不動産の売却にかかる税金や確定申告などの手続きの流れ

不動産の売却では、多額のお金が動きます。そのため、今まで知らなかったような種類の税金がかかる可能性もあることをご存じでしょうか。

収入を得た人はそれを確定申告で税務署に通知し、収入の金額や内容に応じた税金を支払わなければなりません。

それは会社の給与でも、不動産を売却した代金でも同じことです。

こちらでは、実際にかかる可能性がある税金の種類や確定申告の手続きの流れなど、不動産を売却する前に知っておきたいマメ知識をご紹介していきます。

不動産売却で発生する税金の種類

  1. 譲渡所得税
  2. 住民税
  3. 仲介手数料に対する消費税
  4. 建物に対する消費税(業務用不動産の場合)

不動産売却にともなう税金の種類は、この3つです。このうち譲渡所得税と住民税は、売却によって利益が出なければかかりません。

売却によって出た利益を「譲渡所得」といい、それに対して譲渡所得税や住民税が課税されます。

不動産売却が成立した場合、その翌年2月16日から3月15日までの期間に所得税の確定申告を行わなければなりません。

期日が休日にあたる年は、月曜日まで繰り下げとなります。通常は確定申告を行わないサラリーマン(給与所得者)も、忘れずに申告手続きを行ってください。

土地、建物の譲渡所得がある場合、次の書類を作成して他の所得と一緒に確定申告をします。

  1. 確定申告書B
  2. 第三表および計算明細書等(分離課税用)

基本的に日本は事業所得や給与所得などの収入を合算し、その総額に対して課税金額を決める「総合課税制度」が採用されています。

しかし土地および建物を対象とした譲渡所得は、「分離課税」の対象です。確定申告の際は間違えないよう他の所得と区別して書類を作成し、課税金額を算出しましょう。

仲介手数料は不動産会社の仲介サービスに対する代金なので、消費税の課税対象となります。

一般の消費者が個人に対して不動産を売却する場合、代金そのものには消費税がかかりません。

一方売却対象が業務用不動産(賃貸用収益不動産や店舗など)の場合、例え売主が個人であっても、土地を除く建物部分に対してだけ消費税がかかります。

土地は消費するものではないので、いずれにしても消費税がかかりません。

買主は総額で購入を判断します。消費税は納税義務の免除制度もありますが、基本的に国に納めるお金なので、手もとに残る金額ではありません。

消費税の課税有無によって、売却時の受取金額が違ってくる可能性があることを知っておきましょう。

譲渡所得の計算方法

譲渡所得税の課税対象となる「譲渡所得」の金額は、次の算式で算出します。

譲渡所得=譲渡価格‐(取得費+売却費用)

課税譲渡所得=譲渡所得‐特別控除

この計算で得られた譲渡所得に対し、所得税(国税)と住民税(地方税)が課税されます。課税率は物件の所有期間によって大きく異なるので、売却時期を決める際は注意が必要です。

「取得費」には土地・建物を取得する際の代金だけでなく、購入手数料や設備費、改良費なども含まれます。

この代金からは、耐用年数と経過年数に応じた減価償却費を引きます。

「売却費用」には、売却時に支払う仲介手数料や印紙税といった諸費用が含まれます。

土地を売るための建物取り壊し費用や、貸家を売るための借家人に対する立ち退き料なども売却費用となるので、かかったお金はすべて記録して領収書を保管しておきましょう。

プロでも勘違いしがちな減価償却費

譲渡所得を算出する際に注目すべき点は、「減価償却費」です。減価償却費の計算は非常に複雑で、業務用・非業務用における耐用年数の違いなど、収益不動産を扱うプロでも勘違いしていることが多いといわれています。

土地は使っても減るものではありません。

住んでいれば多少土が流れたり石が欠けたりすることもあるでしょうが、法律上「土地は減らない普遍的なもの」と捉えられています。

そのため、土地に対する減価償却はありません。

しかし建物や設備にはそれぞれ耐用年数があり、使用期間に応じて価値が減っていきます。

そのため、実際に取得時にかかった金額から減価償却費を引いた金額が、取得費における代金として計上できる金額になるのです。減価償却費自体が見落としがちな項目なので、注意してください。

