「更年期」という言葉を耳にしても「親の世代のことでしょ?」と思っていた女性も、40歳が近づく頃から「いつ頃更年期が始まるの?」と不安になるのではないでしょうか。
40代といえば、男性もそうですが女性も人生の中でもっとも充実した日々を送っている時期ですよね。
多くの人は働き盛りで、育児は一段落したとはいえまだ子どもは独立していないという頃でしょう。
さて、そんな「更年期」の時期はいったいいつからいつまでなのでしょうか。
日本産婦人科学会などの情報を元にご紹介していきます。
この記事の目次
日本人の平均では45歳~55歳が更年期です
日本産婦人科学会によると、日本人女性の更年期は平均すると45歳~55歳の10年間を指します。
更年期とは女性の閉経の前後5年間のことです。
日本人女性の閉経平均が50歳なので、45歳~55歳が更年期といわれるのですね。
「ええっ!私、もう更年期だったの?」という声が聞こえてきそうですね。
閉経を迎えていなくて更年期特有の不快な症状がなければ、まったく今まで通りの生活をしているはずですから「更年期」と言われてもピンとこないと思います。
実は、ピンとこない人はそのまま健康的な生活を続けてもらうことがもっとも良い更年期障害の予防法と言えるのです。
「そろそろ更年期かも」「この汗は更年期のせい?」「この頭痛は更年期が原因?」などと考えることでよけいにストレスが溜まり、さらに更年期の不快な症状を悪化させてしまうからです。
閉経の仕組みをおさらいしましょう
閉経の仕組みは小中高校での保健体育で学んだのですが覚えているでしょうか。
多くの女性は「なんとなく…」という感じではないでしょうか。
ここで一度簡単におさらいしておきましょう。
わかりやすくするために詳細は省いてあります。
- 女性は一生分の卵子を体内に持って生まれてくる
- 卵子は卵胞に包まれて卵巣に蓄えられている
- 思春期に初経があり、月経の周期が落ちついてくる頃から排卵が始まる
- 排卵は月経初日から次の月経までの間に起こる
- 卵は卵巣から卵管を通って子宮へと到達する
- 卵子が受精して受精卵となり着床すると妊娠となる
- 受精しなかった卵子は自然と体外へ排出される
こうしたことを繰り返して女性は思春期から成熟期へと成長していきます。
そして体内に蓄えていた卵子がなくなったとき、女性は閉経を迎えます。
つまり生殖能力がなくなったときが閉経なのです。
卵子を包む卵胞の元、原始卵胞のおはなし
さて、「一生分の卵子を持って生まれてくる」といいますがいったいいくつくらいの卵を持って生まれてくるのでしょう。
女性は卵胞の元になっている原始卵胞というものを持って生まれるのですが、生まれたときには約200万個もの原始卵胞を卵巣に蓄えているのだそうです。
そして成長し、初経を迎える思春期頃には約170万個から180万個が自然消滅していきます。
つまり、思春期になると原始卵胞は20~30万個に減少しているのです。
その後もこの原始卵胞の減少は続き、1階の月経周期に約1000個が減少しているとされています。
1日30~40個の原始卵胞が減少しているのですね。
例えば思春期の18歳で30万個あった原始卵胞が毎月1000個減少しているとしたら、1年で12000個の減少ですから約25年で原始卵胞はなくなるという計算になります。
18歳から25年後というと、43歳になりますね。
ただし、これはあくまでも学術上の計算であって自分の体内にあと何個の原始卵胞が存在するか正確な数字を知ることはできません。
不妊治療などで残りの原始卵胞の目安を知るために計測されるのがアンチミューラリアンホルモン(AMH)です。
このホルモンは発達している途中の卵胞から分泌されるため原始卵胞が少ないと値が低くなります。
その数値から卵巣の中に残っている卵子の目安である「卵巣予備能」を予測します。
閉経が早い傾向がある人の特徴とは
更年期は閉経の前後5年間の計10年間を指しているということは、閉経が早い人は更年期に早く突入するということですよね。
では閉経の早い人とはどういった人なのでしょうか。
不妊治療経験がある人
不妊治療では、排卵誘発剤をつかって意図的に卵巣の中の卵子を排卵させるといった治療をおこないます。
それにより卵巣内の卵子は減っていきますので閉経が早くなる傾向にあります。
子宮内膜症の手術をした人
子宮内膜症とは、子宮以外のところに子宮内膜ができてしまうという病気です。
子宮内膜は妊娠中の赤ちゃんのベッドのようなもので、子宮の内側が着床しやすいように厚みを増していくものです。
妊娠しない場合はこれが月経の出血として体外に排出されます。
その赤ちゃんのベッドである子宮内膜が卵管や卵巣、子宮周囲の組織にできてしまったものを取り除く手術をした人、とくに卵巣のチョコレート嚢胞を取り除いた人は閉経が早くなりがちです。
