FX取引

「ファンダメンタル分析」経済指標の見方と為替相場への影響

ファンダメンタル要因とは、経済的な理由によって為替相場が動くことを意味します。国ごとの経済動向を参考に、為替相場を分析することをファンダメンタル分析と言います。

そして、為替相場は国ごとの経済指標や金融政策、要人発言などに影響されて変動していきます。中でも経済指標は、国ごとの経常収支や財政状況・物価などを数値化したものです。

この経済指標が、FXにどのような影響を及ぼすのか解説します。日頃から指標に目を通す習慣をつけることで為替相場の動向を推測することが可能になります。

米国の経済指標

経済指標と一口に言っても様々な指標があります。特に為替(FX)のトレードでは、米国雇用統計が注目されています(中でも非農業雇用部門者数と失業率)。

毎月発表されて頻度が高く、かつ統計調査の対象が広いのが特徴です。そして発表される次期が早いことで注目されています。

また、非農業雇用部門者数は想定されている数字と異なることが多く、市場に影響を与えることがあります。

例えば、2012年4月に発表された米国雇用統計は、1分の間に約80銭円高になるという結果を及ぼしました。ここでは米国の経済指標の代表的なものをご紹介します。

①景気全般

GDP(国内総生産) Gross Domestic Product

国内で生産された物・サービスなどの付加価値を合計した数値です。その国ごとの経済規模を表し、経済成長率はGDPが年間でどの程度伸びたかを表します。

発表は、四半期ごと(速報値・暫定値・確報値など)で、米国では)各四半期に3回発表し、速報値・改定値・確報値(改定発表から1カ月後)として公表されます。

日本では各四半期に2回、一次速報、二次速報(1時から1カ月後)として発表されます。

どの国でも速報値が注目され、改定・確報えも事前発表と異なる結果の場合、為替相場が大きく動くことがあります。ただし、急激な動きではなく比較的ゆっくり変動します。

建設支出 Construction Spending

建設支出は国内総戦災の約20%を占めるため、景気動向と相関性が高い指標の一つです。

内容としては、住宅建設(耐久財の需要の波及効果があります)や商業施設建設(設備投資に関する先行指標)、公共施設建設などに分かれています。

この中で民間商業施設の支出が増加すると、企業の設備投資実績に先行する傾向になります。

②住宅関係

住宅着工数 Housing Starts

景気の変動に大きな影響を与える指標です。これは該当月に建設開始された新築住宅件数を示す統計です。区分けは1戸建てと集合住宅、地域別で発表されます。

この住宅投資の増加は、家具や電気製品に対しても波及効果が大きいので景気動向と密接に関係するものです。毎月第三週目に発表されます。

新築住宅販売件数 New Home Sales

最も先行性の高い、景気トレンドに影響を与える住宅販売高を示す指標です。

月に販売された新築件数で、実際に契約者と署名したものが集計されます(契約していないものは含まれない)。毎月28日から翌月4日までに発表されます。

中古住宅販売件数 Existing Home Sales

比較的先行性が高いと言われる指標の一つです。月ごとに所有権の移転が完了した中古住宅の販売件数を示します。

契約者に所有権移転が完了したものを集計しています。毎月25日に発表されます。

③労働・雇用

雇用統計 Job Report

米国の経済指標の中でも最も注目される指標です。冒頭の「米国の経済指標」でも簡単にご紹介した通り、トレーダーが最も注目する指標です。

この中で、非農業部門雇用者数と失業率は金融政策に与える影響も大きく、政策変更のきっかけになります。

景気低迷期になると、失業率の発表直後に金融緩和措置が行われるのではないかという予想が高まります。

非農業部門雇用者数の増減も大切で、毎月15万人程度の増加が労働市場では景気回復の目安とされています。発表は毎月第一金曜日です。

新規失業保険申請件数 Initial Jobless claim

即効性に優れた指標です。景気先行指数や、失業率の予想にも使われることがあります。失業者が失業保険給付の申請した件数の統計です。

失業者の増加によって失業保険給付申請が増えるので、米国の雇用情勢が悪化しているのかまたは減少によって雇用情勢が改善したのかがわかります。