金額は次の式で算出します。

減価償却相当額(減価償却費)=取得価額(購入代金)×0.9×償却率×経過年数

建物には耐用年数が過ぎても最低限残る価値「残存価格」が設定されています。

残存価格率は、取得価額の10%です。そのため、償却率をかける前に購入代金に0.9をかけます。経過年数は、半年未満は切り捨てますが、半年以上は1年として計算してください。

建物の耐用年数は構造によって異なりますが、木造だと22年、鉄筋コンクリートだと47年に設定されています。

ただし、非業務用の場合は1.5倍で計算します。つまり自宅として使用する木造住宅の耐用年数は33年、鉄筋コンクリート住宅は70年になるわけです。

「知人に(有料で)貸していた」などという場合は賃貸なので、業務用建物となります。

自宅や子どもへの賃貸、別荘などは非業務用建物として耐用年数を適用します。

自分が住んでいた住宅を売る場合の控除

不動産の中でも、自分が住んでいたマイホーム(居住用財産)を売却した場合は譲渡所得から最高3000万円の特別控除が受けられます。

これを、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」といいます。

不動産の譲渡所得税率は所有期間によって異なりますが、この特別控除は所有期間に関係なく受けられます。

譲渡所得税はご紹介したとおり、売却金額ではなく譲渡所得に対してかけられる税金です。

マイホームを売却して3000万円以上の利益が出る場合はそれほどないので、この特例を受けられる場合で実際に課税される例はほとんどありません。

例として、特別控除を受けてなおかつ課税対象となる取引をあげてみましょう。ここでは計算が複雑となるので、仲介手数料などの諸費用を考慮しません。

対象物件:木造住宅(自宅)+敷地(購入から11年後に売却)

取得価格:4000万円+4000万円=6000万円

売却価格:4000万円+9000万円=1億3千万円

減価償却費=4000万円×0.9×0.031×11=約1228万円

譲渡所得=1億3千万-(4000万円-1228万円+4000万円)=6228万円

課税譲渡所得=6228万円‐3000万円=3228万円

架空の物件ですが、土地・建物を合わせて1億3千万円にもなるとは豪邸ですね!

この11年の間に、この住宅の周りでどんな劇的な変化があったのでしょうか。おそらく大規模な再開発が行われ、ずいぶんと便利になったのでしょう。

23区内であれば、30坪から40坪程度で1億円を超える土地も少なくありません。

3000万円の控除によって、課税金額は劇的に異なります。この特例の適用を受けるには、必ず確定申告をしなければなりません。次の2種類の書類を添え、申告書類を提出しましょう。

  1. 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]
  2. マイホームを売った日から2か月経過後に交付された除票住民票の写しまたは住民票の写し(売却した不動産を管轄する市区町村にて取得)

マイホーム売却の特例を受けるために

自分が住んでいた家と一緒に売るのであれば、その敷地や借地権などもマイホーム売却の特例の対象となります。

ただし、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売却が成立しない場合、この特例は受けられません。このほかに、次のような適用条件があります。

  • 建物を壊した場合は壊した日から譲渡契約締結日が1年以内で、締結日までに敷地をほかの用(貸駐車場など)に使っていないこと
  • 売却の前年および前々年にこの特例、「マイホームの買換えやマイホームの交換の特例」、「マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例」の適用を受けていないこと
  • 対象の家屋や敷地で「収用等の場合の特別控除」などほかの特例適用を受けていないこと
  • 災害で家屋が壊れた土地は、住まなくなった日から3年目(東日本大震災の場合は7年目)の12月31日までに売ること
  • 特別の関係(親子、夫婦、生計を一にする親族、内縁関係者、特殊関係法人など)がない相手に売っていること

この特例は効果が大きいので、適用を受けるために一時的に入居を考える人もいるかもしれません。

しかし、特例の適用だけを目的とした入居や別荘としての利用は、適用の対象外とされます。

どの程度の期間が判断基準となるのかは明記されていません。しかし、あまり短期間での転居は税務署から疑われる可能性があることを知っておきましょう。

所有期間で異なる課税率に注意!

