日常的にかかる病気の中でも特に嫌なのが下痢だと思います。
大抵は命に別条がないにもかかわらず、便意のせいで生活に支障が出てしまう。
どうして、私たちはお腹を下してしまうのでしょうか?
そんな疑問にお答えすべく、今回は下痢が起こる理由とその対処法についてご紹介いたします。
下痢とは?
そもそも、下痢ってどんな症状のことなのか?一言でまとめるならば「水のような便が出るもの」と説明できます。
私たちの便は死んだ細胞と腸内細菌、そして水分でできているのですが、健康な人の便でも大体60~70%ほどが水分です。
量にしておよそ90mlほどです。
ところが下痢になってしまうと、便の90%以上が水分で、量で言えば200mlあたりになります。
そのため、下痢の時に排泄される便は最も軽い状態でも軟便、基本的には泥状の便か水様便が出ます。
下痢は主に2種類
下痢に症状はいろいろありますが、基本的にはすぐに治る急性の下痢と、長く続く慢性の下痢があります。
急性の下痢
急性の下痢は「患っている時には苦しいけどすぐに治る」もので、下痢になると1日に数回はトイレに行かないと耐えられません。
ウイルスや食あたりといった外的要因を原因とする下痢は基本的に急性の下痢です。
急性の下痢がもつ最大の特徴は「原因を除去すれば改善する」という分かりやすさです。
慢性の下痢
もし、下痢が3週間以上続くようなら慢性の下痢を疑うべきですし、1か月以上下痢が続くのであれば間違いなく慢性的な下痢です。
こちらは「あまり症状が強くない代わりに長く続く」もので、下痢になりやすい体質が問題です。
その原因としては、慢性的なストレスによって腸の働きが乱れていること、腸内細菌の乱れによって腸がダメージを憂げていることなどが考えられます。
慢性の下痢は生活習慣の見直しで徐々に解決されていきます。
下痢のメカニズム
下痢のメカニズムを簡単に説明すると「何らかの理由で便の水分が増える・または減らない」ことです。
特に下痢に関わるのは大腸の部分。
大腸は消化したものが便になったあと、そこから水分を再吸収することで固さを調整します。
逆に、腸から水分を分泌することで便の流れを良くする作用もあります。
ところが、このような理由で水分調節がうまくいかないと下痢になってしまうわけです。
浸透圧性下痢
腸に浸透圧の高いものが流れると、浸透圧を一定にするために便から水分を吸収することができません。
浸透圧とは「液体の濃さを均一にする力」でナメクジに塩をかけると水分が出てくるのと同じです。
糖分や塩分、添加物の多い食べ物に水分は移動するので生活による下痢のほとんどは、これに分類されます。
分泌性下痢
ウイルスや細菌が悪さをすることによって腸からの分泌液が増えます。
これは、毒素の影響や排泄を促進することが理由と考えられます。
そのため、分泌性下痢はまさに水のような下痢が大量に出ます。
代表的なのはノロウイルス。ノロウイルスの症状は下痢と嘔吐が知られていますが、どちらも体外にウイルスを出すためです。
この下痢を患った人はとにかく水分とミネラル補給を怠らないこと。
周りの人は飛沫感染に巻き込まれないことが大切です。
菌によって消毒法も異なるのでしっかり調べたうえでの行動が二次被害を防ぎます。
滲出性下痢
浸出性下痢は、腸が潰瘍や出血なのダメージを受けた時に、血液や粘液が排泄されるものです。
もちろん、普通の下痢と混ざって排泄されるので便は赤く粘り気があります。
細菌が関わっている可能性も高いのですぐに病院へ行きましょう。
腸管運動異常の下痢
腸が過活動を起こすと、便から水分を吸収しきれずに軟便、水様便のまま出てきてしまいます。
過敏性腸症候群もこれに当たります。
逆に、腸の活動が弱っても水分を吸収できずに下痢を引き起こします。
冷え性や細菌バランスの乱れなどが原因となります。
下痢の原因
では、下痢を引き起こす原因としてどんなものが挙げられるのかを見ていきましょう。
常識として知っているものにも意外と見落としているポイントがあるかもしれません。
暴飲暴食
下痢になる原因と言えば暴飲暴食です。
特に甘いものや脂っこいものを食べた時に下痢を患いやすいと思います。
これは、甘いものは浸透圧が高く水分吸収を妨げるから、脂っこいものは消化が悪く胃腸に負担をかけるからです。
他には添加物やアルコールも胃腸に負担をかけてしまいます。
もちろん、単純な食べ過ぎが消化不良を引き起こすことは言うまでもありません。冷たいものもやめた方がいいです。
牛乳を飲んだ
牛乳を飲むとお腹がごろごろすると言う人は意外といます。
これは、乳糖不対症という牛乳に含まれる乳糖(ラクトース)を分解できない体質だからです。
乳糖はショ糖と同じく浸透圧性下痢の原因です。
人工甘味料
お菓子に入っている人工甘味料は添加物の中でも下痢との関連性が高いものです。
それなら、市販の駄菓子や甘いジュースを飲まなければよいと思われますが、意外と見落としがちなのがガムです。
歯を良くする成分であるキシリトールは人工甘味料だと言うことをご存知ですか?
実は、ガムの説明を良く見ると食べ過ぎでお腹が緩くなると書かれているんですよ。
また、人工甘味料は低カロリーな食べ物に砂糖代わりに使われていることが多いです。
そのため「ゼロカロリー」という表記は必ずしも健康的と言えないわけです。
ストレス
ストレスは細胞や神経にダメージを与えるため、腸だけでなくあらゆる臓器に悪影響を及ぼします。
特に、ストレスが原因で起こる下痢として「過敏性腸症候群」が挙げられます。
特に緊張でお腹が緩くなる人は下痢止めを活用することも一つの手と言えます。
アレルギーのある食べ物
アレルギー反応とはそもそもアレルギー物質を追い出そうと体が過剰反応を起こすものです。
つまり、アレルギーのある食べ物に対しても早く体外に出そうと働くので下痢になるわけです。
アルコールの摂りすぎ
アルコールは腸にダメージを与えるため、腸の働きが弱くなり下痢を引き起こします。
また、水分を大量に摂ることも下痢の原因と言えます。また、胆汁もうまく生成できなくなります。
薬
薬の中には下痢を引き起こす副作用を持つものがあります。
それは腸の働きを弱めるっことや悪い細菌と一緒に善玉菌を殺してしまうことなどが理由となります。
ただし「だから医薬品はいらない」というのは極端です。
下痢の時の対処法
下痢を治す方法は「下痢を引き起こすものを出しきる」か「下痢をしづらい体質を作る」かの二つです。
下痢を引き起こすものは食べ物か細菌・ウイルスなので、一時的な症状になりやすいです。
基本的には泥のような下痢や脂肪便が出る場合は食べ物が原因の下痢で、水のような便が止まらなくなる時はウイルスや細菌を追い出すための下痢と考えられます。
体質の面では腸内の善玉菌を増やすことがおすすめです。
善玉菌は腸を助ける物質を出すほか悪玉菌の活動を抑えます。
まとめ
下痢になる原因は、普段の生活にあります。
ウイルスの場合であっても空気感染することはまずないので感染源を避けるよう意識してください。
体質改善を考えるのは慢性下痢である3週間を超えた時です。
参考文献 アステラス
参考文献 日本消化器病学会
参考文献 症候別看護生理学