この数値の特徴としては景気のピークやボトムに対して2~3ヵ月程度の先行性があると言われています。毎週木曜日に発表されます。

④物価

生産者物価指数 PPI:Producer Price Index

インフレ指標で、製造業者の販売価格動向を測り、算出した物価指数です。原材料や中間財、最終財の段階を分けて、品目別・産業別に発表されています。

この中でも食料やエネルギーに関する価格は季節的な要因で変動することが多いので、それらを除いたコアの指数が重視されています。

日本と異なるのは、日本の生産者物価指数が卸売物価に輸送費や流通マージンが含まれますが、米国は生産者の出荷時の価格が基本です。毎月15日前後に発表されます。

消費者物価指数 CPI:Consumer Price Index

生産者物価とともにインフレを示す指標の一つです。

都市の一般消費者(世帯)が購入する商品とサービスの総合的な価格を数値化して、変動の大きい食料品とエネルギーを除いたコア指数を重視します。毎月15日前後に発表されます。

⑤製造業

鉱工業生産指数 Industrial production index

製造業の中でも鉱業と製造業に属している企業の生産活動状況を示す指標です。PCや電化製品、自動車などの生産高を示します。

米国の製造業の生産活動の状況や設備投資の状況を表し、景気動向を敏感に反映します。

この指標は好景気なら製品販売数が伸びるため、生産・出荷とも上昇しますが、不況になると出荷が減少して在庫が増加します。

上昇する場合は米国景気が堅調と判断されるため、ドル高・円安になります。この指標も事前予想と比較することで、大幅なズレがあるかないかで相場が動いていきます。毎月15日前後に発表されます。

その他の指数(一部だけご紹介)
  • 製造業受注 Factory orders…

設備投資先行指標、非国防資本財受注が注目される。

  • 設備稼働率 Capacity utilization…

製造業の景況感を見る景気指標の一つ。83%を超えると投資が活発化すると見なします。

  • NY連銀製造業景況指数 (エンパイア・ステイト景況指数) Empire State Survey…

製造業の景況感を示す景気指標。NY州の製造業の活動状況などの総合景況指数。中でも改善、悪化、雇用指数、インフレ指標として仕入れ価格指数が注目されます。

⑥貿易・国際収支

貿易収支 International Trade in Goods and Services

米国の政府・民間による財の輸出入に関する統計です。

貿易赤字拡大になると保護貿易主義懸念が起こり、米財務省によるドル安誘導懸念等よりドル売り要因になる傾向があります。毎月20日前後に発表されます。

対米証券投資 Net Foreign Security Purchases

米国に対する資金の流出入を示す重要指標になります。海外投資家による米国証券に対する投資や米国投資家による海外証券への投資動向を指します。

米国の貿易赤字や形状赤字をファイナンスできているかを判断する材料になります。毎月15日前後に発表されます。

⑦個人消費

小売売上高 Retail Sales

米国の総生産(GDP)の2/3を占めている個人消費トレンドを把握します。百貨店を含む小売・サービス業、約5,000社の月間の売上高を集計した指標です。

耐久財や非耐久財に関して発表されますが、比率としては自動車が高いのが特徴的です。

ただし、速報値を改定するときに幅が大きくなりがちなので月々というより3~4か月後に利用したほうが良いとされています。毎月第2週に発表されます。

消費者信頼感指数 Consumer Confidence

消費者信頼感指数とは、コンファレンスボード(全米産業審議委員会)という、民間の調査機関が発表する指数です。

これは、現在と将来に対する消費者のマインド、個人消費動向を把握します。

消費者に対してアンケート調査を行ない、消費者に対して、現在と6ヵ月後の将来の景況感、雇用状況、所得(自動車・住宅についての購入計画)の項目で「楽観」か「悲観」で回答してもらった結果を指数化します。毎月25日から月末に発表されます。

どのように比較するかというと、例えば1985年時点を基準値100とした場合、数値が100未満なら1985年より景気が悪い、逆に100以上なら1990年より景気が良いと判断します。

