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事業用賃貸(貸店舗)のメリットや手続きの流れを解説

 

事業用賃貸経営は、昔から根強い人気の土地活用方法です。

ただし、事業向けの賃貸物件は、所有している建物の立地や形態によっていろいろなタイプがあり、適している業種もさまざまです。

条件や業種によって、メリットやデメリットも大きく異なる部分があります。

ここでは、さまざまな条件での事業用賃貸経営の特徴や、経営のポイントをまとめています。

幅広い分野だけに、戸惑うことも多いかと思いますが、しっかりと内容を理解して、最適な土地活用方法選択のための検討材料にしていただければと思います。

 

目次

事業用賃貸(貸店舗)経営のメリット

住居よりも家賃相場を高く設定できる

事業用賃貸とは、オフィスビルや商業ビルを建てて、事務所や店舗用に建物や部屋を貸出し、家賃収入を得る経営方法です。

一般的に事業用賃貸は住居用賃貸に比べ、家賃設定を高くできる特徴があります。

通常、アパートやマンションの1.5~2倍の賃料が相場です。

アパートやマンションの建築でコストが掛かるのは、各戸の内装・設備です。

なかでも水周りは特に費用がかさみます。

事業用ビルですと、この部分にこだわって力を入れる必要がありませんから、その分建築費用を抑えることが可能です。

また、借主のほとんどが法人であることから、ビジネスとして家賃交渉をしやすいというメリットもあります。

景気が上向いてくれば、よりこのメリットが増すと考えられます。

そういった意味でも、高利回りで収益性の高い土地活用方法といえます。

住居併用の場合、長期安定収入も見込める

事業用賃貸でも、1階に事務所や店舗、2階以上に住居を持つ住居併用の建物にする方法があります。

併用であれば、住居部分で安定収入を確保し、事務所や店舗部分で高収益を得ることが可能です。

これにより、空室が出た際の収益減をカバーできます。

また、住居併用にすることで、住宅用地として節税効果が高まることも魅力のひとつです。

ロードサイドのテナントであれば駅からの距離は関係ない

街の中心部にビルを建てる方法だけが、事業用賃貸ではありません。

郊外の交通量の多い幹線道路沿いに、店舗用の建物を建てるロードサイド店舗という方法もあります。

代表的なものにコンビニエンスストア、ファミリーレストラン、ホームセンター、スーパー、ガソリンスタンドなどが挙げられます。

いずれも、駐車場を併設して、クルマを利用する顧客をターゲットにするものですから、駅近くである必要はありません。

最近では、単独の出店よりも、スーパーやホームセンターなどのキーテナントがあり、その近くに複数のロードサイド店舗が集まっている「コンプレックス型」が増えています。

また、ロードサイド店舗は建物を建てずに、土地のみを貸すという方法も選択可能です。

借り主同士のトラブルが少ない

事業用賃貸では借主がほぼ法人になりますので、住居用賃貸で発生しがちな生活習慣の違いからくるトラブルが発生しにくいです。

TVの音やペットの鳴き声、ベランダでの喫煙による臭いや灰の隣近所への侵入、ゴミ出しのルール違反、駐輪場の乱れなど、管理する側でも対応が難しい問題を避けることができます。

用途変更のタイミングが決めやすい

事業用賃貸では「定期建物賃貸借(定期借家)契約」を交わすケースが多いです。

「定期建物賃貸借」とは、あらかじめ定められた契約期間を超えて、契約の更新がおこなわれない建物賃貸借のことです。

貸主が契約時に説明をおこない、公正証書等書面によって契約する場合に限り有効です。

正しい手続きを踏んで契約している限り、契約期間が満了すれば、その後の用途変更は自由にできますから、土地の運用計画が立てやすいといえます。

住居と比べて退去となる要因が多い

事業用賃貸は入居しているテナントの状況に経営が大きく影響を受けます。

景気が悪化すると会社の経営不振や事業縮小などで、賃料が安いビルヘ引っ越したり、事務所を閉鎖する会社が出てきます。

入っているテナントに人気店があれば、それをきっかけに、ほかの店舗も集客を延ばせる可能性がありますが、人気の店舗がなかったり、撤退したりしてしまえばその煽りをまともに受けることもあるでしょう。

