牛乳を飲むとお腹がごろごろすると言う人は意外にいますよね。
給食のときに牛乳が飲めずに困っていた人も少なくないはずです。
今回は牛乳を飲むとどうして下痢になるのか、乳糖不耐症とはいったいどんな病気なのか。
そして乳糖不耐症を普段の生活で克服することはできるのかといったことを紹介します。
乳糖不耐症ってどんな症状?
牛乳を飲むとお腹がごろごろしてしまう、下痢になってしまう理由は乳糖不耐症にあると考えられます。
乳糖不耐症の人が牛乳を飲むと腸の中で牛乳に含まれている乳糖という成分が分解できないことで下痢になってしまいます。
乳糖は糖質のひとつなのですが、糖質には水分を保持する、または引き寄せる力があります。
例えば砂糖に水を垂らすと吸い込みます。この性質のことを浸透圧といいます。水は浸透圧の低い場所から浸透圧の高い場所に流れて全体で同じ濃度を保とうとします。
糖分が腸にとどまると便から水分を吸収できずに下痢として排泄されてしまうわけです。
ちなみに、正常な人は乳糖が分解され、小腸で吸収されます。
ちなみに、牛乳でお腹を壊す原因としては単純な飲み過ぎや、冷たい牛乳を飲んだこと、または乳脂肪の影響も考えられるのでまずは1日1杯程度に抑えてみましょう。
それでもお腹がごろごろするなら乳糖不耐症が疑われます。
一応、乳糖不耐症の人でも100ml程度の牛乳は飲むことができるようです。
牛乳を発酵させたヨーグルトやチーズは牛乳より乳糖が減るので「牛乳だけ飲めない」という人も珍しくないようです。
なぜ乳糖不耐症になるの?
乳糖不耐症を厳密に説明するなら「ラクターゼ」と呼ばれる酵素が少ない状態を表すので病気というよりは体質の問題と言えるかもしれません。
なお、乳糖はラクトースといいます。
ラクターゼは腸内で乳糖をブドウ糖とガラクトースに分解します。
ガラクトースは中枢神経を作るうえで役立つ成分で、ブドウ糖は言うに及ばずエネルギー源となります。
ところで、糖分が腸にとどまると浸透圧性下痢という下痢になってしまうのですが、なぜブドウ糖が下痢を引き起こさないのか?
それは、ラクターゼが小腸にあるからです。
そのため、ブドウ糖も小腸で吸収されます。
便の水分吸収に関わるのはあくまで大腸なので大腸にたどり着く前に糖分を吸収できれば問題ないわけです。
かつては牛乳が飲めない人も好き嫌いの問題で片づけられていました、それは乳糖不耐症についての研究が進んでいなかったためと考えられます。
どうしても下痢になってしまう場合は病院で調べてもらいましょう。
病院での検査は呼気や便から行いますが、それ以外に3~4週間一切の乳製品を取らないことも検査として有力です。
乳製品のない食生活で下痢にならないようなら乳糖不耐症が疑われます。
乳糖不耐症の原因としては加齢と疾病、遺伝が考えられます。
大人になるにつれて乳糖を分解する必要がなくなるため自然にラクターゼが減っていきます。
また、疾病でラクターゼが減ることもあります。
よって、牛乳を飲めない子供は先天的に乳糖が足りないことが考えられるわけです。
ところで、牛乳がよくない理由として「人間に良くないものを飲んでいる」とか「牛乳には成長ホルモンが入っている」という言説もネットに飛び交っていますがそんなことはありません。
牛乳には成長ホルモンは入っていませんし、「本来は子牛が飲むもの」という批判についても人間が食べるために作られたものがこの世にない以上ナンセンスという他ありません。
乳糖不耐症を克服したい場合は?