ミシガン大消費者信頼感指数 University of Michigan survey

シガン大学のサーベイ・リサーチセンターが実施している消費者マインドを探る経済指標の1つです。

1966年を100として、消費者マインドをインデックスしていきます。速報300人、確報500人として調査されます。毎月第2か第3金曜日に発表されます。

ただし、速報と確報での調査対象者の人数が異なることから、消費者信頼感指数が5000人なのと比べると母数が少なく指数のブレが大きいのが特徴です。

速報と確報で調査対象の人数が異なり、速報は300人、確報は500人を対象に調査を行っています。

米国・CB消費者信頼感指数に比べ、母数が少なく、指数のブレが大きいのが特徴です。

欧州の経済指標

①ユーロ圏の注目指標

消費者物価 (HICP:Harmonized Index of Consumer Prices)

消費者物価指数に関してはユーロ加盟国ごとに作成基準が異なるため比較が難しいと言われています。

そのために、統一基準を設けて加盟国ごとに集計し合成したものがこの結果です。

ECBは、物価安定に対する基準をユーロ圏のHICPが前年度比2%としているので、実際の金利動向を予想する場合に注目が高い指標になります。

市場予想対比、過去の趨勢(なりゆき)によって利上げや利下げの観測が起こり、物価の傾向を見ることが重要です。月末~翌月初 (推計値) 、翌月中旬~下旬 (速報値) が発表されます。

②ドイツ

ZEW景況感指数

Ifo指数(Ifo研究所の指数)の一週間前に発表されるので注目度が高い指標です。

これは、民間調査会社ZEW (欧州経済センター) により機関投資家、金融機関の調査部、市場関係者、 アナリストといった専門家350名に設問を送付して回答をもらうものです。

質問内容は、半年先の景気が現在より良くなる・悪くなるかといったものです。良いから悪いを引いたものでゼロが基準になり、プラスになればなるほど好景気、マイナスほど景気が悪いことを示します。

Ifo指数の1カ月前に先行して、鉱工業生産に対しては半年先の先行性があります。また市場予想との対比で判断することもあります。

IFO景況感指数に次いで注目度が高く、欧州中央銀行(ECB)の金融政策にも大きく影響を与えると言われています。

また指数の結果は、ユーロ相場に影響を与えます。毎月中旬に発表されます。

IFO景況感指数

Ifo研究所 (ドイツ6大経済研究所の中でも、最大の知名度と影響力があります。非営利の公的研究機関で1949年設立)によるドイツの景気を占う重要な経済指標です。

約7000社(製造業、建設業、流通業)の役員を対象に景況感アンケートを実施して、現在の景気についての判断を示す「現況指数」と半年後の見通しを示す「期待指数」をベースに景況感指数を出します。

日本では短観がありますが、これと同様です。調査項目は、生産・在庫・受注・価格・雇用に分かれており、特に鉱工業生産との関連性が高いものとなっています。

発表も早く、ドイツの経済指標の中で最もマーケットの注目度が高い指標です。

市場予想値と対比することも重要ですが、絶対的基準の100を超える傾向が継続するなら、景気過熱感を抑える利上げを模索する可能性が高いと見られます。

ZEW景況感指数と比べると、IFOの方がサンプル数の多さや企業担当者に対する調査という側面から正確にドイツ経済の実態がつかめると判断されています。

指標は2000年を100として現状・先行きを加重平均しています。月次か当月下旬に発表されます。

日本の経済指標

日銀短観(全国企業短期経済観測調査)

日銀が全国の企業動向を把握して、金融政策の適切な運営に役立てるために行う調査です。

調査対象の企業は、金融機関を除いた全国の資本金2000万円以上の民間企業で約22万社です。

中でも「業況判断DI」が最も注目され、業況について「良い」「さほど良くない」「悪い」の3つの選択肢から選択します。

日銀による調査なので、金融政策の動向と密接に関連しており、国内統計のなかでは最も注目度が高いものです。

大企業製造業業況判断、大企業非製造業業況判断の2つが市場の注目を集め、この中でも製造業業況が高く日製造業業況判断が低いと輸出を中心とした製造業は活発であるものの、サービス業のような国内要因の強い分野には波及が弱いので景気は盛り上がっていないという見方をしていきます。

