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一括借上げは土地活用でどんなメリットがある?デメリットはないの?

 

土地活用・不動産活用を検討する中で、「一括借上げ」という方法を耳にしたことはありませんか?

聞いたことはあるけど、詳しい内容まではちょっとわからないという方もいらっしゃるかもしれませんね。

ここでは、一括借上げをすることで起きるメリット・デメリット、契約をする際に気をつけておきたいポイントについて詳しく解説していきます。

目次

一括借上げについての基本

一括借上げとは?

「一括借上げ」とは、不動産管理会社がオーナーの所有する物件を、第三者(入居者)に転貸することを目的としてまとめて借り上げる方法のことです。

不動産管理会社はオーナーと賃貸契約および「家賃保証契約」を結びます。

「家賃保証契約」とは、あらかじめ定めたルールに従って家賃収入から保証料(管理料)を差し引いた金額を、不動産管理会社がオーナーに支払うことを約束するものです。

家賃保証契約は主に「定額保証」が基本ですが、「定率方式」のような賃料収入が変動するタイプもあります。

「定額保証」とは、空室の有無に関わらず、あらかじめ決めた金額の支払いを保証するものです。

オーナーの賃料収入に変動はありません。

「定率方式」は、満室賃料からオーナーに支払う割合の上限と下限を決めておくものです。

例えば上限を90%、下限を70%と決めていた場合、オーナーは満室であれば90%の賃料収入を得られますが、入居率が下がってくればそれに合わせて70%を下限に賃料収入が減るという仕組みです。

比較的人気があり、満室の維持が期待できる物件に向いています。

不動産管理会社は入居者募集・契約・解約の手続き、建物の管理、入居者のトラブル対応などをおこないます。

契約内容にもよりますが、設備のメンテナンス、修理、建物の管理維持費など賃貸住宅の運営費用はオーナーが負担します。

サブリースと一括借上げは別のもの?

一括借上げとサブリースは同義に使われることが多いものです。

「一括借上げとは?」のところで、ご説明した内容も便宜上、一括借上げの部分とサブリースの部分をひと括りで説明しています。

しかし、厳密に言いますと、両者は別のものです。

不動産管理会社がオーナーと賃貸契約を結ぶところまでが「一括借上げ」、それ以降、オーナーに代わって、入居者へ貸し出すことが「サブリース」に該当します。

サブリースに対して、一括借上げをマスターリース、一括借上げをする会社を、サブリース会社と呼ぶこともあります。

一括借上げは、サブリースを目的におこなわれるもので、転貸方式ともいいます。

ちなみに、賃貸住宅の管理のみを請け負う会社も不動産管理会社と呼ばれます。

マンション管理会社とか管理代行会社といった方が、耳なじみがあるかもしれませんね。

オーナーから委託をうけて、事務管理業務、管理員業務、清掃業務、建物・設備管理業務を行います。

入居者募集業務はおこないませんので、それについては不動産仲介業者に依頼することになります。

サブリースの場合、入居者と賃貸契約を結ぶのはサブリース会社ですが、この場合は入居者はオーナーと賃貸契約を結びます。

一括借上げのメリットは?

空室・家賃滞納によるリスクが軽減される

家賃保証契約を結ぶことで、空室や家賃滞納のリスクを回避することができます。

特に定額保証の場合は、毎月の収入が決まっていますし、定率方式であっても収入がほとんど見込めないという状態にはなりません。

保証料というコストはかかりますが、安心です。

クレーム対応などの管理者としての手間がかからない

賃貸住宅の管理業務内容は多岐に渡り、なかなか大変なことです。

入居者募集、入居者審査、契約書作成、家賃回収、クレーム対応、入退去時の立ち会い、原状回復などがあります。

住戸数が増えれば、なおのこと手間がかかりますから、オーナー自らやることは困難です。

一括借上げであればサブリース会社が、その道のプロとして、ケースに応じてスムーズに対応してくれます。

確定申告での収支内訳の記載が簡易化

通常の賃貸住宅経営であれば、各入居者からの家賃、共益費、礼金、敷金などの収入、建物や設備修理費、退去後のクリーニング費などの経費を洗い出したり、減価償却費を計算したりと確定申告書の作成も面倒なものです。

一括借り上げの場合は、賃貸契約の相手がサブリース会社のみですから、かなりシンプルになります。

一括借上げのデメリットは?

見直しによる家賃減額請求

借り上げ期間を20~30年と長くしているサブリース会社は多いですが、家賃保証の契約内容はその間ずっと据え置きというところはありません。

契約内容にもよりますが、何年か毎に見直しがされ、保証賃料の減額請求がおこなわれる場合があります。

2年毎に見直しするとして、毎回1戸あたりの月額保証賃料を1,000円減額すると、10年後には月額5,000円、10戸あれば月額50,000円の減額です。

年間にすれば600,000の減額です。

これは相当の痛手ですね。

契約途中での中途解約

先ほどもご説明したとおり、契約期間は20~30年と長めです。

その間に、オーナーから中途解約の申し出があった場合、違約金が発生します。

おおむね家賃の6ヶ月分を支払う契約になっているところが多いようです。

それが用意できなくて、解約したくてもできなということもあり得ます。

サブリース終了後の引き継ぎ

サブリースの契約が終了後の引き継ぎにも不安はあります。

サブリース契約期間中は、オーナーが直接入居者に関わったり、管理業務をおこなったりすることはありません。

オーナーがサブリース会社から、業務を引き継ぐということは現実的ではなく、次のサブリース会社に引き継ぐということになるでしょう。

各々の会社が責任をもって業務をおこなってくれなければ、入居者の信頼を失いかねませんね。

サブリース会社の倒産

サブリース会社の倒産は、オーナーにも入居者にも多大な被害をもたらします。

オーナーは家賃が支払われないし、建物の管理もおこなわれない、入居者は敷金の返金を受けられない、部屋を出なければならなくなるかもしれないなどの問題が一気に噴出してくることになります。