乳糖不耐症はラクターゼが少ないことが原因なので、ラクターゼを増やすことで克服が可能です。
克服しない場合でも乳糖の入っているものを避ければ解決します。
乳糖の入っているものは乳製品だけではないので成分表示はしっかり確認しましょう。
例えばサラダドレッシングやシリアル、ポタージュやそのた添加物として乳糖が使われている場合があります。
乳製品を全くとってはいけないわけではないので、どこまで大丈夫なのかを試しながら乳糖の入ったものを食べてみるのが賢明です。
乳糖不耐症の人はおおよそ100mlまでの牛乳を問題なく飲むことができます
では、乳糖不耐症克服のためにどんな方法があるのでしょうか?
乳酸菌を摂取する
ラクターゼは酵素なので、必ず酵素を出すための物体がいます。
その正体はなんと乳酸菌です。
実は、ヨーグルトやチーズの乳糖が減るのも乳酸菌がラクターゼを出すことが理由だったのです。
なので、普段から乳酸菌をとり続けると乳糖を分解しやすくなります。
乳酸菌が入っているものと言えばヨーグルトですが、乳糖不耐症の度合いによってはヨーグルトを食べるよりも漬物などの植物性乳酸菌をとることや乳酸菌を配合したサプリメントを摂ることの方がおすすめできるかもしれません。
あくまで、乳糖不耐症は乳糖を分解できない体質なので乳酸菌をとって下痢になることはあり得ません。
乳酸菌を摂取するときは毎日続けることが大切です。
それは腸内細菌の比率が変わるまでの時間がかかるからです。
たとえ1度乳酸菌を取り入れてもそのあと何もしなければ乳酸菌は定着しません。
これは善玉菌一般に言えることで、善玉菌は絶えず増えて減ってを繰り返しているので、安定するまでは生きて腸に届く菌を届けるか、善玉菌のエサになるもの(善玉菌の死がいやオリゴ糖など)を食べ続けることが必要です。
この後紹介する方法についても毎日行うことを忘れないようにしてください。
最もやってはいけないのは面倒だからと数日分を一度に摂ることです。
数日分の乳酸菌を取ったところで腸には定着しませんし、すぐに便として流れてきます。
毎日牛乳を飲む
あえて毎日牛乳を飲むと言うのも有力な方法です。
牛乳を飲んでお腹がごろごろは確かにいますが、それでも7割には満たないはずです。
理由としては、後発的にラクターゼが増えたことが考えられますが、その陰には牛乳を日常的に飲む生活があると考えられます。
牛乳を飲み続けることでラクターゼが活発になるため乳酸菌の数が増えていき、最終的には牛乳で下痢がしづらくなるという可能性があります。
ただ、牛乳を飲めなくて悩んでいる人が牛乳を飲むことはそれなりのリスクがあると思います。
そのため、乳酸菌そのものを取り入れた方が下痢はしづらいでしょう。
チーズなど発酵食品をとる
乳酸菌は発酵食品に入っています。
乳製品であるチーズはもちろん、ヨーグルトだって発酵食品です。
また、ぬか漬けなどにも植物性の乳酸菌が入っています。
発酵食品にはその食品に常在する善玉菌と、善玉菌が出す健康に効果がある成分が含まれているので乳糖不耐症以外の腸の悩みにもお勧めです。
ただし、チーズは高カロリー高脂肪なので食べ過ぎに注意しましょう。
豆乳やアカディで代用する
牛乳に抵抗があり、避けたい場合は豆乳がおすすめです。
豆乳はタンパク質やイソフラボンが豊富に含まれていることから健康に良い飲み物と言われていますが、大豆アレルギーやイソフラボンの過剰摂取の注意が必要です。
また、アカディという乳糖を分解済みの牛乳も乳糖不耐症に有効です。
少しずつ体を慣らそう!
乳糖の分解に関わるラクターゼは乳酸菌をとることで増やすことができます。
牛乳を無理に飲む必要はありませんが、乳糖を受け入れられることで食べられる食事はかなり広がります。
参考文献 メルクマニュアル 医学百科 家庭版
参考文献 国際酪農連盟日本国内委員会