作成周期:四半期で公表時期は4月初、7月初、10月初、12月央(6、12月の下旬に、先行き12か月間分の公表日を公表)になります。

機械受注

機会受注とは設備投資の先行指数です。金額が大きく不規則な動きをする船舶・電力を除いた民需ベースが通常使われます。

また、それらを除いても振れ幅が大きい指標なので月次ではなく四半期平均をとるなど使い方に工夫が必要です。

市場予測との対比が重要です。月次、翌々月の中旬に発表されます。

常に注目しておきたい経済指標

常に注目しておきたい経済指標は以下です。

  • 雇用統計 (米国)
  • FOMC (米国)
  • GDP (米国)
  • ECB (ユーロ)
  • 日銀金融政策決定会合 (日本)
  • 日銀短観 (日本)

マーケットに関連した経済指標の具体例

米国双子の赤字

米国の双子の赤字とは「財政収支」と「経常収支」の赤字を指します。

前者の財政収支の赤字は、ブッシュ政権下時代に巨額のアフガン・イラク戦争費負担や大型減税によって拡大しました。

後者の貿易収支は、対中国貿易の赤字増加や、資源価格の高騰により拡大しました。

双子の赤字は根本的原因が米国の構造的な問題とし、財政収支を埋め合わせるためにはドル金利を上げて外国よりの資金流入を促進する必要があると考えられています。

どうして双子の赤字を経済指標として活用するかというと、現在の米国においては金利引き下げを行うとドル離れが加速されてしまうので、米国双子の赤字の拡大と米国に対する資金流入のバランスを確認するという点で使われています。

貿易収支に関しては特に対アジア貿易、特に対中国貿易での赤字拡大を修正するために米ドルに対するアジア通貨切り上げ要求が政治的に強まるので、米国の保護主義的政策につながり易くなると考えられています。

それは、過去にこの保護主義政策を取ったために、ドル安誘導になった経緯があるので、貿易赤字拡大になるとドル売りになる傾向があります。

サブプライム問題

2007年に起きた米国のサブプライム問題によって、米国経済に対するこの問題の影響度を推し量る経済指標が注目されるようになりました。

それは住宅部門に関連した「住宅着工件数」、「新規住宅販売件数」です。

特に住宅関連の経済指標は景気変動に大きな影響を与える先行指標なので、米国経済の先行きをこの指標で予想しようとするマーケットの思惑があると考えられています。

サブプライム問題は不動産販売だけでなく、不動産を資産価値担保にした個人消費への影響がとても大きいので、景気全体の足を引っ張る要因になりました。

金融市場では住宅ローン証券市場が機能せず、適性価格が算出出来なという事態に陥りました。

また、住宅関連債権の流動性が著しく低下して金融関係を中心にして保有していた金融資産の時価評価額への信頼性に不安が広がり、金融機関同士の取引にも非常に大きい影響を与えました。

米国景気後退と現在

景気後退と判断されるのは、重要な経済活動の衰退が全体に広がり、それが数か月続く場合です。

景気の判断材料は、、失業率や小売売上高、製造業景気指数の動向や色々な項目から総合的に判断されます。

見方としては、米国雇用統計で失業率が上昇する、雇用者数が減少するといった数字だけでなく、景気悪化を見込んだ企業が採用を縮小させる、企業内部門を整理・統廃合・倒産などの数字もわかるので景気後退が判断されるようになります。

サブプライム問題・リーマンショックなどで米国は一時景気後退を余儀なくされましたが、2012年頃から好調となり、2015年にはFRBによる利上げの話が出るくらいになりました。

2016年現在、まだ利上げとはなっていませんが、積み残した需要(設備投資や民間の住宅投資)があることや労働配分率(企業から家計への所得配分)は既に4年も続いていること、クレジットサイクル(信用循環)が拡大局面に入るなど、実際に利上げが実施されても米国景気が腰折れすることはないと判断されています。

ABOUT ME
Arima
2014年からデイトレーダーやってます。 FXと株で毎日コツコツ頑張ってます。 nanairoでは主にお金・節約術に関する記事を執筆しています。