建物やテナントの形態によっては、ワンフロア、複数フロアをまとめてひとつの会社に貸すこともありますから、その空室リスクは大きいといえます。

周辺の環境変化の影響を受けやすい

自身のビル内のテナントの問題だけでなく、周辺の環境変化にも影響を受けやすい面も考慮しなければなりません。

近隣に大型施設が建設され、顧客を一気に持っていかれてしまったというケースは、まさしくその典型的なパターンでしょう。

防犯、治安の悪化なども人々の足を遠のかせる要因になります。

ロードサイドの場合、駐車場を含めた広い土地が必要

メリットのところで、ロードサイド店舗での土地活用をご紹介しました。

ご説明したとおり、ロードサイド店舗はクルマでの利用が大前提ですから、駐車場スペースが確保できるだけの広い敷地が必要です。

また、ひとつのテナントのみに貸している場合は、そのテナントが撤退してしまうと、収益が完全にストップしてしまいます。

次のテナントが決まっても、建物が前のテナント用の構造になっている場合は、建物の改修費用が発生する可能性があります。

飲食店用の建物を建てると、設備などの初期費用がかかる

こちらもメリットのところで触れましたが、事務所用であれば内装や設備も簡易で済むため住居よりも初期費用が抑えらます。

しかし、厨房が必要な飲食店など一部の用途では設備費が高くなり初期費用が高額になる可能性があります。

事業用賃貸(貸店舗)経営に向いているタイプの人

立地条件の悪そうな土地を持っている

立地条件の悪そうな土地でも、その場所に適した業種を選べば、活路を見出すことができます。

駅から遠くても、幹線道路に近いのであればロードサイド店舗にできますし、広さがあれば変形土地でもゴルフ練習場や企業の倉庫にすることもできます。

賃貸住宅の供給が過剰になっている住宅地内であれば、クリニックや事務所を誘致してみるのもいいでしょう。

その土地のニーズをいかに読み取り、質のよいテナントを誘致できるかが、土地活用の成否に繋がります。

事務所+店舗、店舗+住居などの複合施設として多様な活用をしたい

事業用賃貸経営といっても、その形態はさまざまです。

いくつか例をご紹介しましょう。

・店舗+住宅:1Fを店舗にし、2F以上を賃貸住宅にするタイプです。

・事務所+住宅:1Fを事務所にし、2F以上を賃貸住宅にするタイプです。

・事務所+店舗:事務所と店舗が混在しているタイプです。1Fにカフェや美容室、2FにSOHO事務所といった使い方もできます。

・駐車場+空中店舗:1Fに駐車場、2F以上を店舗にするタイプです。

・連棟式多店舗:ひとつの建物に、複数の店舗が連なっているタイプです。

組み合わせ次第ではリスクヘッジも可能となるため、少ないリスクで土地活用をおこないたいひとには、複合施設としての活用が適しているといえます。

所得税・相続税対策をしたい

アパートやマンション経営と同様に、所得税や相続税の税金対策として活用することができます。

ただし、住宅用地としての利用がないと、固定資産税や都市計画税の減税対象にはなりません。

事業用地としてのみの利用の場合は、節税効果が低くなることをあらかじめ認識しておく必要があります。

(賃貸住宅との併用型であれば、固定資産税や都市計画税の減税対象となり得ます。)

所得税

給与など他の所得があれば、不動産所得と損益通算できます。

不動算所得が赤字になった場合、確定申告で給与所得と損益通算することで、税金が還付されます。

相続税

「小規模宅地等の特例」を適用することで、相続税評価額を減額することができます。

「小規模宅地等の特例」とは、一定の条件を満たせば、相続した土地の一部の評価額を減額できる制度です。

貸付事業用地の場合は、200m2を限度に50%減額されます。

また、ローンを組んで賃貸住宅を建てていた場合は、相続時に借入残があれば、その分を相続財産より債務控除することができます。

大型の土地・建物を所有している

ショッピングセンターやホームセンターのように、大型の土地や建物を求められる業種もあります。

大型の土地は駐車場スペースも十分に確保でき集客が見込めるため、そのような事業者にとっては魅力的な存在です。

店舗以外でも、大型物流施設や工場といった活用方法が考えられます。

事業用賃貸(貸店舗)土地活用で経営を始める手続きの流れ

事業計画をたててプランニングを行う

事業用賃貸経営の相談先としては、不動産会社、建設会社、土地活用コンサルティング会社など(以下企画会社と記載します)があります。

企画会社は相談内容、土地の立地条件、市場ニーズなどを鑑みて、どのような事業用賃貸を運営するのがよいか、家賃設定はどのぐらいが妥当かなど、事業計画、資金計画を立案します。

もちろん、いきなりひとつの会社のみに相談して決めてしまってはいけません。

複数の企画会社に相談をして、事業計画、資金計画などの提案を受け比較検討することが大切です。

融資についても、各社が提携している金融機関がありますので、相談するとよいでしょう。

間取り、設備、デザインなどの設計を決定

提案内容をよく吟味して、依頼する企画会社を決定します。

これ以降は、立地条件やターゲットになる業種、企画会社の業務内容によって、進め方はケースバイケースになります。

テナントを誘致して、契約交渉をおこない、契約がまとまってから、建物の間取り、設備、デザインなどの設計を決定して着工するケースや、

建物の建設と平行してテナントを募集するケースなどがあります。

不動産管理会社の決定

管理業務とひと口にいっても、建物の清掃・メンテナンス業務から、入居者の募集・家賃交渉・クレーム対応など運営に関わる業務まで幅広いものです。

企画会社では、トータルでサポートをおこなっているところもありますし、提携している管理会社を紹介してもらうことも可能です。

また、テナントの業務形態や契約内容によっては、建物の管理はテナント自身でおこなう場合もあります。

事業用賃貸物件と賃貸住宅では管理業務の内容が異なります。

管理会社にも得て不得手がありますので、企画会社の紹介を受けずに独自で探す場合は、そのあたりも注意して探すようにしてください。

まとめ

事業用賃貸経営は、借主が法人の場合がほとんどで、賃料を高く設定でき、収益性を期待できる分野です。

しかしそれだけに、要求されるレベルも高く、景気や周辺環境の変化にも影響されやすい、シビアな分野ともいえます。

事業用賃貸経営を成功させるには、所有している土地の特徴を十分に把握して、どういった業種をターゲットにするのがベストか見極めることが重要です。

そのためには、インターネットや書籍からはもちろん、セミナーや勉強会に積極的に参加して、情報収集に努めることも大切です。