができる」
というものがあります。
このカードはイオンやイオンの子会社であるダイエー系列の店舗(ダイエー・グルメシティ・foodium)、マックスバリュなどで買い物をすると、買物金額の3%のキャッシュバックを受けることができます。
あなたが毎週イオンで買い物をしているとしましょう。
仮に、月に5万円の買い物をしているとすれば、年間で60万円の買い物をしていることになりますよね。ということは、60万円×3%=18,000円もキャッシュバックされることになります。
イオンをよく利用する人からすれば、非常にお得な優待内容です。
また、株数が増えればキャッシュバック率も上がります。
- 100株以上:3%キャッシュバック
- 500株以上:4%キャッシュバック
- 1000株以上:5%キャッシュバック
- 3000株以上:7%キャッシュバック
イオンの株主優待の利回りについて
次に、イオンの株主優待を利回りの観点から考えてみましょう。
イオンの株を1,500円で100株買い(15万円)、年間18,000円のキャッシュバック(年間60万円の買物が前提)を受けることができます。
株を保有している特典は優待だけではありません。イオンの株を保有していると優待とは別に配当金がもらえます。
イオン株の配当金は、年間で1株あたり28円です。
(2014年8月に14円、2015年2月に14円)
100株保有していますので、年2,800円(税引前)もらえることなります。
キャッシュバックと配当金を合わせると、
18,000円(キャッシュバック)+2,800円(配当金)=20,800円
株価が横ばいであることを前提とすれば、1年間で15万円の投資に対して20,800円の還元を受けることができたことになり、この場合、実質利回りは13.86%となります。
ここまで高利回りの金融商品は、通常ハイリスクな商品が多いです。
したがって、株価が横ばいであったとしてもかなり得をしたことになります。
また、このケースのように、キャッシュバックを毎年18,000円程度受ける(毎年60万円程度買い物をする場合)ことができ、配当も変わらないと仮定すると、最悪、株価が毎年13%ずつ下がったとしても配当金と優待を考慮すれば、実質損はしていないと言えます。
ただ、毎年約13%ずつ株価が下がっていくと、いずれ株価は0円になってしまうという仮定が成り立ちますが、そうなる可能性は極めて低いでしょう。
とすると、数年間保有すると、株価の下落で損失が出るよりも、株主優待と配当金と株価の上昇で利益が出る可能性の方が高いのではないでしょうか。
株主優待がどれぐらい自身にとって得になるのかを考える時に、「実質利回り」を基準に考えてみるのも一つの考え方です。
他にもお得な特典がある
- 1000株以上保有していると、イオンカード2,000円分(3年以上保有)
(最大で、5000株保有で10,000円分のイオンカードがもらえます。)
- 系列のレストラン10%割引サービス
- イオンの映画は優待料金で鑑賞可能
- イオンラウンジ利用可能
イオンを日常的に利用する方にとってはとてもお得で魅力的な株主優待ですよね。
このように、自分の生活に身近な企業の銘柄を選ぶのがいいと思います。
人気のある株主優待を紹介
いくつか株主優待目的で保有するのにおすすめの銘柄を紹介するので参考にしてみてください。
オリエンタルランド
「東京ディズニーランド」「東京ディズニーシー」の経営をしているオリエンタルランドの優待はとても有名で人気があります。
オリエンタルランドの株主になれば、「東京ディズニーランド」または「東京ディズニーシー」のどちらかのパークで利用可能な1DAYパスポートがもらえるのです。
「100株以上保有であれば1枚」
「400株以上保有であれば2枚」
というように、株数に応じてもらえる年間パスポートの枚数は変わります。
所有株式数 | 9月末 | 3月末 | 合計 |
100株以上 | – | 1枚 | 1枚 |
400株以上 | 1枚 | 1枚 | 2枚 |
800株以上 | 2枚 | 2枚 | 4枚 |
1,200株以上 | 3枚 | 3枚 | 6枚 |
1.600株以上 | 4枚 | 4枚 | 8枚 |
2,000株以上 | 5枚 | 5枚 | 10枚 |
2,400株以上 | 6枚 | 6枚 | 12枚 |
(権利確定日は年2回→9月末日と3月末日です。)
現在オリエンタルランドの株価は約6,700円なので100株購入した場合、総額67万円となります。
配当金は1株あたり35円。100株であれば年間で3,500円となります。
「利回りはそんなに高くないじゃないか」と思った方もいるのではないでしょうか?