不動産取引は、所有期間によって「短期譲渡所得」「長期譲渡所得」の2種類にわけられ、譲渡所得税と住民税の課税率が異なります。

課税率が高い短期譲渡所得となるのは、譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年以下の土地や建物です。

さらに売った年の1月1日の時点で所有期間が10年を超えるマイホームの売却では、「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」が受けられる可能性があります。

適用にはいくつかの条件があるので、可能性がある人は確認しておきましょう。軽減税率の特例を受ける場合は、特別控除の特例の書類に加え、売却した居住用家屋やその敷地の登記事項証明書を添えて確定申告を行います。

短期譲渡

長期譲渡

長期譲渡

(マイホームを売った時の軽減税率の特例)

所有期間

譲渡した年の11日現在で5年以下

譲渡した年の11日現在で5年を超える

譲渡した年の11日現在で10年を超える

所得税

30

15

課税長期譲渡所得金額(A)が

6千万円以下:10

6千万円超:(A6千万円)×15%+600万円

復興特別

所得税

所得税に対して2.1

住民税

9

5

5

合計課税率

39.63

20.315

6千万円以下の部分:15.21

6千万円超の部分:20.315

上記でご紹介した事例に当てはめて、課税額を計算してみましょう。

短期譲渡は5年、長期譲渡は6年、さらにご紹介した11年で物件を手放し、軽減税率の特例を受けられる場合の3つの事例を考えていきます。

11年後に売却した場合

長期譲渡所得税=3228万円×10.21%=約330万円

住民税=3228万円×5%=約161万円

合計課税額=約491万円

6年後に売却した場合

減価償却費=4000万円×0.9×0.031×6=約670万円

譲渡所得=1億3千万-(4000万円-670万円+4000万円)=5670万円

課税譲渡所得=5670万円‐3000万円=2670万円

長期譲渡所得税=2670万円×15.315%=約409万円

住民税=2670万円×5%=約134万円

合計課税額=約543万円

5年後に売却した場合(1月1日時点では所有期間が5年以下)

減価償却費=4000万円×0.9×0.031×5=558万円

譲渡所得=1億3千万-(4000万円-558万円+4000万円)=5558万円

課税譲渡所得=5558万円‐3000万円=2558万円

短期譲渡所得税=2558万円×30.63%=約784万円

住民税=2558万円×9%=約230万円

合計課税額=約1014万円

何年目に売却しても同じ価格で売れるなどということは、現実にはあり得ません。しかし、話を分かりやすくするために例では金額を揃えました。

この事例から、「短期譲渡」「長期譲渡」の違いがいかに大きいかおわかりいただけるはずです。物件の金額によっては、数百万の違いが生まれるわけです。

短期譲渡、長期譲渡は売買契約成立時の所有期間で判断されるわけではありません。

「所有期間5年で長期譲渡」という覚え方をしていると所有期間が足りず、倍近い短期譲渡所得の課税率が適用されることもあります。

やはりプロでも勘違いしていることが多い点なので、注意してください。

もちろんマイホームの特例が受けられない物件の場合は、さらに課税額が大きくなります。売却で利益が出そうな場合は、必ず事前に課税額のシミュレーションをしておきましょう。

譲渡損失が出た場合は

不動産の譲渡によって、利益が出る場合ばかりではありません。

実際には購入金額より売却金額が低くなり、譲渡損失が出る場合も多いでしょう。

住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が出た場合、「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」が受けられる可能性があります。

給与所得や事業所得といったほかの所得から、損失分を控除できる制度です。

適用にはいくつかの条件があるので、ご自分の例が当てはまるか税務署に相談するなどして確認してみてください。

この特例の適用を受ける際は、次の書類を添えて確定申告を行います。

  1. 「特定居住用財産の譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表)」
  2. 「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書(租税特別措置法第41条の5の2用)」
  3. 所有期間が5年超であることを証明する登記事項証明書や売買契約書の写しなど
  4. マイホームを売った日から2か月経過後に交付された除票住民票の写しまたは住民票の写し(売却した不動産を管轄する市区町村にて取得)
  5. 「譲渡資産に係る住宅借入金等の残高証明書」(売買契約日の前日のもの)

まとめ

税金の制度は複雑なので、迷うことも多いかもしれません。

しかしちょっとした売却時期の違いで税率が大きく変わることもあるので、ある程度の知識を身につけておくことは大切です。

今回は2016年8月時点の情報をご紹介しましたが、税制は頻繁に改正されています。実際の売却時には、その時点の法律をご確認ください。

各種特例の適用が受けられるのは、確定申告をした人だけです。

「わからないから」と放っておくと損をしてしまうので、忘れずに期限内に手続きを行ってください。