年を重ねるごとに太りやすくなるのと同時に、若い頃よりも便秘になりやすいような……と加齢に伴って、嫌な体の変化に気付かされることが多くなりますよね。
特に便秘と体重の増加は、見た目のみならず健康にも関わりますから気になってしまうものです。
「便秘が続くと太りやすくなる」という話を耳にしたことはありませんか?
漠然と「確かに便秘になると太りやすくなりそう」とは思うものの、「どうして便秘が太りやすい原因となるのか」「なぜ便秘と太りやすさが関係しているのか」までは知らない人は少なくはないはずです。
こちらでは、意外に知られていない便秘と太りやすさの関係についてご紹介します。
どうして便秘が太る原因になるのか、便秘を放っておくとどのような不調が生じるのかなどの「便秘が体に及ぼす悪影響」をきちんと知ったうえで効果的に便秘を改善・予防しましょう。
最後には便秘改善に必要な習慣をご紹介しますので、体重の増加のみならず便秘に悩まされている人は是非参考になさってくださいね。
便秘が続くと太る理由
便秘の状態が続くと排出されるはずだった便が腸内に溜まり、ポッコリお腹になってしまいますよね。
腸内に溜まった便のせいで太るような気がしますが、決して溜まった便だけで太るわけではありません。
便秘によって生じる「消化吸収の効率が落ちる」「新陳代謝の低下から脂肪がつきやすくなる」「善玉菌の働きが得られにくくなる」といった体の変化が、太りやすい原因になるのです。
消化吸収の効率が落ちる
便秘の状態が続き腸内に便が溜まると、胃腸の機能が低下して消化吸収が正常に行われなくなります。
これは、「腸内の便がこれ以上溜まらないように」と胃腸がセーブしていることに加えて、溜まった便が過剰に発酵して生じた有毒なガスや毒素が胃腸の機能に悪影響を及ぼしているからです。
確かに消化吸収のスピードが弱まれば、長い時間をかける分だけ食べ物からより多くの栄養素を吸収することができるようになります。
しかし、ゆっくりと時間をかけて消化吸収を行うがために、普段なら吸収されないはずの糖分や脂肪分までもが必要以上に吸収されてしまいます。
つまり、便秘が続いている人・そうでない人と比較した場合には、同じものを同じだけ食べたとしても便秘の人の方がカロリーを多く吸収してしまって太りやすくなるのです。
代謝の低下から脂肪がつきやすくなる
私達が意識しなくても体温を一定に保ったり食べ物の消化吸収を行ったりと、「内臓が生命維持に欠かせない働きをする際にエネルギーを消費すること」を「代謝」といいます。
体を積極的に動かすときにも当然エネルギーは消費されますが、安静にしているときにもこの代謝によって多くのエネルギーが消費されています。
何もしない時に消費されるエネルギー量が多ければ多いほど運動時の脂肪燃焼効果は高まりますし、日常生活におけるエネルギー消費量も増えて「太りにくい体質」となります。
しかし、便秘から消化吸収をはじめとした内臓の様々な機能が弱まっていれば、それだけ内臓が消費するエネルギー量が減少する=代謝が低下してしまいます。
加えて、便から生じた有毒なガスや老廃物が腸壁から血管へ吸収されて全身に巡っていくと、血行不良やむくみが生じてますます代謝が低下します。
普段の生活の中で消費するエネルギー量が減少すればするほど脂肪が体につきやすくなりますし、運動時に燃やせられる脂肪量も減少します。
つまり、代謝が低下すると「太りやすく痩せにくい」という非常に嫌な体質に陥ってしまうことに……。
さらには脂肪が増えると腸の働きが低下することもあり、「便秘から内臓機能が低下して太りやすくなり、太って増えた脂肪が腸の働きを低下させ、腸の機能が低下してさらに便秘に……」という悪循環に陥る恐れも十分に考えられるのです。
善玉菌の働きが得られにくくなる
常在菌として腸内に存在する善玉菌は、悪玉菌の働きを抑制したりその数を減らしたりと腸内環境を整える作用があります。
こうした便秘の改善には欠かせない働きを持つ善玉菌には、「血中コレステロール値を低下させる」「腸の動きを活発にする」「免疫機能に必要なビタミンB群を作る」などの健康を維持しながらコレステロールや脂肪を増やさないようにする嬉しい働きがあります。
しかし、便秘によって腸内に便が溜まった状態が続くと、嬉しい作用がたくさんある善玉菌が減少するとともに悪玉菌の数がどんどん増加していきます。
腸内の悪玉菌が増加すると善玉菌がもたらす嬉しい作用が得られないどころか、腸内環境の悪化によってますます便秘のリスクが高まります。
特に悪玉菌が増加すると腸内で行われる栄養素の吸収効率が非常に悪くなり、からだ全体での新陳代謝が低下してしまいます。
つまり、悪玉菌の増加によって便秘のリスクが増えるのみならず、全身で行われる代謝も低下するために痩せにくく太りやすい体質へと変化するのです。
放置すると?