しかし、オリエンタルランドの優待はこれだけではありません。オリエンタルランドには、株式を長期保有している株主に向けての特別な優待制度があるのです。
東京ディズニーリゾートの5周年毎のアニバーサリーイヤーに、株主パスポートがもらえます。
条件は日付などが変更されますが、参考までに記載しておきます。
2015年9月30日から2018年9月30日までの全ての基準日(9月30日および3月31日)において、同一番号で100株以上保有している株主
→所有株式数に関係なく2枚
(通常の株主優待パスポートとは別に貰えます。)
2018年9月30日から2023年9月30日までの全ての基準日(9月30日および3月31日)において、同一番号で100株以上保有している株主
→所有株数に関係なく4枚
(こちらも通常の株主優待パスポートとは別に貰えます。)
100株保有している場合、もらうことができる株主優待パスポートは1枚ですが、長期保有することで5年毎のアニバーサリーイヤーには、株主優待パスポートを2枚ないしは4枚もらうことができるということです。
この長期保有の優待制度を目当てに株を保有している人が多いため、株を短期で売却する個人投資家が少ないのです。そのため、株価が下がりにくいと言われています。
また、ディズニーは根強いファンやリピーターが多いため、業績も非常に堅調です。
- 「株を始めてみたいけれど大幅に値下がりしたらどうしよう。」
- 「株を頻繁に売ったり買ったりせずに、長期で保有したい。」
- 「ディズニーランドが年に何度も行くぐらい好き。」
という方にはおすすめの銘柄と言えるでしょう。
ANAホールディングス
ANAも有名な銘柄ですよね。航空会社大手の「全日空」の株です。
ANAの優待は、1000株以上保有の場合、「株主優待番号ご案内書」というものがもらえます。
この案内書を提示すれば、
国内線の片道1区間が「株主優待割引運賃」で利用できる
というものです。
この株主優待割引運賃は、なんと片道が普通運賃の50%割引になるのです!
ゴールデンウィークや年末年始などの混雑期であっても、株主優待専用の座席に空席があればいつでも利用することができます。
もらうことができる「株主優待番号ご案内書」は保有株数によって変わります。
所有株式数 | 9月末 | 3月末 |
1,000株~1,999株 | 1枚 | 1枚 |
2,000株~2,999株 | 2枚 | 2枚 |
3,000株~3,999株 | 3枚 | 3枚 |
4,000株~9,999株 | 4枚+4,000株超過分 | 4枚+4,000株超過分 |
2,000株毎に1枚 | 2,000株毎に1枚 | |
10,000株~999,999株 | 7枚+10,000株超過分 | 7枚+10,000株超過分 |
4,000株毎に1枚 | 4,000株毎に1枚 | |
1,000,000株~ | 254枚+1,000,000株超過分 | 254枚+1,000,000株超過分 |
8,000株毎に1枚 | 8,000株毎に1枚 |
しかも、ANAの優待はこれだけではありません。
ANAグループ各社・提携ホテルの優待クーポン券が入った冊子を、1冊もらう事ができるのです。
この冊子に入っいるクーポンをまとめると、次のようなものがあります。
- ANAグループ各社の提携ホテルが10%以上割引
- ANAの国内ツアー、海外ツアーが、それぞれ7%割引
- 空港内売店・免税店でのお買い物が10%割引
- ゴルフが株主優待料金でプレー可能
ANAの株主優待はとてもお得だと人気があります。チケット屋さんなどに転売されていたりもするぐらいです。
交通手段で飛行機をよく使われる方や、定期的に飛行機で旅行に行くという方にとっては、非常にお得な株主優待ではないでしょうか。
注意点
「こんなにお得な優待があるのならすぐに株を買おう!」
と思った方、ちょっと待ってください。
どんなに優待が魅力的であっても、その企業の業績が悪かったり、株価が割高であったりするとどうでしょう。
業績が悪くなると、優待の内容が変更されてしまったり、最悪の場合には優待が廃止される可能性もあります。
また、株価が割高な時に買ってしまうと、最初の投資金額は多くなりますし、株価が下がると含み損を抱えたまま保有しなくてはならなくなります。
大切なのは優待がいかにお得かというだけではなく、
- その企業の財務状態や業績が良いか
- 株が割安かどうか
をきちんと調べて判断することが大事です。
優待の内容で銘柄を選ぶのは一つの方法ですが、あくまでも他の判断基準も合わせて銘柄を決定するようにしましょう。
まとめ
企業側も投資家に向けたIR活動やネットでの情報提供などを行い、株主優待をアピールしています。
企業側にとっても株主優待を充実させることでメリットがあるからです。
投資家がその企業に対して愛着を持ってくれると、長期保有してくれる株主が多くなります。
それが、その企業の株価の安定に繋がるのです。
インターネットなどで色々な会社の株主優待を調べてみると、自分に合った特典やサービスが見つかると思います。
ぜひお気に入りの企業の株主になって、お得な優待を手に入れてみましょう。
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