特にオーナーにとっては、人生を狂わされてしまうような事態にもなりかねません。

また、基本的に賃貸住宅の運営は、サブリース会社に任せますから、オーナーは入居者の選定はできません。

サブリース会社が空室を避けるために、入居者の条件を緩くしてしまう場合があります。

知らぬ間に部屋を商用に使われたり、もともとの入居者に迷惑をかけてしまったりといった不都合が発生しないとも限りません。

確認しておくべき契約内容のポイント

一括借上げの家賃保証はとても魅力的なシステムですが、デメリットであげたように、注意しなければならない事柄も多くあります。

事実、家賃保証をめぐって多くのトラブルが発生しています。

この事態を国も重くみて、2016年9月に「賃貸住宅管理業者登録制度」が改正されました。

これによりサブリース会社に、契約締結前に貸主(オーナー)に保証賃料の変動などの重要事項の説明をおこなうことを義務付けました。

トラブルを回避するためには、オーナーも提示された契約内容をしっかり確認しなければなりません。

確認するべきポイントをいくつかご紹介します。

家賃保証

家賃は物件の立地条件や建物の状態、間取り、需要、周辺地域の相場などを鑑みて決められます。

オーナーに支払われる保証賃料も同様です。

保証賃料に法的な基準というものはなく、サブリース会社とオーナーの話し合いで決められるケースがほとんどです。

少なくともサブリース会社が提示してきた内容が、あまりに相場とかけ離れているようなことがないかは確認しましょう。

賃料改定

一括借上げのデメリットでご説明したように、一度サブリース契約をすれば、その契約内容が契約期間満了まで維持されるわけではありません。

見直しによる家賃減額請求について、どのような規定になっているかを確認しましょう。

年月とともに建物が劣化して、家賃を下げざるを得ないことは事実ですが、それは計画性をもっておこなわれる必要があります。

見直しをおこなった場合の収益の変化をシミュレーションして、資金計画に組み込んでください。

免責期間

免責期間とは、サブリース会社が家賃保証をおこなわなくてもよいとする期間です。

その期間は、空室があればその分の収入をオーナーは得ることができません。

入居者募集開始からの数ヶ月や退去後の数ヶ月を、免責期間に設定している場合があります。

免責期間の長さやタイミングによっては、サブリースをおこなう主目的である、空室リスクの回避ができなくなってしまいます。

特に退去後の免責期間が長すぎることがないか注意してください。

原状回復費・修繕費

退去後のハウスクリーニング、補修などの原状回復費や、定期的なメンテナンス、節目の年の規模の大きな修繕の費用はオーナーが負担する契約が多いです。

所有物件の維持費ですから、オーナーが負担することは、特別問題はないようにも思います。

この場合に気をつけるのは、施工業者はサービス会社指定の業者でなければならないと規定されているケースです。

費用の上乗せにより、原状回復費・修繕費が相場に比べて割高になる場合があります。

収支計画を確認して、原状回復費・修繕費の根拠を説明してもらうようにしましょう。

サブリース会社としては、新築物件の建設段階から関わることが理想です。

その場合は、建設も指定業者に依頼することになりますので、原状回復費・修繕費の場合と同様に割高になる場合があります。

家賃保証によって割高であっても、オーナーに還元できるというのが前提ですが、将来的には見直しによる家賃減額が予測できますので、さほど還元されないかもしれません。

慎重な判断が求められます。

解約条件

契約途中での中途解約は違約金が発生するとご説明しましたが、そもそもオーナーからの解約の申し出が受け入れられない場合があります。

オーナーとサブリース会社の間で賃貸契約が結ばれていますので、借主であるサブリース会社の方が法律上立場が有利です。

中途解約について特に取り決めがされていない場合は、オーナーは契約期間を守る義務があります。

まずは中途解約の条件が契約内容に明記されているかを確認してください。

さらにその条件が、サブリース会社に過剰に有利な条件でないことを確認します。

違約金の金額もそうですが、周辺環境の変化や景気の影響で、空室が多くなり採算がとれない可能性がある場合、サブリース会社から一方的に契約を解除することができるといった、オーナーに不利な条件になっていることがあります。

まとめ

本文でもご説明しましたが、一括借上げはビジネスモデルとしては、大変魅力的なものです。

しかし、家賃保証や解約条件などの件で、かなり深刻な問題を抱えており、世間の評価が厳しいということは否めません。

もちろん、健全なビジネスをおこなうサブリース会社があるのも事実です。

法改正もおこなわれたことですし、業界全体で軌道修正をし、イメージの回復に努めることが望まれます。

土地活用の方法のひとつとして一括借上げを検討されるのであれば、20~30年という長い契約期間を見据えて、信頼関係を築けるサービス会社を選ぶことが、何よりも重要であると肝に銘じてください。