便秘の状態が続くと様々な悪影響から太りやすくなります。
「太りやすくなるだけでしょ」と軽んじてはいけません。
便秘を放置すると嫌な症状に繋がるほか、思いもよらない病気のリスクを高めてしまいますよ。
口臭や体臭が強くなる
「便秘と口臭や体臭とがどうして関係するの?」と思われるかもしれません。
しかし、便秘から生じた有害なガスが腸から全身に巡るからこそ、思わぬところからきつい臭いがするようになるのです。
便秘から便が腸内に留まる時間が長くなると、便が過剰に発酵されて有害なガスが発生したり便を餌にして悪玉菌が増殖したりします。
便秘が続くと不快なお腹の張りを感じるようになるのは、腸内に溜まった便に加えて便から生じた有害なガスが腸内に充満しているからです。
腸内で発生した有害なガスを、おならとしてどんどん放出すればお腹の張りもマシになります。
しかし、おならができずに我慢をずっと続けていると、行き場を失ったガスが腸管から再吸収されて血液を介して全身に巡って毛穴や口から外へと出ます。
便秘の状態が続いたときのおならが臭いように、全身を巡るガスもまた悪臭を放ちます。
臭うガスが口や毛穴から排出されるのですから、口臭や体臭が強くなってしまうのも自然なことと言えますね。
冷え性、むくみの原因に
腸内の便から発生し、腸壁から血管を介して全身に巡る有害なガスは、口臭や体臭の原因となります。
毛穴や口から嫌な臭いとして放出されない限り、有毒なガスは再吸収された血液中に溶け込んでいて全身を巡っています。
有害なガスが溶け込んだ血液は汚れてドロドロの状態になっていますから、普段の血行状態よりも流れが悪くなっています。
そもそも血液は「全身のありとあらゆる細胞が活動するために必要な栄養素や酸素を運搬する」「細胞が生み出した老廃物を受け取って体の外に排出する」という極めて重要な役割を担っています。
血流が悪くなれば体の隅々まで栄養素や酸素が十分に行き渡らなくなり、熱をうまく生み出せずに冷え性が引き起こされます。
そのうえ血行不良に陥ると「老廃物を受け取って体の外に排出する」という働きが正常に行われなくなり、体内の老廃物や不要な水分がどんどん蓄積されてむくみの原因になります。
便秘の状態が続いた体内では、腸から再吸収された有毒なガスによって血行状態が悪くなっています。
ただでさえ血行が悪くなっているところに冷え性やむくみが生じれば、一層血行が悪くなってさらに酷い冷え性やむくみに繋がるという厄介な悪循環が引き起こされかねませんよ。
痔になる可能性
悩まされているものの人になかなか相談できなかったり、病院への受診がためらわれたりする病気として挙げられるのが痔です。
痔が生じる原因になるのが、水分を失って固くなった便です。
固くなった便を無理に出そうとすると、肛門が固い便に耐えきれずに一部が切れて切れ痔が生じるのですね。
便は本来水分を多く含みスムーズに排出できる状態ですが、便秘によって腸内に長い間とどまっていると水分が失われて固くなります。
つまり、固くなった便が痔の原因となるのですから、便秘が生じるたびに痔が再発するリスクが高まるのです。
痔は悪化すると手術による治療が必要となる恐ろしい病気ですから、早期発見早期治療のみならず根本的な原因である便秘の解消による再発の防止に努めなければなりませんよ。
がんの原因
腸内に溜まった便が過剰に発酵して有害なガスが発生するのは先述の通りです。
この有害なガスの中にはアンモニアや硫化水素に加えて、発ガン物質や発ガン促進物質といったガンのリスクを高める有害物質が含まれていますから注意が必要です。
食生活の欧米化によって近年では大腸ガンを発症する人が増えていますが、その背景には便秘が原因となって生じる発がん性物質が大きく関係しているのです。
特にp-クレゾール(パラグレゾール)という発ガン性物質がたくさん発生すると、腸内でがん細胞が発生するリスクが高まります。
便秘がガンの原因となるのですから、たかが便秘と侮っていてはいけませんね。
便秘改善に必要なのは?
