更年期にはいったとしても妊娠する可能性があるのでしょうか。
夫婦生活があるなら気になるところです。
更年期になると女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が急激に減少します。
そして生まれたときに「原始卵胞」として卵巣内に蓄えていた卵子がなくなると、閉経となります。
ということは「閉経したなら妊娠はない」はずですよね。
少し前に「美魔女」という言葉が流行したように、今は更年期世代といっても若くて美しく、いろいろな面で現役バリバリの女性が多い時代です。
ここでは「更年期」「閉経」と「妊娠」について詳しくご紹介しましょう。
更年期でも排卵があれば妊娠の可能性はあります
更年期というのは閉経の前後5年間です。
まだ閉経を迎えていない場合、月経不順や経血量が減っていても排卵している可能性はあります。
ですので、避妊せずに性行為をおこなえば妊娠の可能性も当然あるのです。
妊娠したら生みたいという場合は、妊娠検査薬だけに頼らず早めに受診した方が良いでしょう。
なぜなら、更年期には女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が減少するだけでなく、同じ女性ホルモンであるプロゲステロンの分泌も減少しているからです。
プロゲステロンは、女性の妊娠をサポートする役割を担っているホルモンです。このホルモンが少ないのに妊娠を継続すると流産の可能性が高まるのです。
妊娠は避けたいという場合は、まだ避妊が必要です。
お話したように、プロゲステロンの分泌も減っている更年期の女性は流産しやすいため妊娠に気付かずにいると突然の腹痛とともに流産するということも。
そうなると、もう若くはないだけに身体への負担が大きいからです。
さらに、避妊せずに性行為をおこなうことで女性が妊娠しても、月経が止まったことを「閉経」と勘違いしてしまいやすいので注意が必要です。
妊娠の可能性はあるということをしっかり認識しておきましょう。
え?閉経後にまさかの妊娠?
人によっては「閉経後に妊娠した」ということもあります。
どういうことかといいますと、本人は更年期にはいり月経が不順になってやがてまったくなくなったため「閉経」だと思っていたところ、まだ閉経していなかったということです。
「閉経」は1年間月経がないことを指しますが、まれに1年間月経がなくてもまだ閉経していないということもあるのです。
卵巣の中に蓄えられている「原始卵胞」が育って卵胞となり排卵すれば、月経がなくても妊娠の可能性があるということです。
自分が閉経を迎えたのかどうか判断しかねるときには、病院で血液検査をすると閉経かどうかがわかります。
【FSH(卵胞刺激ホルモン)血液検査】
血液中の卵胞刺激ホルモン濃度を計測することで、閉経かどうかを判断します。
卵胞刺激ホルモンは卵巣の中に蓄えられている「原始卵胞」を刺激して成長を促すホルモンです。
卵巣の機能が弱まると卵子の成長を促そうとこの卵胞刺激ホルモンがたくさん分泌されて血中濃度が上がります。
通常の基準値は10mlU/ml未満ですが、閉経すると30mlU/ml以上の数値が出ます。
【AMH(アンチミューラリアンホルモン)血液検査】
卵巣内に残っている原始卵胞の数を調べる方法です。
AMH(アンチミューラリアンホルモン)はこれから育つ可能性がある卵胞から分泌されます。
血液検査でこのホルモンの血中濃度を調べ、低くなっていると残りの卵子が少ないと判断されます。
アンチュリーミラーホルモンには基準値や正常値がないため、年齢によって平均値と比較して判断します。
こうした血液検査をすることで「閉経したかどうか」の判断ができますから、赤ちゃんを生むという要望がないなら更年期になったからと避妊をやめずに病院で検査してもらうと良いですね。
早発閉経と妊娠の可能性
結論から言いますと、早発閉経の人も治療することによって妊娠の可能性はあります。
「早発閉経」というのは40歳未満で閉経してしまうことを指します。
日本産婦人科学会の定義では43歳未満とされていて、治療の対象となります。
治療の対象となるというのは保険適応になるということで、通常なら自費となるホルモン療法などの治療を3割負担の保険で受けられるということです。
日本産婦人科学会では「早発閉経」といっても「卵巣機能不全」として治療の対象となる、としています。
卵巣の機能が低下しているということですから確かに「閉経」とは違いますよね。
「閉経」というのは、女性が生まれるときに体内に蓄えていた卵子(原始卵胞)がすべて卵巣からなくなったために永久的に月経が起こらないということをいいます。
だとするとやはり、「早発閉経」という言葉は少々違うように感じますね。
卵巣機能不全の場合、卵巣の中にはまだ育っていない「原始卵胞」があります。適切な治療をすれば妊娠の可能性もあります。
ただし可能性はありますが年齢や原始卵胞の状態、卵巣機能や卵管の状態など、人によって妊娠の可能性は違います。
聖マリアンナ大学医学部准教授の河村和弘医師によると、40歳前の不妊症の女性の約100人に1人がこの「早発(早期)閉経」なのだそうです。
「早発閉経」と「続発性無月経」の関係
40歳になる前に月経がとまってしまうことを「続発性無月経」といいます。
「早発閉経」は何らかの原因によって卵巣内の原始卵胞が急激に減少し、残りの原始卵胞も卵巣の機能不全によって育たず(卵巣の機能が停止し)月経が止まることです。
一方、「続発性無月経」は、痩せ過ぎが原因の「体重減少性無月経」、過度な運動が原因の「運動性無月経」、プロラクチンというホルモンの増えすぎが原因の「高プロラクチン血症」、卵巣機能障害による排卵障害が原因となる「多嚢胞性卵巣症候群」、下垂体機能低下が原因の「シーハン症候群」などがあります。
「続発性無月経」の場合はホルモン療法などによる治療がおこなわれます。
体重が減りすぎている場合は体重を元に戻し健康になるところからはじめます。
「早発閉経」といわれるのは卵巣機能不全で下垂体を刺激しても完全に卵巣が機能していない状態です。
「続発性無月経」はその原因を取り除いたりホルモン治療をしたりすることで月経が再開する可能性がありますが、「早発閉経」の場合は難しいことから「閉経」という言葉を用いるようです。
本来であれば「閉経」という言葉は卵巣に卵子がなくなったことをいうのですが、日本産科婦人科学会の資料を見ると、治療により排卵、妊娠に至った報告があるそうです。
まとめ
更年期がはじまっても、排卵がある限りは妊娠の可能性があります。
また、1年以上月経がないために閉経だと思っていても排卵が起こっていて妊娠したという実例もありますから閉経したかどうかは病院で検査してもらうと良さそうです。
更年期になっても赤ちゃんを授かりたいという人なら避妊の必要はありませんが、今妊娠しては困るという人は性交渉を持つなら避妊する必要があるのですね。
また、日本産科婦人科学会の資料には早発閉経になった場合でもホルモン治療によって排卵、妊娠に至ったという報告がありますから、これから赤ちゃんを授かりたい人はすぐに治療をはじめるべきでしょう。
早発閉経については保険適応でできる治療が多いので、費用のことなどはあまり心配せずまずは婦人科を受診して医師に相談して治療をはじめましょう。