その理由は卵巣の手術によって卵巣機能の低下が早まることが原因ではないかといわれています。
がん治療で抗がん剤をつかった人
がんの治療につかわれる抗がん剤は正常な細胞も傷つけることがあります。
卵子の細胞が傷つき卵子が減ってしまった場合閉経が早まります。
この他にも、ストレスや喫煙、極度の冷え症などにより血流が悪くなることで卵巣機能の低下が早まったり卵子が減ってしまったりして閉経が早まることがあります。
閉経が早まるということは、それ以前5年さかのぼって更年期がはじまるわけですから45歳以前に閉経するとすれば、30代から更年期がはじまるということになります。
また、日本産科婦人科学会では「早期閉経」を43歳以前の閉経としています。
43歳以前に月経が止まってしまった場合、卵巣機能不全として治療の対象になります。
閉経が遅い傾向がある人の特徴とは
逆に閉経が平均より遅くなる傾向にある人はどんな人でしょうか。
月経の経血量が多い
もともとエストロゲンの分泌量が多く閉経までに時間がかかる人といえます。
子宮筋腫があって経血量が多い場合もエストロゲンが分泌されていますから閉経は遅くなります。
肥満傾向にある
統計上、肥満傾向にある人は閉経が遅いといわれています。
日本肥満症予防協会によると、肥満傾向にある人は月経周期が不順であったり無月経になったりすることがあるといいます。
脂肪細胞から分泌されるレプチンというホルモンで血中レプチン濃度が高いのですが肥満症になるとレプチン抵抗性の状態になり生殖機能に障害がみられるのだそうです。
閉経の遅さとの関係性はわかりませんが、肥満によって生殖機能障害となることはおそらく女性ホルモンの分泌が正常ではなくなっているのではないでしょうか。
閉経が早い・遅い場合に不安なこと
更年期は閉経が早くても遅くても、閉経の前後5年の計10年間となります。
閉経が早い場合、遅い場合にどのような不安があるのでしょうか。
閉経が早い場合
閉経が早い場合、更年期も早くなります。
閉経が43歳より早かった場合は、卵巣機能不全として治療の対象になりますが、それ以降でも、日本の女性閉経平均の50歳より早く閉経してしまう人にはこのような不安があります。
- 肌のハリやつやがなくなりしわが深くなる
- 骨密度が低くなり骨がもろくなる
- 太りやすくなる
- 落ち込んだりイライラしたりする
閉経が早いということは、エストロゲンの分泌が減少しているかほぼなくなっているということです。
閉経により、これまで女性ホルモンであるエストロゲンのおかげで保ってきたものは失われていくのですね。
閉経が遅い場合
閉経が遅い場合、更年期も遅くなります。
閉経が遅いということは、女性ホルモンのエストロゲンの働きが続くことになりますから若さを保てるともいえます。
しかし、58歳を過ぎても閉経がなく月経があることを「遅発月経」と呼び不安もあるようです。
乳がんや子宮体がんのリスクが高まる
エストロゲンの働きによって若さを保てるのは嬉しくても、がんのリスクが高くなるのは心配ですね。
閉経が遅い人はがん検診をこまめに受けることをおすすめします。
「更年期」と「更年期障害」は違います
一般的に「私、更年期だから」というとき身体の不調を指すことも多いことから、「更年期」と「更年期障害」は混同されているようです。
「更年期」という期間は誰もが同じように、閉経前後の5年、計10年と日本産科婦人科学会では定めていますが、「更年期障害」が起こるかどうかはその期間も症状も、また症状の重さも人それぞれです。
「更年期」を「女性特有の症状がつらい期間」つまり「更年期障害」と捉えるのであればそれは、10年かどうかはわかりません。
日本産婦人科医会では更年期障害の症状として、のぼせ、発汗(ホットフラッシュ)、イライラ、うつ、動悸、不眠、肩こりなどの症状があり、日本人の7,8割の女性は症状を自覚するとしています。
しかし、それらの原因は卵巣機能の低下だけではなくそれに伴う身体的変化、精神・心理的な要因、社会文化的な環境因子などが複合的に影響することにより様々な症状が出現するが、約8割は2年以内に自然軽快する(何もしなくても治る)とまとめています。
まとめ
更年期は閉経前後の期間を指し、閉経の前後5年の計10年とその期間の長さは同じで、閉経の時期が早ければ早くはじまり、遅ければ遅くはじまるということがわかりました。
しかし「更年期障害」となると、「いつからはじまって」「いつまで続くのか」は人によって個人差があるのですね。
日本産婦人科医会のまとめでは「約8割は2年以内に自然軽快(何もしなくても治る)する」となっていますので、辛い時期は長く続かないと気持ちを楽に持って過ごすことが更年期障害を乗り切るコツのようです。