太りやすくなる他にも体に様々な不調をもたらし、時にはガンの原因となる便秘は可能な限り改善・予防しましょう。
それに、便秘それ自体からも「出したいのに出ない」「お腹の張りが辛い」と不快な症状に見舞われますし、できるだけ早く解消したいですよね。
最後に、便秘改善に必要な食べ物や習慣をご紹介します。
食物繊維
便秘の解消に優れた効果を発揮することで知られる食物繊維には、大きく分けて「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」の2種類が存在します。
1.不溶性食物繊維とは
まず、不溶性食物繊維は水に溶けない食物繊維です。
腸内に届くと水分を吸収して膨張する性質から便の量を増やし、増えた便のかさから腸を刺激して蠕動運動を促進する働きがあります。
レンコン・ゴボウ・サツマイモなどの根菜類、玄米・こんにゃくなどの消化しにくい食品に多く含まれています。
2.水溶性食物繊維とは
一方、水溶性食物繊維は水に溶ける食物繊維です。
腸内で水分を吸収するとゲル状になる働きから、便の水分量を増やして柔らかくする作用があります。
また、善玉菌の餌となってその数を増やす作用も期待できます。
納豆や海藻類などのネバネバ・ドロドロとした食品に多く含まれていますよ。
3.まずは、水溶性食物繊維を多く摂取して便秘を解消
不溶性食物繊維と水溶性食物繊維とは異なる働きから便秘の解消に役立ちます。
便秘に悩まれている人の場合には、まずは水溶性食物繊維を積極的に摂るところから始めてくださいね。
水分を吸収して膨張する不溶性食物繊維を摂りすぎてしまうと腸内の水分が過剰に吸収されて便が固くなり、かえって便秘が悪化しかねないからです。
水溶性食物繊維でスムーズな排便が行えるようになったら、理想的な摂取バランスとされる「不溶性食物繊維:水溶性食物繊維=2:1」の割合で摂取するようにしましょう。
とは言え、それぞれの食物繊維の含有量を厳密に計算する必要はありません。
不溶性食物繊維を摂取する場合には、海藻類や納豆を意識的に補うようにすれば必然的にバランスがとれるようになりますよ。
不溶性食物繊維と水溶性食物繊維とをバランス良く摂取するためにも、様々な食品からまんべんなく摂取するように心掛けたいですね。
腸内環境を整える
腸内環境を整えるには、何と言っても食品から善玉菌を摂取して腸内の善玉菌の数を増やすというアプローチが欠かせません。
腸内の善玉菌を増やすにあたり、乳酸菌が豊富に含まれているヨーグルト、納豆・味噌・ぬか漬けなどの発酵食品を積極的に毎日の生活に取り入れましょう。
乳酸菌は腸内に届くと善玉菌として作用します。
言い方を変えると、乳酸菌は腸内に生きて届かなければ善玉菌としての働きを発揮しないのです。
したがって、便秘解消のためにヨーグルトなどを選ぶ際には、プロバイオティクス(生きて腸まで届く乳酸菌)であるものにしましょう。
また、食品から数を増やした善玉菌は腸内にずっと定着することはなく、排便ごとにその数は減少してしまいますから継続的に摂取する必要があります。
加えて、オリゴ糖は善玉菌の餌となってその数を増やす働きがあるので、ヨーグルトをはじめとした食品を口にする際には同時に摂取して相乗効果を得ましょう。
オリゴ糖は砂糖の半分以下のカロリー量なので、カロリーオフに繋がるのも嬉しい点です。
しかし、オリゴ糖から得られる整腸作用はとても高いため、過剰に摂取すると下痢に繋がりかねません。オリゴ糖の製品に記載されている摂取適正量を守りながら、賢く便秘解消に役立ててください。
運動
便を出すにあたって大きく使う腹筋が弱くなっていると、便を押し出す力も比例して減少します。
裏を返せば、腹筋を強くすれば便秘の解消に大変役立つのです。
「腹筋を鍛える」と言っても「上体起こし」のような運動でなければ腹筋を鍛えられないというものではありません。
軽いウォーキングでも腹筋を鍛えられますし、全身運動ですから血行促進になります。
それに、全身を動かすことでも腸に刺激を与えられますから、ウォーキング自体が便秘解消に優れた効果を発揮します。
エスカレーターやエレベーターを使用するところをあえて階段を使うようにしたり、少しの距離の用事は徒歩で済ませるようにしたり、毎日の生活の中で少しずつ歩くことを意識するだけでも十分な運動となりますよ。
便秘の改善・予防の習慣として運動を続けるためにも、決して無理のない範囲で行うようにしてくださいね。
便秘対策でいいことだらけ!
「消化吸収の効率が落ちる」「新陳代謝の低下から脂肪がつきやすくなる」「善玉菌の働きが得られにくくなる」といった全身の不調に繋がる便秘だからこそ、太りやすい原因となるのですね。
「太りやすくなる」だけでも大変嫌な体の変化ではありますが、体臭・口臭がキツくなったり冷え性やむくみに繋がったり、時にはガンの原因になったりと時には命の危険にも関わる不調も引き起こされます。
毎日を健やかに美しく過ごしていくためには、様々な悪影響を全身に及ぼす便秘を改善・予防することが大切です。
特に便は口にしたものから形成されますから、食事による解消方法では効率良く便秘を改善できますよ。
また、毎日の生活の中で少しずつ運動の習慣を取り入れて、排便に必要な腹筋も強くしていきたいですね。